貴子ちゃんと恋人になった後、俺達は手を繋いで走って青道高校に向かった。
まぁ、朝練の前だった事を忘れて告白をしたから何だけどな!
2人で青道高校に辿り着くと、マスコミ対応等でいつもより早く来ていた礼ちゃんと会った。
礼ちゃんは貴子ちゃんの顔を見ると、何かを察した様にニッコリと笑った。
流石は礼ちゃん。出来る女である。
その後の貴子ちゃんは顔を赤くしながらマネージャー仲間に連行されていった。
礼ちゃんも早く仕事を終わらせて合流する気満々の様である。
うん、程々にしてあげてね。
俺にとってはそんな感じで秋の大会に向けて新チームのレギュラー争いが始まった頃、
青道野球部の練習を見学に来るおっちゃんの姿を見かける様になった。
「俺の事は気にせずに練習を続けてくれ。」
おっちゃんの事が気になったので礼ちゃんに聞いてみたら、あのおっちゃんは
落合 博光という人との事だ。
神奈川の強豪校である紅海大相良でコーチを務めていたらしい。
礼ちゃんが言うには、青道が甲子園で優勝した事で来年の野球部への入部希望者が
増える事を想定してコーチの依頼を出したんだってさ。
青道野球部は3軍まである程に部員数が多い。
その為、片岡さん1人では部員全員に目を配る事は難しいのが正直なところだ。
まぁ、その対処として片岡さんに相談する為のノートがあったりするんだけどね。
そういった訳で俺は落合さんが見学している中で、ブルペンで投げ込みをしているのだ。
「クリスさん!スライダー行きます!」
俺の言葉に返事をする様に、クリスさんが拳でミットを鳴らしてから構える。
構えられたミットを見るだけで笑顔になってしまう。
うん、やっぱり投げるのって楽しいな。
そんな事を考えながらクリスさんのミットを目掛けてボールを投げ込む。
パァン!
クリスさんのミットが鳴らす音で、俺はさらに笑顔になってしまう。
(うん、成長させたコントロールと変化量にも慣れてきたな。)
俺はそう考えながらクリスさんの返球を受けるとステータス画面を確認した。
基礎能力
球速:147km(※155km)
制球:S
スタミナ:C
変化球:カーブ7(※7)
変化球2:チェンジアップ6(※7)
変化球3:高速スライダー3(※7)
基礎能力2
弾道:3
ミート:E
パワー:D
走力:D
肩力:B
守備:D
捕球:C
特殊能力
『鉄人』
『鉄腕』
『身長高い』
『リリース○』
『怪物』
『キレ◎』
『牽制○』
『バント○』
球速を2km、Aに下がった制球をSに、そしてカーブとスライダーを1ランク成長させた。
夏の大会で得たり、先日のお祝いで貰ったりしたおかげでポイントは大量にあるんだけど、
秋の大会が近いのでこのぐらいの成長に抑えておいた。
成長させた感覚に慣れるのに時間が掛かるんだよね。
手の中でボールを転がしながらステータス画面の確認を終えると、投げ込みを再開する。
「クリスさん!カーブ行きます!」
クリスさんは返事の代わりにまたミットを鳴らす。
俺は落合さんが見学をしている事を忘れて投げ込みを楽しんでいくのだった。
◆
(葉輪はモノが違うな。正直に言って手を加える必要が無い。強いてあげれば
クイックぐらいか…。これでまだ1年なのだから先が楽しみな選手だ。)
落合はブルペンで各投手の投げ込みを見学しながらパワプロをそう評する。
(片岡さんも葉輪の扱いには悩んだろうな。まぁ、指導者としては嬉しい悩みだがな。)
落合は髭を扱きながら他の投手へと目を移す。
(事前の情報では丹波はノミの心臓って聞いていたが、堂々とピッチングを
してるじゃないか。)
落合は丹波のピッチングを見ながら片目を瞑ると、丹波を分析していく。
(丹波の課題は真っ直ぐの質とコントロールの向上だな。あとはもう1種類変化球が
欲しいところだが、それはオフシーズンにじっくりと取り組んでいけばいい。)
落合は最後に伊佐敷へと目を向ける。
(伊佐敷はノーコンだったって話だが、しっかりと腕を振って低めに
コントロール出来てるじゃないか。)
落合は感心した様に笑みを浮かべる。
(だが甲子園での事を考えると、細かい力の調整は苦手といったところか?俺が見た感じでは
伊佐敷の適正は中継ぎか抑えなんだが、本人は先発を諦めていない様だな。)
落合は伊佐敷のピッチングを見ながら腕を組む。
(たしか、以前に外野へのコンバートを試していたって話があったな?打球に対する勘と
バッティング次第だが、俺なら外野と投手の併用を考えるがね。)
そこまで考えた落合は何かに気付いた様にハッとすると苦笑いをした。
(やれやれ、見学だけのつもりだったが、どうやら俺はコーチを
引き受ける気になっているらしい。)
頬を軽く掻いた落合は1軍のブルペンに背を向けた。
「青道の課題は投手不足。なら、2軍と3軍も見て使えそうな奴を探すとしようかな。」
そう言って落合は1軍のブルペンを後にすると、2軍で見付けた自分好みの
選手に笑みを浮かべたのだった。
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