第260話
青道高校野球部の春の選抜甲子園大会優勝の報を聞いた1学年上の先輩達が、青道高校を卒業していった。
クリスさん、哲さん、丹波さん、純さん、亮さん、宮内さん、増子さんに多くの先輩達。
そして貴子ちゃんもだ。
クリスさんと哲さん、それに純さんは所属したプロ野球チームのキャンプに参加していたので、残念ながら卒業式には参加していない。
でも、後日に理事長の計らいで片岡さんから卒業証書を渡されるらしい。
亮さんなんかは『俺も片岡監督から貰いたかったな。』とか言ってたな。
先輩達はプロに行ったり大学に進学したり就職したりとそれぞれ新たな道に進んだけど、その中で貴子ちゃんだけはちょっと違う。
貴子ちゃんは1年後に俺と一緒にアメリカに行くので、1年間は色々な事を自主勉強したり資格取得したりする予定だ。
もっとも、貴子ちゃんは小さい頃から準備をしていたらしいから、ほとんど復習するだけでいいらしいけどね。
さて、先輩達が卒業した事で俺達が青道高校野球部の最高学年になったわけだ。
小さい頃に片岡さんに憧れて入った青道高校野球部での野球も今年が最後…。
思いっきり楽しんで行くぜ!
◆
今年も多くの入部希望者が都内都外を問わずに青道高校野球部にやって来た。
その中でも俺が注目した…いや、注目せざるをえなかったのはキャッチャー希望の奥村 光舟(おくむら こうしゅう)って奴だ。
奥村は挨拶の時に『葉輪さんのボールを受ける為に青道に来ました!』って宣言したんだよね。
その後は一也とライバル心全開で睨みあっていた。
他に注目したのは哲さんの弟くんの結城 将司(ゆうき まさし)って奴とピッチャー希望の浅田 浩文(あさだ ひろふみ)って奴かな。
哲さん曰く、『俺よりも才能や自信を持っている。』そうだ。
哲さんはそう言っていたけど…正直なところ、弟くんは哲さんみたいに打たれるかもって感じがしないんだよね。
これからの成長に期待ってところかな。
弟くんは挨拶の時に『プロに行くために青道に来ました!』って言ってた。
哲さんの言う通りにかなり自信を持っているみたいだな。
ちなみに弟くんの希望ポジションは全部とのこと。
練習頑張れよ~。
浅田はなんというか、初めて会った頃の丹波さんに似ているって感じだな。
近くにいたノリも同じ印象を持ったみたいだ。
だからなのかノリが自分が丹波さんから受けた様に色々とアドバイスをするつもりみたいだ。
頼んだぜ、ノリ!
◆
青道高校野球部に多くの1年生達が入部した翌日、青道高校野球部では毎年恒例の体力テストが行われていた。
その体力テストの遠投でパワプロの番がくると、周囲にいた1年生達が注目し始めた。
世間で『怪物』の異名を持つパワプロがどんな遠投をするのか気になっているのだ。
「いきま~す!」
パワプロは緊張など欠片も感じられない声を出すと、ノーステップでボールを放る。
すると、ボールは100m先にある外野フェンスにノーバウンドで直撃したのだった。
このパワプロの一投を見た1年生達が驚愕して目を見開く。
しかし、2年生達や3年生達は気にせずに己の準備を続けていた。
彼等にとってパワプロのこのパフォーマンスは日常茶飯事なのだ。
その後、御幸や降谷もパワプロと同様にノーステップで100mの遠投をすると、これにも1年生達は驚愕して目を見開いた。
ちなみに昨年遠投でカーブを投げてしまった沢村は、今年しっかりと真っ直ぐを投げられると歓喜の雄叫びを上げていた。
記録は100m先にあるフェンスを超える見事なものだったが、パワプロ達の後だった為に1年生達の驚きは少ない。
1年生達の反応に悔しがった沢村は、パワプロと降谷を名指しして残りの体力テストで勝負を挑んでいた。
その勝負は投球テストをまだ残しているが、パワプロの完勝なのであった。
これで本日の投稿は終わりです。
また来週お会いしましょう。