夕暁のユウ   作:早起き三文

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第95話 将人ユウ

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 朝陽が昇るとき、先手は連邦軍可変機隊から進軍された。

 

「NT-B……」

 

 早い、いや目にも止まらぬスピードとはこれのことか、第二世代エグザムを発動させたユニコーンガンダムにより、そのハンブラビを中核とした可変機隊は瞬く間に殲滅させられる。

 

 ギィーイ!!

 

 いきなり部隊を半壊させられ、指揮を失った可変機隊がアンジェロ・ザウパーのZⅢによる斉射により追撃を受け、完全に沈黙した。

 

「挟撃だ!!」

 

 リディが駆るリゼル改がその悲鳴じみた声を上げると同時に、ヨンムがチーフを務める空中型シャンブロがその一部隊を受け持つ。

 

「下、大型機接近!!」

 

 ヒュイ、キュア!!

 

 フィン・ファンネルを制御翼とした運搬機「フェネクス」を駆るナイチンゲール、純白のアムロ・レイ専用機が黒い袖付きZプラス達を蹴散らしながら、ガランシェールへと一直線に突き進む。

 

 ザァン!!

 

「アムロ・レイ!!」

「ユウ・カジマか!!」

 

 ビームサーベルを合わせてみたところ、純粋な出力だけならば完全にユニコーンガンダムの方が上である。そのうえ。

 

「NT-C!!」

「くそ、頭が!!」

 

 ニュータイプ相手ならば圧倒的なアドバンテージを誇る第二世代エグザム、それによる恩恵を受けたナイチンゲールが瞬く間に制御を失い、落下していく姿をユウ・カジマは愉悦の笑みを浮かべたまま見下していた。

 

「たわいもない、これがニュータイプか!!」

 

 辺りを見ると、シロッコ専用機「ジオユニコール」がそのNT-Cの影響を受けている様子だ。明らかに格下の空中戦用クシャトリアに苦戦している。

 

「パプテマス・シロッコ、俺に付いてくれば……」

 

 シロッコだけではない、バイアランの部隊に宇宙から奇襲を仕掛けてきたシャア専用νガンダムもそのコントロールを失っている様子がまざまざとみてとれる。

 

「ククク、圧倒的じゃないか、我々の軍は!!」

 

 ロストスリーブス第二陣、それを待たずしてこの宙域へと展開している敵機達を殲滅させることが可能かもしれない。そう将人ユウが錯覚をしたとき。

 

 シャフォ!!

 

 紅い、鋭い弾速のビームが地上から次々と上がってくる。

 

「ニュータイプではないな、こいつらは」

 

 ならば、機体性能そのもので相手をするしかない、そうユウが心に決めた時。

 

 ギィン!!

 

「そうか!!」

「そうだとも、ユウ・カジマ!!」

「お前がいたな、ニムバス!!」

 

 ニムバス・シュターゼンはそのユウ・カジマの声には答えない、そのまま聖剣マリオンを振るい続ける。

 

「傲慢さを償え、ユウ!!」

「償えだと!!」

 

 ザォン!!

 

 やはり、出力はユニコーンの方が上だ、そのまま鍔迫り合いでグイとニムバスのデッサ・ドーガを押し込むユウ・カジマ。

 

「それこそが、貴様の言う傲慢さの顕れだろう!!」

「私はそれを乗り越えた!!」

「俺はそれを我が物とする!!」

「その傲慢さで、お前は何を手に入れた!?」

「力と!!」

 

 ガッ!!

 

 そのままバイコーナ、デッサ・ドーガの運搬機を蹴り飛ばしながら、自身の運搬機「ペイルライダー」を呼び寄せるユウ。

 

「狡猾さだ!!」

「それは過ぎた力だよ、ユウ・カジマ!!」

「さすらば、勝つ!!」

 

 デッサ・ドーガは所詮は量産機に毛が生えたようなものだ、バイコーナから離れたその機体は、明らかに機動力が落ちている。

 

「NT-D……!!」

 

 数では連邦、そしてあるいはネオ・ジオンに劣るロストスリーブスは、短期決戦でしか勝機は見出だせない。すでに太陽が中天に差し掛かった時にいつまでも戦いを続ける訳にはいかないのだ。

 

「ぐぅ、頭が!!」

 

 未だにアクシズ紛争時での後遺症が残っているシャアのνガンダムがまずは落ちた、しかし。

 

「ちっ、さすがはシャア!!」

 

 フラフラと力がなく飛行しながらも、シャアはレウルーラを一隻轟沈させ、そのパイロットとしての能力を見せたこと、しかしそれでもユウ・カジマの余裕は落とせない。

 

「ん?」

 

 その時、生身のユウの胸の辺りから蒼い光が立ち上る。

 

「うわ、あ……!!」

 

 見るに「御守り」がぶら下げてある皮膚、胸の辺りから肉の焼ける臭いがし、ユウ・カジマの身体を焼く。

 

「止めろ、焼くな!!」

 

 フツゥ……

 

 その御守りを手に取り、それを投げ捨てようとしたユウ、しかし。

 

「くそぉ!!」

 

 将人ユウ・カジマは、その御守り群をどうしても投げ捨てる事が出来なかった。


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