『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿5話目です。


第269話

春季東京大会準決勝第2試合、青道高校と市大三高の試合が始まった。

 

先攻は青道高校。

 

1回の表、市大三高の先発マウンドに上がったエースの天久は、青道の先頭打者である倉持をセカンドゴロに抑えた。

 

続く春市も倉持と同じくセカンドゴロに抑えると、ツーアウト、ランナー無しの状況でパワプロとの勝負を迎える。

 

パワプロとの勝負の初球、天久は慎重にボール球から投げ込んだ。

 

今大会、パワプロはこの試合までに8本塁打を放ち、現東京地区屈指の強打者である轟を抑えて本塁打数トップを独走している。

 

その事もあり、天久はパワプロがピッチャーを本職としている事を忘れ、一強打者として対峙している。

 

それにこれまでのパワプロはインコースに強いという噂が広まっていたが、今大会ではアウトコースのボールを逆方向にホームランにしたりしているので、最早アウトコース一辺倒の攻めでパワプロと勝負をするのは危険なのだ。

 

天久は2球目もボール球を投げるがパワプロは反応を見せない。

 

ツーボールとボールカウントが先行してしまったが、天久に焦りはない。

 

3球目、天久はアウトローにバックドアとなるカーブを投げてカウントを整えようとする。

 

しかし…。

 

カキンッ!

 

パワプロのバットが快音を鳴らすと、市大三高の監督である田原はギョッと目を見開いた。

 

パワプロが放った打球はレフト線を切れてファールとなる。

 

ファールとなったが飛距離は十分な打球に、田原は肝が冷えた。

 

だがそんな田原と違って、マウンド上の天久は冷静だった。

 

(どんだけ飛ばそうがファールはファール。これでカウントはツーボール、ワンストライクっと。)

 

ロージンバッグを手に取った後、天久は息を吹き掛けて余分な滑り止めを飛ばす。

 

ふてぶてしいその天久の姿に、田原は鳥肌が立った。

 

(天久ボーイ…ユーはエースになった。)

 

その後フルカウントまで進むと、天久は決め球のスライダーでパワプロをファーストゴロに打ち取る。

 

1回の表から熱い勝負をした天久だが、淡々とした様子でベンチに戻っていったのだった。

 

 

 

 

1回の裏、青道の先発としてパワプロがマウンドに上がる。

 

パワプロは市大三高打線を三者連続三振で抑えるが、球場に駆け付けた高校野球ファンに大きな驚きはない。

 

ある意味で見慣れた光景だからだ。

 

続く2回の表、天久は先頭打者の御幸にレフト前へのシングルヒットを打たれてしまう。

 

そして次打者の白州にバントで御幸を2塁に送られるとワンアウト、ランナー2塁のピンチを迎えるが、後続をしっかりと抑えてピンチを切り抜けた。

 

その後スコアボードに0が刻み続けられるが、6回の裏のパワプロの1球で球場にざわめきが起こる。

 

電光掲示板に159kmという数字が表示されたからだ。

 

日本人の野球ファンが夢見る160kmまで後1km…しかも左投手でだ。

 

このパワプロの1球で球場の雰囲気は完全に青道一色になった。

 

それが流れを呼び込んだのか7回の表、打球のイレギュラーや市大三高野手陣のエラーで、ノーアウト、満塁のビッグチャンスが訪れる。

 

さらに打席に入るのは4番の御幸。

 

市大三高の監督である田原は天久を信じて見守る。

 

しかし…。

 

カキンッ!

 

無情にも天久の決め球であるスライダーは御幸に狙い打たれ、満塁ホームランを打たれてしまった。

 

パワプロを相手に4点差と絶望の状況でも、市大三高メンバーは最後まで勝負を捨てずに声を張り上げてプレーをしていった。

 

しかし彼等のその思いは届かず0ー4のスコアで市大三高は敗れたのだった。




これで本日の投稿は終わりです。

やる気充電の為に来週の投稿はお休みさせていただきます。

11月25日にまたお会いしましょう。

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