「ユニバーサル・センチュリー!!」
パァン!!
そのテレビ内の掛け声と同時に、あちこちから拍手とクラッカーの音が聴こえる。
「ジェリド議員、やはり対テロ組織の増員を推進するおつもりで?」
「はい、揺るぎない決意です」
軽薄そうなインタビュアーからの言葉にジェリド・メサ議員は眉一つ動かさず、正面を向いてハッキリとそう答える。
「奥様をテロで亡くされたことと、ご関係な?」
「ノーコメントです、しかし」
その不躾な質問にも、ジェリドはやはり眉一つ動かさない。
「平和を願う心、それは今は亡き妻も同じですから」
――――――
「マザー・ララァを始め、愛する人達に囲まれて大往生」
「何の話よ、カツ?」
「アムロさんの話さ」
「そうね……」
子供を抱きかかえながら、カツ・コバヤシはアムロ・レイの葬式の事を思い出していた。
「熱中症か……」
「誰だって、ちょっとした暑さ寒さで死ぬって言っていたわよね、アムロ・レイは」
「当の本人がそうなっちゃ、世話はない……」
それでも、英雄として死ぬよりはよほどいいと思えるのが彼らカツとサラ、二人の夫婦としての意見である。
「シロッコさん、もうすぐ木星から帰ってくるんだって?」
「ええ、あのアンジェロという子と一緒に」
「ケーキ、作ろうか」
「そうね……」
――――――
「雨だねぇ……」
「フィリップ、フランスパンを三つ」
「あいよ、アルフ」
新聞を読みながら、パン屋店主「フィリップ・ヒューズ」は客にパンを袋に包んでやる。
「コロニーの気象機構、壊れているんじゃねえのかい?」
「そう思うなら、コロニー公社に文句でも言うんだな」
「チッ……」
奥からフィリップの妻ミーリが顔を出し、アルフへとコーヒーを淹れてやる。
「研究、忙しいのかい?」
「最近はそうでもない」
「人生にゆとりが出来た、アルフ?」
「俺にとっちゃ、研究がゆとりだよ、フィリップ」
「頑張れよ、アルフ・カムラ大佐殿」
「止めてくれよ、監視の為の大佐階級だからよ……」
――――――
――エグザムについてだがな、クルスト博士――
――なんだ?――
――結局の所、NT-Eとはなんだったのか――
アルフの指がキーボードを這い、姿なきクルスト・モーゼス博士と「会話」をする。
――教えてくれないか――
――裁くモノだ――
――何を裁く?――
――力を持ちすぎた者――
ズゥ……
サマナが淹れてくれたムラサメ茶を飲み干しながら、キーボード上の手は動き続ける。
――すなわち、可能性を持ちすぎた者だ――
――可能性は悪とでも?――
――過ぎたる希望は、破滅への道筋だ――
――だから、NT-Eはユウ・カジマを裁いた――
――あえて、ユニコーンガンダムに隙を作ってな――
――ふぅむ――
サマナが呼ぶ声が聴こえる、どうやら客のようだ。
――ミノスフキー粒子、何か強く係わっていたな、エグザムに?――
――ラプラス・エーテル、ミノスフキー博士は最初はそう呼んでいた――
――物理的にも、通信手段的にも使えるとおもったのかな?――
――「焚き火」それと同じようにな――
――火で、Gマリオンの限界を突破させたのか――
サマナのアルフを呼ぶ声が大きくなる、どうやら重要な客人らしい。
――ではな、クルスト博士――
――私はいつでも「ここ」にいる――
――研究で煮詰まったときに、来ることにしようか――
そう、クルスト博士が言ったきりフッとモニターから彼の気配が消え去った。
「アルフさん、ゴップ提督がお呼びです」
「わかった、わかった……」
そう言いながら、椅子から立ち上がろうとするアルフ・カムラ。
「あいたた、腰が」
「何をやっているんですか、アルフさん……」
「俺ももう……」
歳なんだなと、アルフはそう思った。
――――――
「シャア」
「なんだ、ハマーン?」
「私達は、結局結婚はしないのか?」
「結婚をしたら」
そう言いつつに、シャア・アズナブルは胸のロケットに入ったアムロ・レイの遺影を実と眺める。
「彼に申し訳ない気がしてな」
「そうか……」
だが、その道理はハマーンには解らなくはない。
「聞けば、ララァ姉さんも結婚はしないつもりらしいな」
「ララァらしいな、全く……」
「ま、どっちにしろ」
そのまま「伸び」をし、三十前後とは思えない身体のラインをシャアに見せ付けてから。
「結婚が女の幸せではないし、人生でもない」
「言ってくれるじゃないか、ハマーン」
「フフ……」
艶然と、微笑んだ。