『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第50話

アメリカの中学生選抜チームとの練習試合を終えた翌日、俺達東京シニア選抜チームは、

台湾の中学生選抜チームとの練習試合をするのだった。

 

「なぁ、パワプロ。チェンジアップをコントロールするコツとかってあるのか?」

 

俺が試合前のアップとして一也とキャッチボールをしていると、成宮が俺に話し掛けてきた。

 

「どうしたんだ、成宮?」

「昨日のアメリカ選抜チームとの練習試合、俺は打ち崩されちまった。」

 

そう言いながら成宮は悔しそうに俯く。

 

「スライダーとフォークの変化、それとフォーシームの力勝負で勝てると思ってたんだ。」

 

少なくとも、成宮はそのスタイルでシニアリーグで多くの三振を積み重ねて勝ってきた。

 

「でも、四回の先頭打者には軽く当てられた様な打撃で、簡単に外野にまで飛ばされた…

 だから、緩急としてチェンジアップを使ったんだけど、高目に浮いて連打された…。」

 

昨日の事を思い出しながら、成宮が悔しそうに歯噛みをしている。

 

「その後にフォークをホームランされた事には言い訳出来ねぇけど、チェンジアップを低めに

 コントロール出来ていればと思ってるんだ。」

 

そう言って成宮は顔を上げて、俺を見据えてくる。

 

う~ん、教えてやりたいんだけど、俺も感覚的な事しかわかんないんだよなぁ。

 

「成宮、チェンジアップはどんな握りなんだ?」

「こんな感じ。」

 

そう言うと、成宮はボールをチェンジアップの握りで持つ。

 

人差し指と親指で輪を作るタイプの握りだ。

 

「それじゃあ、違う握りを試してみたら?」

「チェンジアップに違う握りがあるのか?」

「うん、フォークを投げる成宮ならこっちの握りの方が、いい感覚になるんじゃないかな。」

 

そう言って俺は、人差し指と薬指でボールを挟むようにボールを持った。

 

「この2本の指でフォークみたいに挟んで、後は親指と小指をフィット感の良いところに。」

「中指は?」

「力が入らないように添えるか、浮かしておけばいいんじゃないかな?」

 

成宮が俺の握りを見ながら真似をする。

 

「後は自分にとっていい感じのリリースを探せばいいと思うよ。」

「おう!」

 

そう言うと、成宮は一也にボールを軽く投げた。

 

いや、成宮?一也は俺とアップをしてるんだけど?

 

俺と一也は苦笑いをするしかない。

 

その後、成宮は監督に首根っこを掴まれてベンチに引き摺られていき、

練習の見学をさせられるのだった。

 

 

 

 

東京シニア選抜チームと台湾の中学生選抜チームの試合が始まった。

 

先攻は俺達、東京シニア選抜チームだ。

 

一番バッターのカルロスが、台湾チームの眼鏡を掛けたピッチャーのボールに首を傾げている。

 

「どうしたんだろう?」

「う~ん…多分だけど、手元で動いてるんじゃねぇかな?」

 

俺の疑問に一也がそう答えた。

 

「手元で動く?」

「カットボールとかツーシームを投げるムービング使いなのかもな。」

 

カルロスはバットを振っていくのだが、あの眼鏡のピッチャーのボールを、中々前に

飛ばすことが出来なかった。

 

カウント、ワンボール、ツーストライクから投げられた六球目。

 

カルロスは高めのフォーシームに空振りをした。

 

「へぇ、カルロスを三振にするなんて、やるじゃん。」

 

ベンチのど真ん中にドッカリと座っている成宮が、台湾のピッチャーを称賛する。

 

「パワプロ!あんなのに負けんじゃねぇぞ!」

「鳴は昨日打たれたけどな。」

「うっせぇよ、一也!次は絶対に抑えるし!」

 

成宮と一也のやり取りにベンチでは笑いが起こる。

 

その後、粘り強く投げる台湾のピッチャーに、一回の表は三人で抑えられた。

 

そして、一回の裏。

 

練習試合とはいえ初めての国際試合に、俺は笑顔でマウンドに向かうのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です

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