『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

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本日投稿6話目です


第11話

家に帰った俺はシャワーを浴びてから貴子ちゃんの家に向かう。

 

汗臭いとか言われたくないからな。

 

今日は俺がリトルリーグのチームに入って初めて本格的に野球を始めたお祝いをとの事で、

葉輪、藤原両家で食事をするのだ。

 

「フーくん、練習はどうだったの?」

「凄く楽しかった!」

 

貴子ちゃんが早速今日の事を聞いてきたので俺は身振りや手振りを加えて話していく。

 

「へ~、いきなり練習とはなぁ…俺の時は草むしりだったけどなぁ。」

「そうそう、草むしりに球拾いに用具の出し入れとかして上級生の使い走りだったなぁ。」

 

俺の話を聞いた両家の父親が昔を懐かしむように話していく。

 

「風路、お前の同期で投手志望は何人いるんだ?」

「俺だけだよ、父さん。」

 

俺がそう答えると両家の父親は目を見開いて驚く。

 

「これも時代の流れかねぇ…。」

「そうだなぁ…。」

 

両家の父親がしみじみとそう言い放つ。

 

「あ、貴子ちゃん。監督が今度マネージャーの仕事を纏めた紙をくれるから、それを見てから

 マネージャーになるか決めて欲しいって言ってたよ。」

「じゃあ、マネージャーは募集してるんだね、フーくん。」

 

貴子ちゃんが嬉しそうに笑顔になる。

 

いいね!美少女の幼馴染みがマネージャーとか最高やん!

 

その後も話をしていくのだが、練習で疲れていたのか俺は途中で寝落ちしてしまうのだった。

 

 

 

 

俺が丸亀リトルに入ってから1週間後、貴子ちゃんがマネージャーとしてチームに加入した。

 

マネージャーが加わったと聞いた野球少年達はテンションが駄々上がりである。

 

えぇい!俺の目の黒い内は貴子ちゃんに手出しはさせんぞ!

 

そう気張った俺だったのだがそれは杞憂だったようだ。

 

というのもマネージャーの仕事として雑用やらをするのだが、そのおかげで練習時間が

増える事を野球少年達は喜んでいたからだ。

 

そんな貴子ちゃんは笑顔で黙々とマネージャーの仕事をして手が空いたら

俺の練習を見学している。

 

「フーくん、頑張れ~!」

 

フハハ!貴子ちゃんの応援で俺はテンションが有頂天である!

 

貴子ちゃんの視線を一人占めする俺は嫉妬の嵐に曝されるかと思いきや、

強豪の丸亀シニアの下部チームである丸亀リトルで本気でレギュラーを目指す野球少年達は、

練習に熱中し続けているのでそんな事にはならなかった。

 

まぁ、今の年齢ぐらいだと色気より食い気だったりするからなぁ…。

 

むしろ、そんな貴子ちゃんと俺をよく冷やかしてくる。

 

冷やかされた貴子ちゃんは顔を赤くして照れる。

 

美少女の照れ顔…プライスレス!

 

いいぞ!もっとやれ!

 

照れた貴子ちゃんを俺が「可愛い!」と称賛すると貴子ちゃんは頬を膨れさせながら

両手で俺の頬を横に引っ張って変顔にさせてくる。

 

解せぬ…。

 

そんな訳でマネージャーの仕事を丁寧に笑顔で元気良くやっている貴子ちゃんは、

丸亀リトルのマネージャーとして少しずつ受け入れられていっている状況だ。

 

俺の方はというと何故かクリスさんに付きっきりで指導されている。

 

あの、自分の練習は大丈夫ですか?

 

あ、大丈夫?そうですか。

 

基本的な練習としてグラウンドの外周の走り込みとベースランと言われる練習を

野手の人達とやった後は、クリスさんとブルペンでの投げ込みをしている。

 

あの、守備練習とか打撃練習は?

 

え?監督の手が回らないから無理?

 

なんてこったい!

 

そんなこんなで俺は貴子ちゃんとコーチが見守る中で、今日もブルペンで

クリスさんと投げ込みである。

 

例の投球フォームで楽しく投げ込みをしていく。

 

大抵は思った通りに制球出来ないのだが時折ビシッと感覚的に嵌まる時があって、

そういう時にはミットに吸い込まれるようにして納まるので気分がいい。

 

クリスさんに助言を貰いたいのだがクリスさん曰く、今はしっかりとフォームを固めろとの事。

 

という訳なので今は制球はあまり気にするなと言われた。

 

そうやって練習しているとブルペンに先輩方が来て隣に並んで投げる事もあるのだが、

その時に気づいた事が1つある。

 

他のキャッチャーの人よりもクリスさんの方が捕球の際にいい音を出すのだ。

 

フハハ!これが俺の実力か!

 

そんなふうに勘違いする程にクリスさんはいい音を出してボールを捕ってくれるのだ。

 

もっとも、俺と先輩が同時にボールを投げたら先輩の方が先に捕球されるから、

俺のボールが勝っているという訳じゃないのは一目瞭然だ。

 

その事に頭を抱えて身悶えしているとクリスさんがマウンドにやってきてこう言ってくれた。

 

「球速では負けてるが球質ならお前も捨てたものじゃない。」

 

…もっと素直に誉めてくれてもいいのよ?

 

そんな感じで練習を続けていって俺が丸亀リトルに入ってから1ヶ月が経った頃の事。

 

夏のリトルリーグ選手権大会のレギュラー選抜の紅白戦が行われたのだが、

残念ながら3年生は参加出来なかった。

 

なんでもリトルリーグの協会規定でチームに所属してから1年は公式戦に参加出来ないらしい。

 

リトルの公式戦はシニアと日程が被る事が多く試合のルールや流れを知らない者が参加すると、

試合進行が予想以上に遅れて大会運営に支障が出るからとの事。

 

その為、公式戦のレギュラー選びの為の紅白戦には参加出来なかったのだ。

 

だが、ここで監督が粋な計らいを見せてくれた。

 

今年チームに入った3年生とレギュラー選抜に漏れた上級生で、

紅白戦をすると発表してくれたのだ。

 

上級生にとっては控え選手の座を勝ち取る為のアピールの場であり、3年生にとっては

初めての試合形式を経験出来る場である。

 

レギュラーが確定した者達以外の目は燃え上がっている。

 

勿論、俺だって燃えている。

 

ここで燃えなかったらいつ燃えるんだ!

 

監督が言うにはその紅白戦はグランドの貸し出しの関係で1週間後との事。

 

試合の日が発表されて皆の目がギラギラと輝き出す。

 

尚も監督の話が続くので耳を傾けていく。

 

「今言った通りに控え選抜の紅白戦は1週間後だ!各自怪我に気を付けて練習しろよ!」

「「「はい!」」」

 

「よし!それじゃ今日の練習は終わりだ!解散!」

「「「お疲れ様でした!」」」

 

練習が終わって疲れているというのに皆が笑顔で走って帰っていく。

 

「フーくん!いよいよ試合だね!」

「おう!すっごい楽しみだよ、貴子ちゃん!」

「私も楽しみだよ、フーくん!」

 

俺と貴子ちゃんはテンション高くアレコレ喋りながら帰っていく。

 

そして1週間が経ち、俺は初めて野球の試合を経験するのだった。




これで本日の投稿は終わりです

今週はちょっと忙しいので次回の投稿話数は少なくなるかもしれません

また来週お会いしましょう^^

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