春の東京神宮大会が終わり、今度は春季関東大会が始まった。
青道は順調に勝ち進んでいったんだけど、残念ながら明川学園は2回戦で負けてしまった。
原因は楊が指の豆を潰してまともに投げられなかったからみたいだ。
この結果を見て貴子ちゃんや一也、そしてクリスさんまで俺にも気を付けろと言ってきた。
俺は特殊能力のおかげで問題無いんだけどね。
そんな感じの一幕があったけど、青道高校は春季関東大会を勝ち抜いて優勝する事が出来た。
それとこの大会では投打に渡って純さんが大活躍した。
第2先発の投手として、先発していない試合は3番打者で中堅手として、出場していた。
打率は3割台でホームランも一本打って落合さんが驚く活躍だったぜ!
まぁ、打撃成績でいえばもっと凄い人達もいるんだけどね。
クリスさん、哲さん、亮さんは打率5割台だし、しかもクリスさんは出場した全部の試合でホームランを打ってるし…あんなに簡単にホームランって打てるものだったっけ?って感じだ。
そのせいと言うわけでもないけど、最近のクリスさんは多くのスカウトに声を掛けられているようだ。
もっとも、元プロのアニマルさんが代理人を雇っているらしいから、クリスさんは練習に集中出来ているみたいだけどね。
哲さん、亮さんは苦笑いをしながらスカウトの人の相手をしているな。
頑張れ!哲さん、亮さん!
しかし、アメリカに行くって明言しているのに、今でも俺の所にスカウトの人が来るのはどうにかならないのだろうか?
礼ちゃんが動いてくれて、青道高校を通していないスカウトの人は相手をしなくていい様になってはいるんだけど、それでも関係無く飯に誘おうとするスカウトの人もいるからなぁ…。
それで断れば付き合いが悪いだの年長者に対して云々って文句を言ってくるんだから面倒である。
これ思春期の普通の高校生だと、精神的に色々と疲れるだろうなぁ…。
まぁ、俺は全く気にしないけどね。
さて、そんな事よりも今日はロス・ロジャーズのスカウトのベックとの話し合いがあるんだ。
なので俺は貴子ちゃんと一緒に制服で来賓室に向かうのだった。
◆
「『パワプロ、簡潔に言えば、君をロス・ロジャーズのトライアウトに招待したい。』」
英語でそう言ってくるベックは素敵なスマイルだ。
「『ベック、招待ってどんな感じなの?』」
「『詳しいことは後で君のご両親に資料を渡すけど、航空券と滞在先のホテルの手配なんかをこちらでやらせてもらう形だね。もちろん、貴子の分も手配させてもらうよ。』」
「『ありがとう、ベック。』」
「『パスポートだけは自分達で用意してくれよ、ハッハッハッ!』」
ベックの明るい笑い声が来賓室に響く。
俺と貴子ちゃんもつられるように笑顔だ。
「『さて、何か質問はあるかい?』」
「『1つだけあるんだけどいいかな?』」
「『なんだい、パワプロ?』」
「『もう1人、トライアウトに招待する事は出来ないかな?』」
俺の言葉にベックは顎に手を当てながら首を傾げる。
「『僕の権限でそれは可能だけど…誰を招待してもらいたいんだい?』」
「『一也、御幸 一也だよ。』」
「『御幸?それは、あの眼鏡を掛けたキャッチャーかい?』」
「『うん、そうだよ。』」
「『ふむ、御幸と話をするのにもアポイントメントは必要かな?』」
ベックがそう言うと、通訳の人がその事を礼ちゃんに話す。
礼ちゃんはベックに笑顔を向けると来賓室を出ていった。
そして十五分ぐらい経つと、一也と一緒に来賓室に戻ってきた。
「『初めまして、僕はロス・ロジャーズのスカウトのベックだよ。』」
「『は、はい!俺は御幸 一也です!』」
「『おや?君も英語を話せるのかい?』」
「『はい!パワプロ…葉輪 風路と一緒に勉強しています!』」
「『それは素晴らしい!あぁ、そんなに固くならずにいつも通りでいいよ。礼儀正しいのは日本人の美点だけど、キャッチャーの君がリードまで礼儀正しかったら困るからね。』」
ベックがそう言って笑うと、一也もつられるように笑った。
「『さて早速だけど、一也、君もロス・ロジャーズのトライアウトに挑戦するという事でいいかな?』」
「『はい!』」
「『それじゃあ、君とパワプロ、そして貴子を招待する。トライアウトに合格する事を祈っているよ。君達が合格すれば僕の給料もあがるからね、ハッハッハッ!』」
こうして俺と一也はロス・ロジャーズのトライアウトに招待される事が決まった。
俺達はベックと握手をして来賓室を後にすると、笑顔で練習に向かうのだった。
よっしゃ!
今日も楽しんで練習をするぜ!
本日は5話投稿します。
次の投稿は9:00の予定です。