『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です


第25話

秋の大会が終わって数日、江戸川リトルの練習場で御幸 一也はスコアブックを見比べていた。

 

「…やっぱりクリスさんのリードが変わってる。」

 

御幸が見比べているスコアブックは、夏の大会の物と先日の秋の大会の物だ。

 

「クリスさんは俺と同じストライク先行のリードで、遊び球が少なかった…。」

 

そこまで言って御幸は秋の大会の丸亀リトルとの試合のスコアブックに指を置く。

 

「だけど、秋の大会では明らかな釣り球や遊び球がある…何でだ?」

 

御幸はクリスの変化したリードに首を傾げる。

 

「でも、その結果は完全試合…。」

 

御幸は自分の言葉に先日の試合を思い返す。

 

あの試合の後、あまりの悔しさに普段ではやらない自主練の走り込みをやって

体力を使いきらないと眠れない程だった。

 

頭が冷えた今、こうしてスコアブックを見直し反省をしようとして

クリスの変化に気づいたのだ。

 

「はぁ…今度、直接聞きに行ってみるか。」

 

そう言って御幸は頭をガシガシと掻きながら立ち上がる。

 

そして、ブルペンに行くと投手の球を受けていくのだった。

 

 

 

 

後日、クリスの連絡先を知らなかった御幸は丸亀リトルの練習場所に訪れた。

 

そこには、既にチームを卒業した筈のクリスの姿があった。

 

「御幸か…お前、江戸川リトルの練習はどうした?」

「クリスさんに聞きたいことがあったんで、監督に言ってサボってここに来ました。」

 

御幸の返答にクリスはため息を吐く。

 

そんなクリスの反応に御幸は苦笑いだ。

 

「それで、何を聞きたいんだ?」

「クリスさん、リード変わりましたよね?」

 

クリスは御幸の気付きに感心の声を上げる。

 

「夏ではあまり要求しなかった遊び球を秋ではかなり要求してました…何でですか?」

 

クリスは御幸に返答せずに背を向ける。

 

「クリスさん!」

「御幸…答えが知りたければついてこい。」

 

そう言ってクリスは歩いていく。

 

その言葉を受けた御幸は、黙ってクリスについていくのだった。

 

 

 

 

「あれ?クリスさん?」

 

俺は監督が見ている前でブルペンで投球練習をしていると、クリスさんが

誰かを連れてブルペンにやってくる姿を見つけた。

 

「どうした、クリス?…って、後ろにいるのは江戸川リトルの子か?」

「はい、こいつは練習をサボって来たようなので、うちの練習に参加させたいのですが…。」

 

うぇい?

 

俺はクリスさんの言葉でクリスさんの後ろにいる奴を見る。

 

…御幸だよな?

 

俺が首を傾げて見ていると、それに気づいたのか御幸と目が合った。

 

手を上げて挨拶をしてきたので俺もやり返す。

 

「いいぞ。」

 

ファッ!?

 

監督が躊躇せずにクリスさんの願いを受け入れた事に驚いた。

 

いいの?他所様のチームの奴を練習に参加させていいの?

 

情報だだ漏れちゃうのん?

 

「それじゃ…御幸だったよな?防具とミットを貸すからパワプロの球を受けてくれ。」

 

監督!?

 

俺は驚きながらクリスさんを見ると、クリスさんが頷いてきた。

 

いや、頷かれてもわかりませんって!

 

俺の混乱が続く中で、準備を終えた御幸がキャッチャーボックスに座る。

 

まぁ、投げていいんだったら投げるけどね。

 

俺は1つ息を吐いて気持ちを切り替えると、御幸に球種を伝えてからフォーシームを投げ込む。

 

すると、御幸はクリスさんに負けない程のいい音をさせてボールを取るのだった。

 

 

 

 

クリスさんの後をついていくと、何故か葉輪の球を受ける事になった。

 

「フォーシーム行くぞ~。」

 

葉輪が球種を伝えてきたのでミットを構える。

 

あの独特なノーワインドの投球モーションで葉輪が投げ込んでくる。

 

葉輪が投げたボールは寸分違わずにミットに吸い込まれる様に納まった。

 

(ノビのある、いいフォーシームだな。)

 

「ナイスボール!」

 

俺はそう言いながらボールを返球する。

 

今度はミットを右打者のインローに構える。

 

またも狙い違わずにボールはミットに。

 

その後も色々とミットを構える場所を変えるが、葉輪のボールは正確にミットに納まっていく。

 

「葉輪、そろそろカーブも投げろ。」

「はい!」

 

葉輪がクリスさんの言葉に返事をする。

 

俺はエースの決め球まで受けさせていいのかと驚きながらもミットを構える。

 

葉輪が投じるカーブはフォーシームと変わらぬ精度でミットに納まっていく。

 

「…たはっ!」

 

気付けば俺は笑っていた。

 

こいつのボールを受けるのが楽しくて仕方ない。

 

頭の中で、試合では葉輪をどうリードしようか考えながらボールを受けていく。

 

俺は当初の目的を忘れて、葉輪のボールを受けるのを楽しむのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です

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