1軍と2軍の紅白戦の3回の裏、パワプロは1軍打線を3者連続三振で抑える。
そして4回の表の1軍チームのマウンドには降谷が上がった。
降谷は沢村との球速差もあり、4回の表の2軍打線は3人で抑える。
4回の裏の1軍チームは1番から始まったが、1番の倉持はまたしても三振で抑えられた。
ここまでの1軍チーム打線はクリス以外の打者全員が三振という結果だった。
だが、ここで2番打者の小湊がその選球眼とバッティング技術で粘りをみせる。
小湊はノーボール、ツーストライクと追い込まれてからパワプロのフォーシーム、カーブ、チェンジアップの3種類を辛うじてファールにしていった。
(少しぐらいコントロールを間違えてボール球を投げてもいいと思うけどね。)
緩急差にバッティングフォームを崩されながらも粘る小湊は、集中を切らさない為に一度も打席を外さなかった。
(打席を外してもパワプロのリズムは崩せないからね。ほんと、頼もしいエースだよ。)
8球目、ここで2軍チームのキャッチャーである小野はパワプロに高速スライダーを要求した。
パワプロがフロントドアで高速スライダーを投げ込むと、小湊は色が落ちた視界の中で幾つもの思考が重なっていった。
(球種はスライダー。)
(身体には当たらない。)
(コースはストライク。)
(バットを振れ!)
カキンッ!
小湊がバットを振りきると、1軍打線にとって初めてバットの快音が鳴り響き、球足の速いゴロが1、2塁間に転がっていく。
2軍チームの1塁手が打球に飛びつくが届かない。
しかし、2軍チームの2塁手である小湊 春市が横っ飛びでボールを捕らえた。
左打者の小湊 亮介が1塁に全力で駆ける。
パワプロも反応早く1塁ベースカバーに向かっていた。
ボールを捕球した春市が素早く上体を起こして目線を1塁方向に向ける。
(立ち上がっていたら兄貴を刺せない!)
春市は瞬時に判断して膝立ちの状態で1塁ベースに向かっているパワプロに送球した。
亮介とパワプロがほぼ同時に1塁ベースを踏む。
塁審の判定は…?
「…アウト!」
アウトの判定を聞いた亮介は天を仰ぐと、1つ息を吐いてから弟である春市へと目を向けた。
(ナイスプレー、春市。お前なら今年の夏の大会で1軍になれるかもね。けど…。)
亮介は踵を返すと、微笑みながらベンチへと駆け足で戻っていく。
そして…。
「春市、お前に1軍のレギュラーはまだ早いよ。」
この言葉が聞こえたのか膝立ちの状態のまま小さくガッツポーズを取っていた春市は、前髪に隠れた目に強い闘志を宿らせて立ち上がったのだった。
◆
亮さんはやっぱ凄いバッターだわ。
フロントドアのスライダーをジャストミートだもんなぁ。
インコースを待ってたのかな?
紅白戦が終わったら聞いてみよ。
しかし、弟くん…ナイスプレー!
位置的に見ると、予め1塁よりに守ってたのかな?
よくわからないけど、とにかくナイスプレー!
さて、亮さんをアウトに出来てこれでツーアウトだけど次のバッターは哲さんだ。
今の亮さんの一打で哲さんが燃えている。
いいね!俺も燃えてきた!
さぁ、勝負を楽しんでいくぜ!
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