わたし、藤原 貴子。4歳。
少し前から幼稚園の同じ組の男の子が嫌な事をしてくるようになったの。
今日もお遊びの時にその男の子がお友達と一緒にわたしに嫌な事をしてきたの。
どうしてそんなことをしてくるのかわからなくて。
やめてって言ってもやめてくれなくて泣いちゃったの。
でもね、今日はいつもと違ったの。
知らない男の子がわたしを助けに来てくれたの。
その子は『パワプロ』くんって言うの。
なんかわたしに嫌な事をしてきた男の子と遊んでるみたいだけど、パワプロくんだけが
わたしが嫌な事をされてる時に来てくれたの。
ちゃんとありがとうって言えたけど、本当に嬉しかったからもう一回言いたいな。
でも、お昼寝の時間になっちゃった…。
起きたらすぐにありがとうって言えるようにお隣で寝るの!
先生!パワプロくんのお隣を取ったらダメ―!
パワプロくんにおやすみって言おうと思ったらもう寝ちゃってる…。
でも、パワプロくんの寝顔はとっても可愛いかったよ!
貴子も泣いたら眠くなっちゃったからもう寝るの。
おやすみ、パワプロくん…。
◆
保育士さんに起こされて目が覚めると隣で美幼女が寝ていた。
あ、ありのまま…。
「おはよう、パワプロくん」
混乱の極みに達しようとしていた俺に美幼女がおはようの挨拶をしてきた。
ここは紳士としてしっかりと返事をしなければ。
「おはよう、え~と…?」
「あのね、わたし、貴子。」
「貴子?」
俺が美幼女の名前を知らなくて悩んでいると美幼女が名前を教えてくれた。
「うん、藤原 貴子だよ。」
「そっか、おはよう、貴子ちゃん。」
「おはよう、パワプロくん!」
改めて貴子ちゃんとおはようの挨拶を交わすと彼女は花開いたような
素敵な笑顔を見せてくれた。
うんうん、将来有望な美幼女ですな!
ところで、保育士さん?その生暖かい目を向けてくるのをやめていただけませんかねぇ…。
その後、貴子ちゃんにありがとうと言われて何の事かわからず混乱した俺だが、
お迎えが来るまで貴子ちゃんとのお喋りを楽しむのだった。
◆
俺と貴子ちゃん双方のお迎えが来て驚愕の事実が判明した。
なんと、俺と貴子ちゃんは御近所さんだったのだ。
というか、我が家の目の前が貴子ちゃん宅らしい。
世間は狭いものだなと1人頷いているとそれを見ていた皆が首を傾げていた。
それと、母さんと貴子ちゃんのお母さんの話でわかったのだが、どうやら貴子ちゃんは
俺の1つ年上らしい。
それを知った貴子ちゃんは「わたしがパワプロくんのお姉ちゃんだね!」と言ってきた。
背伸びをする貴子ちゃんに微笑ましいものを感じた俺は貴子ちゃんの頭を撫でた。
だが、何故か貴子ちゃんは頬を膨らませて不満そうな顔をしてきた。
解せぬ…。
俺と貴子ちゃんが同じ幼稚園で友達になった事で、それまで御近所付き合い程度だった両家は
家族ぐるみでの付き合いをしていくようになる。
両家の父親が野球経験者で意気投合した事も関係しているようだ。
それからの俺は幼稚園、休日等で貴子ちゃんと一緒に遊んだり、勉強したりしていく。
元大人である俺は勉強で大人に誉められていく。
1つとはいえ年上の貴子ちゃんが嫉妬するかなと思ったのだが、
貴子ちゃんは俺に教えてと笑顔で言ってくる。
俺は親に教えてもらってはどうかとやんわり家族交流を進めるが、貴子ちゃんは
頬を膨らませて不満な気持ちを表現してくるのだ。
解せぬ…。
そんな光景を両家の母親達は「あらあら♪」と楽しそうに眺めてくる。
いや、奥さん?これは違うのですよ?
恋とかじゃなくて、友達としてのあれですよ?
流石にまだ恋は早すぎるんじゃない?
そんな感じで俺は特典の事などすっかり忘れて日々を楽しんでいく。
季節は移り変わり夏真っ盛りとなった頃、俺は今生での生き方を決める
運命の光景を目にするのだった。
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