『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿4話目です。


第194話

1軍と2軍の紅白戦は1回の裏へと進んだ。

 

2軍チームのマウンドにパワプロが上がると、守備についている2軍チームは安心感に、パワプロを打ち崩そうとする1軍チームは緊張感に包まれた。

 

1軍チームの先頭バッターである倉持が右打席に入ると、1軍チームの指揮を取る落合は目を細めた。

 

(左投手に対して右打席に入るのはスイッチヒッターのセオリー通りだが、倉持の打撃技術と足の速さを考えると、左に入った方が無難なんだがな…。)

 

一度は倉持に左打者への転向を促した落合だが、今も倉持のスイッチヒッターへの挑戦を否定しているわけではない。

 

倉持のスイッチヒッターへの挑戦を受け入れたからこそ、状況によって打席を選ぶ柔軟な対応を取れる様になってもらいたいのだ。

 

一時期、プロとアマの間でスイッチヒッターが流行ったが、現在ではスイッチヒッターは減少の傾向にある。

 

これは極端な言い方だが、スイッチヒッターは他のバッターの二倍バットを振らなければならないからだ。

 

もちろんレギュラーを狙うならば打撃だけでなくその他の練習も必要である。

 

そのためスイッチヒッターとしてやっていくのならばそれだけ多くの練習をして、その練習でケガをしない様にしっかりとケアをしていかなければばらないのだ。

 

右打席に入った倉持に対してパワプロは初球にカーブを投げ込んだ。

 

コースは真ん中高め、倉持の頭を超える高さから一気にインローへと向かって変化していく。

 

2軍チームのキャッチャーである小野がボールをキャッチングすると、紅白戦で主審をしている青道野球部の部員がストライクをコールした。

 

(球種がわかっていても打てそうにないボールを投げる高校生か…見ている分には面白いが、葉輪を打ち崩さなければならない相手にとっては悪夢だろうな。)

 

顎髭を扱きながら落合が見ていると、倉持は2球目のパワプロのフォーシームに対してセーフティバントの構えをみせる。

 

パワプロは反応よくチャージをかけたが、倉持はバットを引いてボールを見送る。

 

主審の判定はストライクで、カウントはノーボール、ツーストライクとなった。

 

(ピッチングは文句無しの怪物で、フィールディングもよく、バッティングもいい。しかも、どんな場面でも動じない心の強さも持っているとあっては、攻略のビジョンが全く見えんな。)

 

紅白戦ではあるが勝負は勝負。

 

落合は1軍チームを指揮する者として勝ちにいこうとしているが、パワプロが打ち崩される場面が欠片も想像出来なかった。

 

(正直、クリスや結城にホームランを期待するしかないんだが…。それも難しいだろうな。)

 

オフシーズンにパワプロが打撃投手をした時のことなのだが、力を抑えた投球のパワプロ相手から3割を超える打率を残せたのはクリスだけだった。

 

しかも、そのクリスでもホームランは片手で数えられる本数しか打てていない。

 

他には結城が2割ギリギリの打率でホームランを1本打っただけだ。

 

パワプロが3球目にチェンジアップを投げ込むと、2球目のフォーシームが目に焼き付いていた倉持は緩急差を我慢できずにバットを空振りしてしまった。

 

(東条達を葉輪と投げ合わせる事で経験を積ませようとするのは理解出来るが、対戦する1軍バッター達にはこの上ない試練になるな。潰れる可能性もあるが、それ以上に教え子達の成長を信じているという事ですかな、片岡監督?)

 

その後、パワプロのピッチングの前に2番バッターの小湊 亮介と3番バッターの結城も連続三振に抑えられると、2回の表のマウンドに沢村が駆け足で向かうのだった。




次の投稿は午後3:34の予定です。

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