パワプロ世代が引退した秋、新青道高校野球部は秋の大会の決勝戦で轟 雷市を有する薬師高校に敗れてしまった。
その秋のドラフトでパワプロと御幸がプロ志望届を出さなかった事が話題になったが、その事は割愛しておこう。
冬になると青道高校野球部は推薦で春の甲子園への出場が決定する。
これで春夏含めて6連続で甲子園出場とあって話題になるが、パワプロの一つ下の世代の者達は秋の大会の雪辱を果たすべくオフシーズンの練習に没頭していく。
そして年が明けて1月の終わり頃、パワプロと御幸はトライアウトに参加する為にアメリカに渡った。
結果は…二人とも無事にロジャーズ入団が決定した。
この結果に勇気を貰った青道高校野球部は春の甲子園で躍動するが、準決勝で本郷をエースに据えた巨摩大藤巻高校に敗れてしまった。
涙を流して悔しがる後輩達を激励してからパワプロと御幸は再びアメリカへと渡る。
そして日本の高校野球界で一つの伝説が終わってから5年…。
新たな伝説がメジャーリーグを舞台にして起ころうとしていた。
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『我らロジャーズが誇るエースのパワプロが、ワールドシリーズ史上初となるパーフェクトゲームまで残り3人だ!ファンの皆!スタンディングオベーションでパワプロを出迎えようぜ!』
地元の名物実況者の掛け声に呼応した様にロジャーズスタジアムのファンは総立ちで、最終回のマウンドに向かうパワプロを迎えた。
マウンドに上がったパワプロの元にロジャーズのユニフォームを着た御幸が歩み寄る。
「パワプロ、いつも通りな。」
「おう!楽しんでいくぜ!」
「父親として、子供に野球の楽しさを見せてやんねぇとな。」
そう言って御幸がスタンドに目を向けると、幼児と共にいる貴子と夏川の姿があった。
「パワプロ先輩!後3人!油断せずに行きましょう!」
大歓声の中でベンチからよく通る沢村の声に、パワプロと御幸は苦笑いをする。
沢村は元々ロジャーズスカウトのベックの評価が高かったが、最後の夏にエースとして甲子園を制覇した事で更に評価を上げてトライアウトに招待された。
その招待を受けた沢村は無事にトライアウトに合格し、パワプロや御幸と同様に恋人の若菜と共にアメリカへとやって来たのだ。
そして2年の月日を掛けてメジャーに昇格すると、パワプロと同じく大きな怪我をしない先発として首脳陣からの信頼を勝ち取り、ロジャーズの先発ローテーションの一角を担っている。
「そんじゃ、パーフェクトやりますか。」
「ロジャーズ念願のワールドシリーズ制覇も付いてくるとなれば、オフの契約交渉が楽しみだぜ。」
銭闘員である御幸の言葉にパワプロが肩を竦めると、御幸はキャッチャーボックスに戻っていく。
「やっぱり、野球って楽しいよなぁ…。」
ワールドシリーズ史上初となるパーフェクトゲームまで後1イニングと迫っていながらも、パワプロは欠片も緊張を感じさせない笑顔でマウンドに立っている。
そのパワプロの姿にロジャーズスタジアムに訪れているベースボールファン達の誰もが、パワプロのワールドシリーズ史上初となるパーフェクトゲームの達成とワールドシリーズ制覇を確信した。
御幸のサインに頷いたパワプロが更に笑みを深めると、アメリカの子供皆が真似をする独特の投球モーションを始めるのだった。
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メジャーの舞台でも笑顔で野球を楽しむパワプロの姿は、多くの子供達に野球の楽しさを伝えていく。
パワプロの影響で野球を始めた子供達から新たな伝説が産まれるかもしれない…。
これで『パワプロ成長』でダイヤのA完結でございます。
メジャー編をお待ちいただいていた読者の方々には申し訳ありませんが、終わり方等に納得いくものを妄想出来なかったのでこれで完結とさせていただきます。
続編、又は新作をどうするかは考えていませんが、また作者の書くものに興味を持っていただけたら嬉しいです。
拙作を最後までお読みいただきありがとうございました。