『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿2話目です


第38話

丸亀シニアと城南シニアの試合は、両チームのエースが

一本のヒットも打たせないで中盤まで進んでいった。

 

そして、四回の裏。

 

ツーアウトで丸亀シニアの打者は2打席目のクリス。

 

成宮は初球からフォークを投げた。

 

クリスは球筋を見る為にこれを見送りワンストライク。

 

2球目はインコースにスライダー。

 

クリスはこのスライダーを打つがこれは三塁線を切れてファールとなる。

 

3球目はアウトハイにフォーシーム。

 

これは高めに外れてボール。

 

4球目に成宮はバックドアのスライダーを投げる。

 

これも外れてツーボール、ツーストライク。

 

そして、勝負となった5球目。

 

成宮はインコースにフォーシームを投げ込んだ。

 

クリスがバットを振る。

 

勝負の結果は…。

 

「オーライ!」

 

成宮が両手を拡げて内野手を制する。

 

そして…。

 

「アウト!スリーアウト!チェンジ!」

 

クリスと成宮の2打席目の勝負は、二度成宮に軍配が上がった。

 

この結果に球場の観客はざわめく。

 

リトルリーグMVPの看板を背負ってシニアデビューをした事もあり、

クリスの名は既にシニアリーグでは全国区となっている。

 

成宮はそのクリスを2打席連続で完璧に抑えたのだ。

 

この結果に丸亀シニアのチームメンバーは動揺してしまう。

 

クリスが打ち取られて迎えた五回の表。

 

パワプロは城南シニアの四番、五番をそれぞれセカンドゴロ、サードゴロに打ち取るのだが、

丸亀シニアのセカンドとサードがその打球を続けてエラーをしてしまう。

 

これでノーアウト、1、2塁の状況となり、城南シニアのバッターは六番の成宮。

 

この状況に丸亀シニアの内野陣がマウンドに集まるのだった。

 

 

 

 

「悪い、パワプロ…。」

「俺もすまん…。」

 

先輩2人がめっちゃ凹んでる。

 

「大丈夫ですって!まだ点をとられたわけじゃないんですから!」

 

俺はそう言うのだが先輩達の顔色は晴れない。

 

仕方ないなぁ…。

 

「先輩達、1ついいですか?」

「「なんだ?」」

 

先輩達が揃って返事をしてくる。

 

「俺、このままノーノーやりますので試合終わったらジュース奢ってください。」

 

俺がそう言うと内野陣が顔を見合わせてから笑いだす。

 

「わかった!奢ってやるよ!」

「でも、失敗したらパワプロが奢れよな?」

 

そう言ってクリスさんを除いた内野陣は、俺をグローブで軽く小突いてから

それぞれの守備位置へと戻っていった。

 

「葉輪、チェンジアップを使っていくぞ。」

 

皆が離れた後、クリスさんがそう言ってくる。

 

「おぉ!ほんとですか!?」

「あぁ、あいつらにジュースを奢らせるつもりだからな。」

「ジュースは2本だから俺とクリスさんで丁度ですね。」

 

俺が笑ってそう言うと、クリスさんはミットで俺の胸を軽く叩いてから

キャッチャーボックスに戻っていった。

 

俺はプレートに足を掛ける前にロージンバッグを手に取る。

 

「ピンチはヒーローになるチャンス…。」

 

そう呟いてから俺はロージンバッグを置いてプレートに足を掛ける。

 

「楽しまないと損だよな!」

 

クリスさんがサインを出す。

 

俺は頷いてセットポジションから投げ込む。

 

リリースの瞬間、カチリと指先の感覚が嵌まる。

 

1球目はフロントドアのカーブ。

 

成宮が一瞬仰け反る様に動くけど、ボールはインローギリギリに入り込んでいく。

 

「ストライク!」

 

狙った場所に寸分違わずに投げ込めた。

 

チェンジアップを覚えて投げるようになってから、以前よりも指先にボールの縫い目を

感じる様になった気がする。

 

そのおかげなのか、リリースの瞬間にカチリと感覚が嵌まる事が多くなった。

 

クリスさんが投げ返してきたボールを受け取ってから直ぐにサインを覗く。

 

サインに頷いて2球目を投げる。

 

1球目と同じ様にカチリと感覚が嵌まる。

 

2球目はアウトローにフォーシーム。

 

成宮がバットを振る。

 

だけど、ボールはバットの上を通過する。

 

「ストライクツー!」

 

成宮を追い込んだ。

 

成宮はタイムを取ってから打席を外して素振りをする。

 

胸がドキドキする。

 

早く投げたい。

 

成宮がヘルメットに手をやりながら打席に戻る。

 

俺はクリスさんのサインを覗き込むようにして見る。

 

クリスさんが出したサインに俺は笑顔になる。

 

遊び球は無し。

 

勝負だ!成宮!

 

俺はセットポジションからボールを投げ込む。

 

リリースの瞬間、指先の感覚がカチリと嵌まる。

 

勝負の3球目。

 

投げたのはアウトローへのチェンジアップ。

 

成宮が力強くバットを振る。

 

だけど、ボールはまだベースに届いていない。

 

そして…。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

成宮を三球三振に抑えた俺は、マウンドの上で雄叫びを上げるのだった。




次の投稿は11:00の予定です

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