「アンジェロ」
「はい、ユウ少将」
「君はニュータイプが嫌いかね?」
「はい」
率直な返事、それこそが彼が微弱ながらでもニュータイプ的要素を持っている証であるのだが、ユウ・カジマはそれにはふれない。
「我々ロストスリーブスは、貴方ことユウ・カジマに従います」
「フロンタルにそう言い含められていたのか?」
「あの方の死の間際、思念が我々の間を貫きましたので……」
「そうか……」
その言葉を聞いた時、将人ユウの胸に軽い痛みが疾った。なかば彼が殺したようなものだからだ。
「ユウ少将」
「何だ?」
「空中に我々の楽園は創れるのでしょうか?」
「説明はしたはずだ」
「余りに滑稽夢想なもので……」
「ならば、何の為にミノフスキークラフトがある」
「永久に続くモノではないでしょう?」
「オールドタイプとニュータイプを働かせれば、無限ともなれるさ」
その言葉に、アンジェロの脇に控えているロニ少女が軽くその細い眉をしかめてみせる。
「我々は、ラプラスタイプだ」
「ラプラス、タイプ……」
「大地と宇宙の狭間に生きるもの、それが我々だ」
すでに大気圏内飛行可能なレウルーラ、宇宙戦艦は数隻この宙域へと降下を始めている。
「これは地球圏への反乱です、ユウ少将」
「違うな、リディ」
「違う?」
「これは、愚かなる地球市民への裁きの鉄槌なのだ」
その言葉はユウ・カジマのオリジナルではない、もっと昔に同じ言葉を吐いた独裁者がいた。
「神の放ったメギドの火が、我らラプラスタイプを必ずや理想郷へと導いてくれるであろう!!」
その拳を振り上げる仕草に周囲の人間は最初は戸惑ったものの、やがて。
「ジーク・ラプラス!!」
「ジーク・ラプラス……」
「ジーク・ラプラス!!」
「ジーク・ラプラス……!!」
唱和を、始めた。
――――――
「我々ラプラスタイプは、今ここに天空の城を築く事を宣言する!!」
その将人ユウ・カジマの宣言に、テレビ、その他のあらゆる媒体の前の皆は呆れるしかない。
「狂ったか、ユウ・カジマは……」
旧ストゥラート艦長「ミリコーゼフ」の言葉は、全ての人間が感じていることでもあった。
――――――
「意外としっくりくるな」
「そうかしら、アムロ?」
「ノイエ・ローテの小型機とか言っていたな、シャアのやつは」
「本当なら、シャア本人が乗りたかったみたいね」
「冗談はよせよ……」
運搬機「フェネクス」に乗せたニュータイプ専用機は、反乱を止めるために大空高く揚がっていった。
――――――
「昔の百式に似ている……」
「操縦系が、大きく改良されたみたいだな」
「礼をいうぞ、ハマーン」
「それでも、時代遅れの機体になっているかもしれん」
「なに……」
そういいながら、仮面を外したシャア・アズナブルは運搬機にガンダム・タイプを乗せながら宇宙へと飛び出した。
――――――
「ドゥガチ、よく持ってきてくれた」
「こんなもの、お前しか使える者がいない」
「すまんな、世話をかけて……」
「お前からそんな言葉を聴けるとはな、人は変わるものだ」
「その変わったヒトを、私はこれから成敗しにいくのだよ……」
そう、木星船団団長に向けて淋しげに笑ったパプテマス・シロッコは最新鋭機を駆り、大気圏内へと突入した。
――――――
「やはり、僕たちも行きます!!」
「だめだ、カツにサラ」
必死の形相で食らいつくカツとサラを振り切り。
「もう、お前達だけの身体ではないのだぞ」
「はい……」
ニムバスはデッサ・ドーガへと乗り込む。
「ローベリア、聖剣マリオンの調子は大丈夫か?」
「いつでもオーケーよ、ニムバス」
「お前は残っていてもいいのだぞ、ローベリア?」
「そういう訳にはいかない」
「そうか……」
バイコーナ、ブルーディスティニー六号機へと乗ったデッサ・ドーガはカツ達に見守られながら、大空高く飛翔していった。
――――――
「すまねぇな、サマナちゃんよ……」
「いいんです、フィリップさん」
「ガキの顔を見ずに死ぬのが、怖くてよ」
「ユウさんの尻をひっぱたくのは、僕に任せてください」
そう頷きながら、サマナは新鋭量産型モビルスーツ「ジェスタ」へと乗り込む。
「ユニコーンガンダムだか、ユニ・エグザムは俺は全く関わっていない」
「だから、気を付けろと?」
「遠慮なく破壊してくれ」
「どうせなら、ユウさんの心配をしてくださいよ……」
「大切なエグザム時代からのモルモット、殺さないでくれよ」
「難しい問題だな……」
コクピット内で苦笑しながら、サマナは運搬機に空を翔ぶように命じた。