『パワプロ成長』でダイヤのA   作:ネコガミ

115 / 291
本日投稿2話目です


第113話

青道と黒士舘の試合の7回の表、黒士舘の攻撃は2番バッターからの好打順だったが、

4番の財前も含めてパワプロに三者三振で抑えられてしまった。

 

これでパワプロはこの試合でも2桁奪三振を達成した。

 

7回の裏の青道の攻撃は1番バッターの小湊からだ。

 

小湊は財前のムービング系のボールをカットしていき、スライダーを一二塁間に運ぶ

ライト前ヒットで出塁した。

 

続く2番バッターの坂井は送りバントで小湊を2塁に送る。

 

これでワンアウト、2塁のチャンスの状況でバッターは3番の結城だ。

 

財前は左右を広く使って結城を追い込むが、ワンボール、ツーストライクのカウントで

投げ込んだ5球目のアウトローのカットボールをライト前に運ばれてしまった。

 

だが、打球に勢いがあった為に2塁の小湊はホームベースに帰れずに3塁で止まった。

 

ワンアウト、1、3塁の状況で迎えるは4番バッターのクリス。

 

マウンドの財前は帽子を被り直しながら大きく息を吐いたのだった。

 

 

 

 

(ふぅ…きついぜ…。)

 

マウンドの財前は帽子を被り直す際に、アンダーシャツで額の汗を拭う。

 

財前は打たせて取るピッチングで青道打線を抑えてきたので球数は少ない。

 

だが、打の青道の異名を持つ青道打線を打たせて取るのは財前の予想以上に

プレッシャーとなり、財前に精神的な疲労を蓄積させてきたのだ。

 

(あと2回と3分の2、球数は問題ねぇ…気合いを入れ直せ!)

 

財前はグローブにボールを叩きつけて気合いを入れると、打席に入ったクリスを見る。

 

(クリスのバッティングに穴は見当たらねぇ…どう攻める?)

 

財前はキャッチャーのサインに首を横に振る。

 

数度目のサイン交換で頷くと、財前はセットポジションから投球モーションに入った。

 

財前が選択した1球目はアウトローにバックドアとなるツーシーム。

 

ストライクゾーンに切れ込んでくるボールにクリスのバットが反応する。

 

カキンッ!

 

打球はライト方向に飛びフェンスに直撃したが、ライト線を切れてファール。

 

(なんでそのコースを流してそんなに飛ばせるんだよ!?)

 

財前は心の中でクリスに文句を言うが、その表情は好戦的な笑みを浮かべている。

 

(とりあえずワンストライク…次のボールはどうする?)

 

これまで以上の集中力で財前の脳がフル回転する。

 

サイン交換で財前はまた首を横に振る。

 

(ダメだ、それじゃクリスに持ってかれる。)

 

何度も首を横に振ってからようやくサインに頷く。

 

2球目。

 

財前が選択したのはアウトローのストライクゾーンからボールゾーンに逃げるカットボール。

 

クリスのバットが反応するが、バットは途中で止まる。

 

ボールを捕球したキャッチャーが塁審にハーフスイングの確認をする。

 

判定は…振ってない。

 

これでワンボール、ワンストライク。

 

(今のを振って引っ掛けないのかよ!)

 

終盤の同点の場面で3塁にランナーがいることを考えれば内野ゴロもリスキーだが、

積極的にゲッツーを狙いにいった1球だったのだ。

 

(外野フライを打たれてもダメ…理想はゲッツー。)

 

ここで財前はプレートを外してランナー2人に牽制する振りをして間を取った。

 

(クリスにどれだけ効果があるかわかんねぇけど、少しは打ち気を逸らさねぇとな。)

 

ロージンバッグを手にして落ち着いて間を取った財前は、ゆっくりとサイン交換をする。

 

(アウトローを2球続けている。胸元をついて身体を起こすぞ!)

 

3球目。

 

財前はインハイのフォーシームを選択した。

 

クリスは踏み込むがバットを振らずに見送る。

 

判定は…ボール!

 

これでカウントはツーボール、ワンストライク。

 

(次はアウトロー…球種はどうする?カットか?スライダーか?)

 

決断をした財前がキャッチャーのサインに頷く。

 

4球目。

 

財前が選択したのはアウトローへのスライダー。

 

そのスライダーはボールと判定されてもおかしくないギリギリのコースに投げ込まれた。

 

クリスはこのボールを見逃した。

 

主審の判定は…?

 

「…ストライクツー!」

 

この会心の1球に黒士舘ベンチから歓声が上がる。

 

「財前!ナイスピッチング!」

 

キャッチャーからの返球を捕った財前はロージンバッグを手に取った。

 

(問題は次の1球だ。これを間違えたら意味がねぇ。)

 

財前は気合いを入れる為に間を取ってからサインを見た。

 

そしてサインに頷くとセットポジションから投球モーションに入る。

 

5球目。

 

財前が選択したボールはインローへのツーシーム。

 

ツーシームはインローのストライクゾーンから、ボールゾーンへボール1つ分

外れるコースに投げ込まれた。

 

クリスが踏み込んでスイングを始めた瞬間に、財前はこの勝負の勝利を確信した。

 

だが…。

 

カキンッ!

 

金属バットの快音と共に打球は勢いよくレフトスタンドへと飛んでいった。

 

「…ったく、少しはバッティングにも隙を見せろってんだ。」

 

グローブを外した財前は腰に手を当ててベースを回るクリスに目を向ける。

 

目が合った財前とクリスは、お互いを認め合う様に笑みを浮かべたのだった。




次の投稿は11:00の予定です

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。