「スクランブル発進ですって!?」
敵性機は不明、詳しいことは全く解らないが、とにかく出撃せよというのがハイリーンたちへと与えられた命令である。
「この新兵たちが主流の戦力で何を!?」
「命令ならば、しかたありません!!」
「だからって、リディ君!!」
「リディ・マーセナス、リゼル出ます!!」
「ちょっと!?」
気勢に逸って出撃した新兵「リディ・マーセナス」を放ってはおけず、ハイリーンも出来る限りの情報を耳へと入れてから、愛機リ・ガズィを出撃させた。
「敵性機、サイコガンダムMK-Ⅳ」
「所属を聞いているのよ、私は!!」
「不明だといってるの!!」
虫の居所が悪い男性オペレーターの声にムッとしながらも、ハイリーンはリ・ガズィを加速させる。
「若い子達が死んだら、どうするの!!」
少し、ハイリーンはパイロットにしては母性本能が強すぎるのかも知れないが、それでも皆が皆ハイリーンの三分の二程しか生きていない若者、少年とも少女ともギリギリにいえる年ごろなのだ。
「見えた、不明機!!」
かなりの大型機である、量産型サイコガンダムと同じ位、通常のモビルスーツよりも一、二廻りは大きいだろうか。
「攻撃を開始します!!」
「待ちなさい、リディ!!」
ビューイ!!
「効かない!?」
「バリアーだとでもいうのですか!?」
「下がって、リディ!!」
そうこうしているうちに、後続のリゼル部隊が展開を始め、その不明機を包囲しはじめる。
ガッ!!
不明機を乗せた運搬機、蒼ざめた騎馬にも見えるそのサブ・フライト・システムが急速旋回をし、運動性能の高さをハイリーン達へと見せつけた。
「邪魔だ!!」
「何ですって!?」
「邪魔だと言っている!!」
「ユウ、ユウなの!?」
「ハイリーンか!!」
正体不明機は攻撃を仕掛けてこない、代わりに各リゼル隊のレーダーに異変が起こっている。
「ステルス、いやジャマーか!?」
その妨害のため、未熟なリゼル乗りの内二機が正面衝突を起こしパイロットが脱出する姿がユウとハイリーン達の目に止まった。
「これがアンアウェイクン、隠密モードとでもいうのか?」
「止まりなさい、ユウ!!」
「そこを除け、ハイリーン!!」
バッフォ!!
リ・ガズィのビームキャノンが不明機のバリアーを貫通して肩をえぐり抜きその行為に。
「どうしても、敵に回るというのならユニコーンガンダムで!!」
ユウ機「ユニコーンガンダム」ことユニ・エグザムから火線がハイリーン機に向かって疾る。
「きゃあ!!」
「ハイリーンさん!!」
リゼル、他のリゼルとは仕様が異なる機体が、被弾をしたハイリーンの援護にと加わった。
「ユウ少将、止めてください!!」
「リディ君か、ちょうどいい!!」
ユニコーンガンダムは運搬機から急速離脱を行い、そのリゼル改良型へとその身を密着させる。
「俺の部下第一号となれ!!」
「何を言っているんですか!?」
「俺は、この青空に!!」
朝の日が差してきた大空、それをユニコーンは指さしながら、大声でリディ少年に向かって怒鳴った。
「王国を創るつもりだ!!」
「はあ!?」
「まつろわぬ者達の楽園だよ!!」
ユニ、その単一を意味するユニコーンガンダムの一角がその言葉を受け、鈍く光る。
「一緒にこい、リディ!!」
「行っちゃダメ、リディくん!!」
ややに混乱状態に陥ってしまったリディ少年は、そのまま飛行形態のままのリゼルをもて余したまま。
「行くぞ、リディ!!」
「リディ君!!」
グゥ!!
ユニ・エグザムにより連れ去られ、そのまま運搬機にと乗ったユウ少将機により、天高くへと飛翔していった。
――――――
「俺に微弱でもニュータイプとしての素質があるのであれば」
ユニコーンガンダムに乗ったユウ少将、彼はそのまま念を凝らし「仲間」を呼び寄せようと試みる。
「届け、ユウ・フロンタルの同腹たちよ……」
その願いは。
ゴウゥウ……
巨大輸送艦「ガランシェール」が地球へと降下したことにより、叶えられた。
「どうだ、リディ……」
「僕には、よくわかりません……」
「いずれ、解るさ」
その言葉に、リディが傲慢さの影を感じ取ったのは、決して彼が愚鈍でない証である。