「復活を、したか……」
「ミネバ様?」
「最初は小さく」
「ミィネバ様……?」
「そして、どこまでも大きくなる」
「なんですか、それは?」
「知らん、どこぞの童話だったと思う」
ほぼ破砕作業が完了したピナクル、地球への落下軌道にと乗せた三基の巨大小惑星の内、尖塔の名を持つゼダン・ゲートの下部。
「北宋バーガーから、具がこぼれていますが?」
「うるさい小僧だな、お主は」
「お前ではありませんよ、僕は」
「フン……」
旧ア・バオア・クー要塞の下部を消滅させる為のマイクロ・ソーラ・レイ、ビグザムⅡであるミィバ・ザムが放つ小型コロニー・レーザーが発射されるカウントの始まる合図が、ネェル・アーガマ艦内に響く。
「オレンジ・ジュース」
「僕には、バナージ・リンクスという名前が……」
「オーレンジ・ジュース!!」
「は、はい……!!」
マクベナルドというのは、元々ジオン共和国、旧ジオンの本拠コロニー「サイド三」を治めているダルシア首相の、連邦による間接統治から始めたフード・サービスという面がある。
「あの、マ・クベ店長……」
「ミネバ様、というのは良い方なのだぞ、バナージ君?」
「あの人、怖いです……」
「それも社会勉強だ」
「はぁい……」
この旧ジオン公国で、けったいな珍人物として知られたマ・クベには、その神経質過ぎる気質により人に疎まれる所は確かにあるが、それでも旧ジオンの兵が行く先、テロリズムへ走らずにまともな生活を送れるようにするには、元ジオンの人間が行う。
「オレンジジュースです、ミネバ様」
「ご苦労」
民間への溶け込み政策、連邦軍発案によるその試みを支持する位には、先見の目を備えている。
「お主も、この若さで大変だな」
「僕には、両親が遠い人たちなので」
「そうか、そうか……」
そして、家族とは縁遠い少年少女達を極めて短時間の間、アルバイトとして雇う特別許可を連邦へ申請する辺り、何か遠く先の未来を考えている節が見られる。どちらにしろ、もはや武闘派ジオンの歴史はこのバナージ少年の勤め先店長であるマ・クベという男にとって。
「少し、私の肩を揉んでくれぬか、バナージとやら」
「えぇ……?」
「少し、ラプラスの悪魔に目を凝らしすぎたせいか」
「悪魔?」
「肩と目が痛い」
終わった時代だ、ジオンの残党などという話は。
「このイバラ・ステーキはいけるな、元ジオンのカリスマ」
「そうか」
「が、誉めてはやらん」
終わりにしなければならないのだ、このエギーユ・デラーズを最後に、キッチマンたちにとっては。
「せいぜいコロニー落としの罪償い、がんばるんだな」
「ワシも、こんな身分に成り果てようとはな……」
デラーズ紛争時のコロニー落としでもジオンの発言力は上がらなかった、ゆえにこれ以上の抵抗は無駄と判断し「ジオン軍人再建プログラム」という手段をとったこの男「エギーユ・デラーズ」の判断力は大したものである。
「ミンナ・デラーズ、贔屓にするぜ」
「それは、なにより」
たとえ、キッチマンの言葉に口をはさんだミネバの命令があったとしてもだ。
――――――
バァン!!
「よし、シャアのコクピットをこじあけた!!」
近距離遠隔プログラムでノイエ・ローテを操作していたアナベル・ガトーの放った喝采と共に、彼の腹心であるカリウスが対人用レーザーライフルを自らのモビルスーツから乗り立たせ、その照準をシャア、鉄仮面へと向ける。
「カリウス、シャアの鉄仮面だけを狙えるか!?」
「仮面を破壊すれば少しはノイエ・ローテの制御」
狙撃用ライフルをややに驚いた風のシャア・アズナブルに向けているカリウスの声は半信半疑だ。
「いや、悪霊達を抑えられるってあうのは、少し楽観視しすぎでは?」
「しかし、他に手は無い」
「まあ、確かに」
ピューイ……!!
その最後の台詞を言ったか言わないかの内でいとも簡単にレーザーを放った彼、カリウスの豪胆さに付近にいるハマーンはなかば呆れながらも、固唾を飲んでシャアの様子を見守る。
「グゥ……!!」
「命中、したか……?」
軽きバイオ・ウェーブを辺りへと撒き散らしながら、苦悶にその顔を歪ませるシャアの姿を見て、ハマーン・カーンはそっと胸を撫で下ろした。
「私は、今まで何を……!?」
「その、責任転嫁が」
シャアのザ・ナックのすぐ近くまでやってきたGペガサス、ν-GPの管制ユニットを駆るアムロ・レイから呆れとも怒りともとれない声が、苦々しく周囲の宙域へ疾る。
「悪魔、それを呼び起こしたのだろうに……」
「言ってくれるなよ、アムロ」
「そこまでして、俺に勝ちたかったのか、シャア?」
「勝ちたかったさ」
ノイエ・ローテの自律は僅かには遅くなった様子であるが、それでもシャアのコントロール下を外れてもこの妖花は動きを止めないあたり、人外の力で動いているのは明確であった。
「もっとも、こんな妖花に頼る必要はなかったかもしれないがね」
「そりゃあ、そうさ……」
「お前の力がここまで落ちてようとはな、全く」
「七年の軟禁だ、昔と同じだとおもうなよ……」
毒、それが少しは削がれたシャアの声にアムロはその面に僅かな安堵の浮かべる、が。
「悪魔、だと……?」
「お前が言うか、シャア?」
「だが、あれはなハマーンよ……」
ヴォウ……
微かに「蒼み」が帯びた宙域にと浮かぶ、赤黒き憎しみの翼を宙にと拡げるGマリオン。そのユウ・カジマ機は緩慢な動きではあるが。
「何をする気だ、ユウ・カジマ……」
「エグザム、確か私が旧ジオンのニタ研、ニュータイプ研究所フラガナンに訪れていた時に」
「ララァに可愛がられていたよな、お前は」
「マリオンというオトモダチ、にもだよ、当時の私は」
その、悪魔の羽根が周囲の宙へ跳ねるだけでも、サイコミュ搭載機に及び。
「新しい姉、そして同級生が擬似的に出来たようで、嬉しい気分だったよ」
「昔話は、私も良いものだと思っているがな」
「解っているよ、シャア……」
ニュータイプの能力、脳へ伝わる情報が遮断されるような気分を、この二人のニュータイプ男女は感じている。
「どう、すりゃあなあ……」
「頭が、痛いよ……」
「しっかりしろ、嬢ちゃん達……」
「でも……」
二機のキュベレイ・タイプへと乗っている少女二人に与えている影響ほど彼女達の機体を支えている青年。
「頭の中と、目の前が暗くなっていく……」
「精神兵器、ニュータイプだけに通用するウィルスだとでも言うのか、ユウさんよ……?」
リョウ・ルーツ青年は、ユウ・カジマ機から発せられる邪念の影響は受けていないが、それでも友軍機であり、世話になった上官が乗っている機体であり。
フォウ……
「いや、ユウ・カジマさんに取り憑いた幽霊……」
ニュータイプなぞは単なるインチキであると考えていた節もある彼にしても、この紅きGマリオンの姿を見て、錯覚であると言い張る事は許されない。
「ドズル・ザビ、あの方の最期のようだ……」
「そうなのか、ガトー?」
気乗りこそしなかったのだが、それでも彼女シーマ・ガラハウとて機能停止したノイエ・ローテから這い出できた彼アナベル・ガトーを見殺しにするのは何か夢見が悪い。そう、まさしく。
「あたしは、アイランド・イフィシュへと毒ガスを投げ入れた時に」
「シーマ殿、その話は……」
「うるさい、ガトー巾着」
そのカリウス機の手のひらへとガトー、モビルスーツに比べれれば哀れなほど矮小に見える高潔な戦士を彼に預けながら、シーマは微かに自身の頭を押さえ始める。
「毎夜、あたしの夢の中で責め立てている連中さ……」
「アイランド・イフィシュの噂は本当だったのか、シーマ・ガラハウよ……」
「知らぬはあんただけだよ、ガトー」
もはや、シーマのようなオールドタイプにしろ。
「そこのカリウスか、そいつも知っているさね」
「スペースノイドの可能性の為に、我らが贄にした同胞か……」
「銃やモビルスーツで人を殺すのはあたしには構わない、だがね……」
アムロ・レイのようなニュータイプにしろ、このアクシズが落下を始めた時から、僅かずつ確認されていた光の正体は疑う余地はない。
「訳が違うんだ、人間の数字がアリやハエ、死んだ虫を数えるレベルなんだ」
「亡霊達、か……」
「理屈なんか、解るもんではないがねぇ……」
総意だ、モビルスーツ戦争が始まった時から、発生した死者達が依り集い、形を為した。
「地球からも、宇宙からもな……」
なおも憎む力、そしてそれを食い止めるべく地球から発せられた善意の、死者達の総意。
シャウ、ア!!
アクシズから流れてきた結晶体、様々な色に満ちたその輝く光を触発されたかのように、Gマリオンがその身に纏う悪魔の翼から熱風。
「クゥ……!!」
「しっかりしろ、シャア!!」
「強化人間に、なった甲斐があったな……!!」
鋭利なサイコ・フィールド、赤黒き風が闇を疾り、生身で宇宙を漂っているシャアを含めて付近のモビルスーツ達を吹き飛ばす。
ブォウ!!
「各員、ともかく!!」
「ニューペガサス、アムロか!?」
ν-GP、メカニックが見れば後退を勧めるであろう程に機能が低下したアムロ・レイ専用モビルアーマーが、宙へ漂うモビルスーツ達に気を付けながら。
「何をする気だ、アムロ!?」
「下がっていろ、シャア!!」
やや低速で、そのユウ・カジマ機に向けてその巨体を近づけようと試みる、のだが。
グゥ……
ゆっくりとその身をアクシズへと羽ばたかせるGマリオン、ブルーディスティニー五号機から放たれる、ニュータイプを。
「前が、目が見えない……!?」
「ニューペガサスの操縦権、こちらへ譲って下さい、アムロ・レイ!!」
「サイコミュ・ジャマーとかいう品の話は聴いた事があったが……!!」
彼らの可能性を殺すというのがエグザム・システムの基本設計であるらしいとはアムロも聞いているが、この。
「機械的ではなく俺の生身、脳が焼けるような……」
あたかも、伝染性の熱病のように自らを蝕むユウ・カジマ機の機能だか怨念の心に、目視もニュータイプ脳波による探知も出来なくなっていく現象にアムロは戦慄を感じざるを得ない。
「まるで、ニュータイプだけが感染する疫病じゃないのか……?」
「コウ、アムロさんからコントロールを奪うぜ……!!」
スゥオ……
余力が無いというのに、危うくノイエ・ローテの残骸にぶつかりそうになるニューペガサス、その状態に苛立ちながらサブ・パイロットであるキースが操縦権を自分達に引いた為に、どうにかν-GPはその巨体を安定させた。
「怨念達が、ノイエ・ローテからユウ・カジマに身を移したか……?」
この身体への影響を別とすればGマリオン、元の蒼き機体色と黒赤の光が混じり合い、毒々しき青き泥土の肌を持つ。
ズゥ……
その背中の翼を重たそうに引きずりながら、虹色の光を放っているアクシズへと宙域を掻い潜る腐乱死体、ユウ・カジマ機が他のモビルスーツ達を眼中に入れていない様子はある程度の安心をアムロ達へ与えてくれるが。
「核、弾頭……」
ブゥ、ウ……
未だにノイエ・ローテにも悪霊達の意思が残っているのであろう、シャア・アズナブル専用モビルアーマーの切り札である核弾頭ファンネル二機が、妖花の「おしべ」が静かに揺らぐ姿をアムロ・レイは感じる。
「悪く思うなよ、中年……」
「やるのか、ナイジェル?」
「撃ってはみるけどな、ケーラ……」
ドゥ……!!
ニューペガサスに掴まり、この宙へと運ばれてきたナイジェル機からのビームライフルに続き、ニューペガサスからもサブ・ビームが放たれ。
ヌゥ、ウ……
「やはり、効かぬか……」
彼らに続き、クィン・マンサの頭部から撃たれたビーム砲も、全てGマリオンを取り囲む黒き光により。
「サイコ・フィールドだな……」
たやすく、その光を吸収させる。
「魂の壁だ」
「一千万を越える人間が織り成す怨念の壁か、ハマーン……」
「ユウ・カジマの気配を確認するのさえ、難儀だというのに……」
皮肉な事に、アクシズ方面から放たれてくる強力な善意の光、宇宙の心達がハマーン達のニュータイプ能力を強く引き付け、戦闘意欲の奮起が難しいという面に。
「勝つ、勝たない以前に戦い方が解らないな……」
「何か、俺達にも視界に影響が出てきましたよ、アムロさん」
「コウさん、単に視界があの翼により錯覚を受けていると暗示を、自分を信じ込ませた方がいい……」
僅かにGマリオンから距離をとるニューペガサス、どうにかそれのフィン・ファンネルの起動だけはスタンバイさせているアムロの口から、低い唸り声が上がる。
ゴゥウ……!!
「あの、リビング・デッドのオジサン……!!」
翼、暗黒のオーラに満ちたそのサイコ・フィールドが大きく拡がり始め、Gマリオンのコンバーターからもタールの波が迸り、薄く蒼い。
「何だよ、嬢ちゃん!?」
「憎んでるんだ……!!」
宇宙の、人の心を溶かし始める。
「アクシズに咲いた、人の魂を!!」
「だからといって、プル……!!」
「妬ましいんだよ、あの人はプルツー!!」
「それが解っても、ね!!」
攻撃はおろか、視認もニュータイプ能力による感知も妨害されているとあっては、文字通り手も足も出す事は出来ない。
「どうしろと、あの大佐さんを……!!」
明らかに推進力、出力を矯めておると思われるユウ・カジマ機、彼のその身が腐肉。
ポゥ、ト……
ブルー・ポイズン、腐り落ちた光が一つ足元の宙へ浮かぶと共に、その翼が強く発光を始めた。
「やむを得ん、キース!!」
「オウ……」
おそらくこの宙域に展開している機動兵器の中では最も強力な、ニューペガサスのその主砲をGマリオンへと向けるアムロ・レイ機のサブ・パイロット達。
「あの世で謝るよ、ユウ・カジマっていう大佐さん……」
「俺も同罪だからよ、キース……」
「あれは、悪いモビルスーツなんだ……」
とはいえいくら心に覚悟、同軍の者を殺す決断をしたといっても、そのメガ・ビーム砲がGマリオンを包むサイコ・フィールドを撃ち破れるという保証はない。
「人でなくなったモビルスーツなんだ……」
それでも、キースは相手がモビルスーツ・クラスの機体ならば確実に破壊ができる出力を持つその大口径ビーム、並みの艦砲よりも高い威力を誇るそのビーム砲の狙いを定め、その砲門へと薄く光が宿り始めた。
――宇宙には――
「ん?」
――心が満ちているの――
「ラ、ラァ?」
何か、静かな声が残された核弾頭ファンネル達への対策の為に、あらゆる「雑音」に耐えながらも集中、精神を整えているアムロの脳裏へと響く。
「いや、違う……?」
――ゆえに、この蒼き宇宙が見えていない彼を、私マリオンこと――
「マリオン・ウェルチ、ララァの言っていた?」
――蒼き運命を忘れつつも、このローペリアと――
「キース!!」
アムロが主砲を発射させようと、サブ・パイロットへ向けて声を張り上げた、その時。
「メガ・ビーム、撃つのを止めろ!!」
――私、ニムバス・シュターゼンが!!――
ザァ!!
流星雨、蒼き輝きに満ちたその光と共に、一機のサイコミュ搭載型ドーガタイプ、紅き「バギ・ドーガ」がその悪魔Gマリオンをファンネルによって怯ませると同時に。
ザァ、ン!!
「ユウ・カジマ、騎士たる私ことニムバス・シュターゼンが!!」
輝く剣、マリオンの聖剣を振るう黒きレーテ・ドーガが悪魔の翼を引き裂く。
「騎士道たるに基づき、弱者保護の精神を持って!!」
バァウ!!
そのニムバス機による斬撃に奮い起こされたのか、ユウ・カジマ機Gマリオンの手に持つ魔剣が、どす黒き焔を噴出させ。
「お前こと、ユウ・カジマを助ける!!」
ガァン!!
その魔剣エグザムと、聖剣マリオンが刃と光を合わさせた。
「ローペリア、支援を頼む!!」
「了解、ニムバス!!」
「いや、今は!!」
マリオンの剣、対サイコ・フィールド抑止力として試作段階である接近戦用サイコミュ端末、言い換えれば手持ち型ファンネルであるその剣の蒼き光が。
「あえて、君の事をマリオンと呼ばせてもらう!!」
「オッケー、ニムバス!!」
「何故かと、問えば!!」
簡単に魔剣の焔を押し返し、激昂したかのように邪念のウェーブ、ニムバス機へと差し向けられる死者の魂達を。
スゥ……
蒼い流星雨、宇宙の心を宿した小型ファンネル「ピクセル・ビット」達がGマリオンの怨霊達からニムバス機を守ると共に、その悪魔の翼へ幾多の穴を開ける。
「それが、蒼い宇宙ことブルーディスティニーに携わった者の、使命だ!!」
――ニム、バス……?――
「そうだろう、ユウ・カジマ!!」
悪魔の翼を別とすれば、驚くほどGマリオンの動きには「キレ」が無い、その事をニムバスは、ややに勝手ながら。
「お前は、ユウだ!!」
――俺の名は、ユウ……――
「そうだ、宇宙には信念か満ちている!!」
――乱暴なヤツめ、男……!!――
「そして、お前はエグザムではない!!」
彼が持つ蒼き宇宙、その心による抵抗、すなわち。
「合力しろ、ユウ・カジマ!!」
ユウ・カジマの可能性を信じ、彼を依り代にと選んだアイランド・イフィシュ達の亡霊達の手(グローブ)から。
「お前の力は、何も無い事!!」
――俺には、何も無い――
「故に!!」
救い上げる為に、刃をもって蒼き宇宙を。
「ニュータイプとオールドタイプの両方を受け入れられる!!」
――俺は、ニュータイプが憎い――
「空の、器なのだ!!」
――強者が、妬ましい――
「ならば、ユウ・カジマ!!」
マリオンの、宇宙の心を。
「私の、刃にその憎しみをぶつけろ!!」
――ニムバス……――
「私の剣の動き、見失うなよ!!」
――ニムバス!!――
その非殺の剣へと、蒼き宇宙を映し出しつつ、ユウ・カジマの毒を吐き出させようと試みる。
「ニムバス・シュターゼン!!」
「ホウ!?」
その気迫のこもった一撃は、ニムバス機をやや後退させると共に。
「なんだ、呆気ないぞユウ!!」
「すまない、ニムバス!!」
自ずと、死霊達の呪縛からGマリオンを解き放とうとユウ・カジマの心が蠢き始めた。
「そしてローペリア、いや!!」
だが、アイランド・イフィシュの亡霊達は、なおもユウ・カジマを復讐代理人にと。
「マリオン!!」
「今さら、よくも気が付かなかったものだ、ユウ・カジマ!!」
「俺は、本当は!!」
固執をし、その機体へと集合を続ける。
「蒼い宇宙を、信じられなかったんだ!!」
「知っているわ、ユウ!!」
「生きる為に尻まで売り、他人を食い物にしてきた俺には!!」
「解っていたわよ、ユウ・カジマ!!」
「それが気に入らないんだ、ニュータイプというものは!!」
「クルスト博士と同じ思想よ、それは!!」
「だが、俺には彼が否定出来ないんだ、マリオン!!」
ズゥ……
再び、ガスを始めとする暴力によって屠殺されたヒューマン・モルモット、彼らの怨念に自機を支配されるユウ。
「蒼い宇宙を、ソラを見る可能性を消し去られた人間、俺は彼らの気持ちが理解出来てしまうんだよ!!」
「シュレディンガーの獣に殺されるぞ、ユウ!!」
「それでも、それでもニムバス、俺は!!」
ドズル・ザビ、そしてシャア・アズナブルに続く死霊達の第三の依代とされたユウの放つ怒気、だかその再度に放たれた憎しみの光達は。
ゴゥウ!!
「サイコ・フィールドとやらの外膜が無くなっているぞ!!」
「そのまま攻撃を続けろ、キース!!」
「アムロさん、フィン・ファンネルが動いていますが!?」
「いいんだ!!」
アムロ・レイを始めとする、他の友軍達によってその光を、徐々に分離させられていく。
「ノイエ・ローテの残り核弾頭が、悪魔の手により動き始めた!!」
「フィン・ファンネルでどうにかなると!?」
「なるんだ、出来るんだよキース!!」
バゥ!!
全弾を射出されたフィン・ファンネル達の影で剣を合わせ続けるユウ・カジマとニムバス・シュターゼン。
「まずい、ニムバス!!」
「何だ、ユウ!?」
「悪魔の光が、増幅される!!」
「そのくらい、気骨で押さえい!!」
「違う、この場を取り巻く憎しみの光じゃない!!」
「だとしたら、何だと……」
ジャア、ア!!
その時、悪魔の光。
「ソーラ・レイだとぉ!?」
ユウ・カジマを支援しようとしたリョウ青年達の視線の先に、悪魔の右手(グローブ・ライト)の光が宇宙を敵意にと満ちさせた。