黒士舘との試合後、財前さんが青道ベンチに頭を下げにきた。
なんでも財前さんが主導して球種を伝えていたらしい。
反則をやった財前さんに対して青道メンバーの表情は決していいものでは無い。
だけど…。
「君がやった事は教育者として誉められたものではない。
だが、素直に謝罪をした事は受け入れよう。」
片岡さんがそう言うと、青道メンバーはため息を吐いてから財前さんに笑顔を見せたのだった。
◆
2回戦に勝った青道は3回戦も順調に突破した。
3回戦は丹波さんが先発をして、7回を1失点に抑えた。
8回には6点差があったこともあり、ノリが中継ぎとして登板した。
この試合のノリはシンカーを封印してピッチングをしていった。
どうも2回戦での連続デッドボールを気にしているらしい。
ノリは8回の登板だけで2失点してしまった。
今回の失点はノリがワンアウトを取った時にホッとして気を抜いてしまったからだ。
ノリの課題はメンタルコントロールの様だ。
そんなノリは3回戦が終わった後に丹波さんと話をしていた。
丹波さんがノリに声を掛けてメンタルコントロールのアドバイスをしているみたいだ。
頑張れよ、ノリ!
◆
3回戦を勝利した青道は4回戦で市大三高と戦う事になった。
なんとこの市大三高との試合、丹波さんが片岡さんに先発を志願した。
3回戦から4回戦までの日程に余裕があった事もあり、片岡さんは丹波さんを
先発させる事を決めた。
う~ん、俺も真中さんと投げ合いたかったなぁ…。
市大三高との試合は丹波さんと真中さんの我慢比べになった。
毎回の様に丹波さんと真中さんはランナーを背負うが、なんとか踏ん張り
味方の援護を待ち続けたのだ。
試合が動いたのは6回の表。
3番バッターに入っていた哲さんが真中さんからソロホームランを打った。
これで真中さんの集中力が一時的に切れてしまったのか、続く4番のクリスさんにも
ソロホームランを打たれてしまった。
真中さんはこの後の青道打線を抑えたけど、この試合は6回の表の2失点が
市大三高の致命傷となった。
丹波さんは8回までを無失点で抑えると、最終回の9回を純さんが3人でピシッと抑えた。
市大三高との4回戦は2ー0で俺達の勝利だ。
そして迎えた5回戦。
青道は楊を有する明川学園との戦いに挑むのだった。
◆
「ふぅ。」
楊が息を吐きながら右肩と右肘に貼っていた湿布を剥がす。
ケガをしているわけでは無い。
秋の大会を1人で投げ抜いていた事もあり、しっかりとケアをしているのだ。
「楊、大丈夫か?」
そんな楊に明川学園の仲間が声を掛ける。
「あぁ、問題無い。ベストコンディションだ。」
そう言って不敵に笑う楊の姿に、明川学園の仲間達が笑顔を見せる。
「俺達、どんな打球にも食らいつくから。楊も頼んだぞ。」
「あぁ、勝負は延長のタイブレークからだ。」
楊の言葉に明川学園の仲間達が力強く頷く。
一度円陣を組んだ明川学園は掛け声を出してからアップの為にグランドに散っていった。
「葉輪、今日こそは俺が…俺達が勝たせてもらう。」
そう呟いた楊は青道ベンチに強い視線を送ったのだった。
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