秋の大会を優勝した俺達丸亀シニアは、春の選抜大会の全国決勝トーナメントに挑む事になる。
俺は秋の大会で得たポイントで能力を少しずつ成長させていった。
練習だけでなく、クリスマスやら初詣やらを貴子ちゃんと一緒に楽しんだぞ!
クリスマスの時に貴子ちゃんにケーキをア~ンされたり、初詣の賑わいの中で
はぐれない様に貴子ちゃんが腕を組んできたりしたな。
うん、何故か最近は貴子ちゃんとの距離が物理的に近い事が多いのだ。
俺はメッチャ嬉しいんだけど、貴子ちゃんは大丈夫なのかな?
ほら、貴子ちゃんは友達とかに誘われたりしてたじゃん。
え?大丈夫?
まぁ、貴子ちゃんが大丈夫だって言うならいいか!
そんなこんながあって冬が過ぎていき、春の大会の日がやってきた。
でも、その春の大会で丸亀シニアにアクシデントが起きた。
なんと、クリスさんがインフルエンザで大会に出場出来なくなったのだ。
そこで急遽、一也が正捕手となって春の大会に挑む事に。
そして、春の大会の一回戦…ここでも問題が起きた。
一也の動きが明らかに固いんだよね。
監督曰く、初めての全国の舞台だから緊張しているんだろうとの事。
監督の言葉通りに、緊張しているからなのか一也のミスが目立った。
セーフティバントを処理して1塁に送球する時に悪送球したり、練習の時では見ない様な
捕球ミスをしたりといった感じだ。
監督は一也の成長の為にしばらく付き合ってやってくれと言ってきた。
それは構わない。
でもこのままだと、一也は調子を取り戻さないまま試合が終わっちゃうんじゃないかな?
それだと一也はこの試合を楽しめないまま終わる事になる。
それはもったいない。
よし!ここは俺が一肌脱いでやろうじゃないか!
◆
「はぁ…。」
春の大会の一回戦、試合は三回の表の丸亀シニアの守備が終わった所。
俺はこの試合、何度もエラーをした。
そのせいで相手チームに先制点を取られてしまった。
身体がフワフワして、いつもの自分じゃないのはわかっている。
だけど、どうしたらいいかわからない。
もう、パワプロのボールを受ける壁役に徹した方が…。
ベンチに戻ってそんな事を考えながら頭にタオルを被ると、パワプロが俺の所にやってきた。
「おっす、一也!」
パワプロがそう言ってくるけど、正直合わせる顔が無い。
「ほらほら、顔を上げてこれでも飲みなって。」
そう言ってパワプロは手に持っていた魔法瓶から紙コップに何かを注いだ。
俺はため息を吐きながら紙コップを受け取る。
「熱いから気をつけろよ~。」
パワプロにそう言われたので俺は少し息を吹いて冷ましてから口にする。
「…甘い?」
「おう!うまいだろ!」
そう言ってパワプロは親指を立てる。
「パワプロ、なんだこれ?」
「アップルティーだよ。」
そう言いながらパワプロもアップルティーを飲む。
「あちち!」
舌を出して熱がるパワプロの仕草に俺は笑ってしまう。
「ぷっ!」
「お?やっと笑ったな。」
そう言ってパワプロはニッと笑顔を見せた。
俺はアップルティーをもう一口飲む。
「…うまい。」
「だろ?それに、暖まるから落ちつくんだよな。」
うん、パワプロの言う通りだ。
フワフワとした感じが無くなった。
「ありがとな、パワプロ。」
「気にすんなって!それより、試合を楽しもうぜ!」
「おう!」
この後、俺はシニアで初めてホームランを打った。
そのホームランが逆転の一発となり、試合は3ー1で俺達が勝ったのだった。
これで本日の投稿は終わりです
また来週お会いしましょう