夕暁のユウ   作:早起き三文

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第65話 ダイナ・ソア・バトル(前編)

   

「あの辺りからが、最大の激戦区だった所らしいぜ、ユウ大佐」

 

 そう言いながら、リョウ青年の機体が指差す方向には数多くの宇宙艦、そしてモビルスーツの残骸が浮かんでいる。

 

「地獄であった所か」

 

「強者共の夢の後、と言いたい所とシャレこみてぇがね」

 

 その肩を竦めながら言い放つリョウの声をぼやりとその耳へ入れながら、ユウはその残骸の中でも一際大きい、巨大モビルアーマーと分類をされている漆黒のガンダムの亡骸へその視線を注ぎ、軽くその口から息を吐く。

 

「まだまだ続くさ、大佐どの」

 

「そんなんだよな、戦争は……」

 

「あのバケモノ達が近くを通るからな」

 

「バケモノ、ねえ……?」

 

 その人造アステロイド、広大なスペース・デブリの溜め池を横目にユウ・カジマ、アクシズ方面へ向かう増援隊の先頭へ立つGマリオンを載せたランプライトの機首が軽く跳ね上がり、進路を変え始める。

 

「おい、どこへ行く、中年」

 

「デブリ帯は何があるかわからん、危険だろう?」

 

「通信を聞いてなかったのか?」

 

「通信?」

 

 そのナイジェルの言葉を聞き、ユウは慌てて自分の機体に取り付けられた通信機の様子を確かめ始めた。

 

「俺の機体の通信機には、何の異常もないぞ?」

 

「疑似ニュータイプ波通信機の方だよ」

 

「何だよ、それは……」

 

 ユウの口へと出した疑問の声、その言葉に部隊にいる数人のメンバーから呆れたような声が上がったようだ。

 

「緊急警報専用のチャンネルの事だ、若いの」

 

「緊急警報、なんだそれは?」

 

「大規模兵器使用、それの合図を知らせる敵味方を問わない無差別へ対する通信だよ」

 

 ティターンズ所属の老兵の言葉に、ユウは何か、不思議な事を聞いたかのようにその首を軽く傾かせる。

 

「人道的な事でござって……」

 

「別にそうではなくてさ、お若い隊長さん」

 

 微かに笑ったかのような老兵が搭乗するFAZZ、それの右手指先が自機の後ろへピッタリとついてくるネオ・ジオン機へ指を振りつつ、デブリの中へその機体を潜めようとさせている。

 

「自軍の兵が巻き込まれて良いことはにもない」

 

「まあ、そうだな……?」

 

 その彼のしわがれた声に頷くユウをよそに、次々とデブリ帯の中へとその身を溶け込ませていく後続のモビルスーツ達の姿、それに対してユウは再びその首を先程と同じく傾けた。

 

「何が来るんだ?」

 

「引き裂く光と二匹の恐竜……」

 

「ハア?」

 

 ネオ・ジオン兵、まだ少年と思われる彼から放たれたその概念的な言葉に、ユウの首が傾げられるのはこれで三度めである。

 

「すまねぇな若いの、若隊長さん」

 

 先程に話したティターンズの老兵が、その少年が乗る機体をやや強く小突き、癖のある声でGマリオンへと笑ってみせた。

 

「ニュータイプらしいんだ、このチビは」

 

「だからか、言葉足らずな発言は解る」

 

「そう言ってくれると話が早い」

 

 どうせその内、この少年も「宇宙には心が満ちていてぇ」とでも言い出すのだろう。ユウは昔の、まさしく概念的な知り合いである蒼い髪をした少女の言葉をその頭へと浮かべ、微かにその痩けた頬がコクピット内で綻ばる。

 

「ソーラ・システムに加えてですね、連邦の大佐殿……」

 

「何か解った気がする、俺は」

 

 Gマリオンのコクピット内、ユウの座席であるリニアシートを揚げ支える支柱の側にはエゥーゴの女性パイロットから返してもらったプレゼント袋。

 

「恐竜、ダイナソナって言うのは多分の事……」

 

「恐らくは察している通りですよ、ユウ大佐殿」

 

 そのモルモット隊からの贈り物が入っているズダ袋からユウはムラサメ・コーヒーを取り出し、ヘルメットの下部へ、各種流動食品チューブを摂取する為の開閉孔へそのコーヒーのストローを強く押し込む。

 

「シャア・アズナブルとアムロ・レイ、だろう?」

 

「正解でありますよ、正解……」

 

 そのネオ・ジオン兵の言葉の先を取ってみせたユウは、愛飲のコーヒーを口へ含みながら、かつて戦ったシャア・アズナブル専用モビルアーマー「ノイエ・ローテ」の偉容をその頭へと浮かべ始める。

 

「シャア、ね……」

 

 結局に、一回もユウは勝つ事が出来なかった宇宙のモノノケ。

 

「アムロ・レイ、勝てるかな……?」

 

「私の上官もサブとして乗っていますゆえ、難しいかと……」

 

「不愉快だな、その答え」

 

「フン……」

 

 カタチ的には連邦へ下ったとも言える、複雑な心境であるその礼儀正しいネオ・ジオンのパイロットこそこのように言われては不愉快だ。それでも律儀に彼はデブリ内へユウの機体を手招きし、退避を促す。

 

「ん……?」

 

 Gマリオンの身体をデブリ帯へ向けると同時に、コーヒーのストローを口へと含んでいた生身のユウの視線が何か、太陽光に反射をして光っている物体をその目の端に捉えた。

 

「あれ、は……?」

 

 その残骸群、その中にあった比較的損害が軽度なサブ・フライト・システムをユウは目ざとく見つけだす。いや、目ざとくと言うよりも。

 

「ベルクート、クワトロと名乗っていた頃のシャアが百式を載っけていた奴だ」

 

 金色をした対ビームコーティングを施されたその運搬機兼、ファンネルを始めとした武装プラットフォームであるベルクート、若干旧式のネオ・ジオン製のサポート機が輝かせる派手派手しい金ピカ塗装、それは嫌でもその視界へと入るだろう。

 

「使えそう、かな?」

 

 何故に他の連中はこれを無視したのか疑問に、四度目の首傾げを行いながらユウはそのベルクートへ手を伸ばそうとする。

 

「何をやっているんで、大佐殿?」

 

「いやなに、リョウ・ルーツ君」

 

 そのベルクート、近寄ったユウが見た目には殆ど問題は無いように見えた。少し機能チェックでもしてみようと、彼は自身が乗るGマリオン下部のランプライト運搬機を軽く身動ぎさせた、が。

 

「早く隠れて、オジサン」

 

「おいまて、少年……」

 

 ニュータイプであるらしき少年の乗るバギ・ドーガは見かけによらず強い力でユウ機とその運搬機、そしてGマリオンがその手に引っ掛けたベルクートの計三機をデブリ帯へグイグイと引きずりこむ。

 

「そんなオモチャは早く離して、オジサン」

 

「何かお宝の匂いがするんだよ、クソガキ」

 

 二度めのオジサン発言に何か腹が立ったのか、コーヒーを飲み終えたユウの口から汚い言葉が少年へと投げ付けられる。

 

「ニュータイプはそんな事言わない、オジサン……」

 

「ニュータイプじゃないから恥ずかしくないもん……」

 

 ぶつぶつと子供じみた口調で抗弁しながらも、ユウの機体の手はベルクート、特殊運搬機から離さない。先程簡易に行った事ではあるが、Gマリオンの手のひらからのリンク接続、手持ち式のビームライフル等を使用するときに繋ぐ火器管制システムに良い反応したのだ。

 

「シャアの百式がエゥーゴ、連邦寄りの機体だったからかな?」

 

「グズグスするな、中年」

 

「お前までオヤジ言うか、ナイジェル!?」

 

 すでにユウ達以外のモビルスーツは全てデブリ等に隠れ、その姿を視認することが難しくなっている。それでも心配をしてユウを見に来てくれた少年とナイジェルに続き、金色運搬機ベルクートを引っ張りながらユウ機、Gマリオンもその身を隠そうとする。

 

「来る!!」

 

「ファ!?」

 

 突如、大声で叫んだ少年のせいで、ユウのGマリオンの頭部へ白い板切れ、恐らくは宇宙艦の装甲であったと思しきスペースデブリが直撃してしまう。

 

「カミング……!!」

 

「何がだ、射精の時かクソガキ?」

 

 その少年をやけに馬鹿にする嫌みな大人ユウにしても、彼が何を言わんとしているのかは理解できる。単にどこか昔の「マリオン・ウェルチ」に似ている彼、名前も知らないこのネオ・ジオンの少年が気に入らないだけだ。

 

 ガァアァ……

 

 大佐ユウ・カジマが率いている混成モビルスーツ隊の全ての通信機から、恐竜の咆哮が鳴り響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わかるか、アムロ!!」

 

 紅く塗装をされたファンネル群、ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルが専用機「ノイエ・ローテ」からのサイコミュ兵器が白い大型機へと突撃をかける。

 

「お前にサイコ・フレームの技術を流した理由が!!」

 

 ジァア!!

 

 続いてシャア機から放たれたビーム・カノン、それがアムロ・レイ専用重モビルアーマー「ν-GP(ニュー・ジーベガサス)」の長砲身ビーム砲の射撃により相殺され、同時にその紅い妖花へ向けてアムロからのインコム・サーベルが疾った。

 

「プロレスを成す為であろうに!!」

 

「私が対等な勝負をのぞんだとでも思ったか!?」

 

 ノイエ・ローテからのファンネルはν-GPのサブ・パイロット達、主に火器管制を担当する彼らが駆使するアンチ・ファンネルミサイルで迎撃をされ、それでも防ぎきれなかった紅いファンネルからのビームは白い機体のIフィールド、ビームバリアーにより拡散をされ、宙へと散る。

 

「ショー・プロレスは単純な勝敗を競うだけのものではないだろう、シャア!?」

 

「私がお前に渡したレーテ・ドーガからのサイコ・フレーム!!」

 

 インコム・サーベルは所詮は模造刀だ、そのコピーの原型となったシャア機からの有線アームクローから形成されたビームサーベルが即座にインコムを切り落とし、そのままアムロ・レイのモビルアーマーへと切っ先を突きつけた。

 

「爆導索チェーンを放て!!」

 

「了解!!」

 

 どうにかそのサーベル、自身の管制モビルスーツへと迫りくる刃を防ごうと機体を微動、微かに許される身動ぎをさせながら、アムロは巨体モビルアーマー上方ブロックにいる二人のサブ要員、彼らへ通信機を通じて怒鳴りつける。

 

 ジャアァ……!!

 

 爆導索、複数の紐付き爆薬がν-GPの巨大な体躯の脇から吐き出され、有線アームサーベル、およびノイエ・ローテへと直進をかけた。

 

「撃ち落とします、シャア!!」

 

「いや、私が対応する!!」

 

「ハッ……」

 

 ノイエ・ローテの方でもシャアはサブ・パイロットへと怒鳴り、その怒鳴り付けられた彼の返事も聞かずに紅い妖花の迎撃システムを発動させようと、赤い彗星と恐れられた旧ジオン時代からのエース・パイロットでもある彼シャア・アズナブルは自身の鉄の仮面の内側でその両目を薄く閉める。

 

 ドゥ、ゴゥア……

 

 爆導索群がノイエ・ローテの「ハリネズミ」の火線により次々と爆破されてこそいるが、さすがにその間はシャア機からの攻撃の手が緩んだ。

 

「やっこさんのアームクローが引っ込んだぜ!!」

 

「ハイ・メガビーム砲で狙う、キース!!」

 

 白いモビルアーマー、通称ニューベガサスのサブ・パイロット達が独断でシャアの機体へ攻撃をしかけようとするのをその耳へ入れながらも、アムロはその行動を止めない。

 

「爆導索が無効化され、メガビームもかわされると想定をすれば、次は……!!」

 

 戦いは二手三手の先を読む、以前クワトロ・バジーナと名乗っていた頃のシャアから聞いた言葉をその舌へ乗せながら、アムロは攻撃型ファンネル・ミサイルのコントロール権を自分へと移行させる為にコンソールへ強く指を押しつけさせる。

 

 カァ、キィン……

 

「シャアではない奴の射撃だと!?」

 

 そのシャアのハリネズミの間を縫い、高速の実弾射撃が乾いた音を立たせながらニューペガサスの装甲へと着弾し、その振動がその巨体の管制モビルスーツ、Gペガサスのコクピット内へと鋭く響く。軽微ではあるが損傷あり。

 

「相手のサブからの追撃、シャアのサポートを務める奴の腕も良い!!」

 

 頭の片隅でファンネルの始動制御を意識しながら、アムロの管制機からもビームライフルがノイエ・ローテへ向かい放たれる。最後の爆導索がその彼の視界の前で無意味な爆発、迎撃のレーザーにより起こされた。

 

「使わなかったのであろう、あのくれてやったサイコ・フレームはさ!!」

 

「その通りだ!!」

 

「何故だい!?」

 

「アンフェアなプロレスに俺が付き合う理由はない!!」

 

 ドオゥ!!

 

 メガ・ビーム、凄まじい威力を発揮する火器からの光をノイエ・ローテはその巨体に似合わぬ驚異的な機動性で直撃をかわし、紅い巨体の各部からスラスターの光が眩く軌跡を振り散らす。

 

「昔のノイエ・ジールとは大違いだよぉ!!」

 

 ニューペガサス。かつての大規模なジオン残党蜂起の時に使用された大型モビルアーマー型ガンダムタイプを雛形として設計された、この白く輝く巨大天馬にはそこまでの機動性なぞはない。その悲鳴にも似た声を上げる隣の席の同僚をよそに、もう片方のサブ操縦者が武装の残弾確認を行う。

 

「フィン・ファンネル、スタンバイをしとけ!!」

 

「俺達では使えないだろう!?」

 

「アムロ・レイなら使えるんだよ!!」

 

 ニューペガサスの体躯の上方に翼のように生えている特殊形状ファンネルの起動に必要な疑似ニュータイプ波発生器を調整をキースと呼ばれた男がブツブツと言いながら手を付け始めたのを横目に。

 

「アムロ、後ろに取りつかれた!!」

 

「頼む、持たせろ!!」

 

「了解!!」

 

 指示を出したサブパイロットが自機の背後についたノイエ・ローテへと後部機関砲で威嚇を試みようとする。

 

「アンフェアなプロレス、言ってくれるな、アムロ!!」

 

「サイコフレームとやらの最深部にあったウィルスに気が付いたんだよ、親父がさ!!」

 

 凄まじいGをその身体に感じながらもアムロは機体を強引に引っ張り、シャアの放つ有線サーベルを間一髪でかわす。ビーム刃の一閃が漆黒の宇宙空間を切り裂いた。

 

「良い親父さん、頭の良い父さんじゃないかい、アムロ・レイ!!」

 

「そうだとも!!」

 

 ギィン、ギャァ……!!

 

 急旋回をしたニューペガサス、その長砲身ビーム砲をサーベル・モードへと移行をし、ノイエ・ローテからの有線クローサーベル、二本の腕から同時に飛ばされたその若干に旧式、しかしそれゆえに洗練をされているサイコミュ格闘兵器をその長大なビーム刃で食い止める。

 

「父親、ダイクンとやらの名を利用する貴様には分かるまい!!」

 

「七つの七光り、宇宙を導く虹の色だよ!!」

 

 アムロとシャアのつばぜり合い、その上方でも二機のサブパイロット同士の射撃型インコムと対空砲による応酬火線が疾り始めた。

 

「お前は今度は何に大義を見出だした!?」

 

「よく私がわかったな、連邦の士官!!」

 

「何度お前と鍔迫り合いをした事か、数えきれない!!」

 

 グゥ……!!

 

 深く、アムロとシャアのビーム刃が折り畳むように重なり、軋む。

 

「親の名を借りる、それは建て前だろうに、シャア!!」

 

「私の建て前と本音が!!」

 

 パァア……!!

 サーベル同士のビーム干渉が限界に達し、二匹の巨獣がバウンドをし互いに弾かれる。

 

「七年も重力の井戸へ引き込もっていた、堕ちたニュータイプであるお前に解るものか、アムロ!!」

 

「ならば、建て前を言ってみろ!!」

 

「スペースノイドへ永遠の自由を!!」

 

「もう一つ位は言え!!」

 

「人類の更なる可能性を求めん!!」

 

 ジァアァ……!!

 

 ニューペガサスの翼、フィン・ファンネルがその身体から放れ、白い天馬の周囲の宙へ舞い始めた。

 

「二重底のさらに下、本音は何だ!!」

 

「知れた事よ、アムロ!!」

 

 アムロ機の特殊ファンネルに呼応をするように、シャアの機体背部からも大型のファンネルが展開を始める。

 

「ララァの姿が私には見えない!!」

 

「今のお前に見せたくないだけだ、シャア!!」

 

「違うね、アムロ!!」

 

 ガァ、ガァア!!

 

 大型ファンネル同士のビーム照射が相撃つ宙域の中、巨獣達の管制モビルスーツからのライフル、その巨大躯からは本当にちっぽけなビームの応酬がアムロとシャアから互いに放たれ、交差したそのビームが光の飛沫を散らす。

 

「ララァを私が感じられるならば、見える姿を持つ人類がニセモノなのだよ!!」

 

「まさか、まさかその為に地球の破壊、アクシズ群を落とすと!?」

 

「人類の!!」

 

 ジァフアァ……!!

 

 横凪ぎに振るわれたノイエ・ローテの有線ビーム刃がニューペガサスの長大ビーム砲を切り裂かんと猛光、紅い光を発しながら宇宙の闇を切り裂き、迫り来る。

 

「十分の十を抹殺しろとララァに言われればこうもなろう!!」

 

「十文の九プラス、コンマ・レヴェルの隙、その位はお前にあると思っていたが!!」

 

 その大振りの斬撃、それにアムロはまさしく微細な隙を見出しこそしたが。

 

「イェー!!」

 

「一分の隙も与えるつもりがないか!!」

 

 シャアの奇声と共にステルス・ファンネルの群れがモニターを塞ぐ事にアムロはコクピット内で歯噛みをしつつも、連邦派の軍内で最大のニュータイプ・レベルを持つと言われている彼は無理なサイコミュ始動にその頭、脳髄を痛めさせながら複数の棒状ファンネルへ回転を与えさせ始める。

 

 ギィ、キァヤ……!!

 

 迫る有線ビームサーベルの基部へ特殊形状ファンネル「フィン・ファンネル」を激突させ、間の一髪で軌道をずらしながら、アムロはサブパイロットへ再度大ビーム砲への充填の指示を叫び散らす。

 

「そして、最後に私とララァだけが宇宙にいれば良い!!」

 

「聴いただろう!?」

 

 ニューペガサスの黒髪をしたサブパイロットが至近からのファンネルミサイルをノイエ・ローテへ放ちながら、顔見知りの相手であるネオ・ジオンパイロットへ強く、激しく言い放つ。

 

「これがこのシャアとやら、ネオ・ジオン総帥の本性だ!!」

 

「解っているさ!!」

 

 ドゥグァ……!!

 

 ファンネルミサイル群へ大規模爆発榴弾、ノイエ・ローテの切り札の一つを放ち、まとめて撃ち落としたシャア指揮下の補佐パイロット。その爆発から生じたサイコ・フィールド余波がモンスター・マシン達を強く振動させた。

 

「それでも、今の私には未だ大義がある!!」

 

「七年前から何も学ばない、分からず屋め!!」

 

「貴様に話す舌など!!」

 

 ザァ……!!

 

 大型ファンネル同士の隙をつき、ノイエ・ローテからの再度のステルス・ファンネルがニューペガサスの両肩、多目的武装コンテナの内一つを大きく破損させ、周囲へ爆発物の閃光をを輝かせた。

 

「持たぬと何度言わせるか!!」

 

「そうとも、連邦のパイロット共!!」

 

 ノイエ・ローテのファンネル群がニューペガサスのフィンを押し始め、数機のシャアが使役するファンネルが天馬のIフィールドの内側、バリアーの有効張膜内へと忍び込む。

 

「人のサイコ・フレームのプレゼントを無視する男達になんぞな!!」

 

「そのフレームとやらを使用していたら!!」

 

 カァ……

 

 その二大恐竜達の私闘から逃げ遅れたのであろう、彼等が進航したその宙域へいたモビルスーツの一部隊がガラクタのように潰され、惨殺される。

 

「俺をストップさせた後にいたぶり殺すつもりだったのだろう、シャア!?」

 

「私のララァの心を一部なりとも奪った男アムロ・レイ、憎むのが道理であろうに!!」

 

「ララァは人間だ、誰の所有物でもない!!」

 

 至近からの大型ファンネルからのビーム照射、直接管制機を狙ったその必殺の攻撃に反射的にその目をつむりながらもアムロは。

 

「フィン・バリア展開!!」

 

「ホウ!?」

 

 急遽呼び寄せたフィン・ファンネルがノイエ・ローテのファンネルの前でその形状「くの字」へと変化させ、その各々から簡易ビームバリアーを形成させる。

 

「良いサイコミュを持っているではないか、アムロ!!」

 

「チィ……!!」

 

 同時に降り注ぐノイエ・ローテ本体からのビームをリフレクタービット、連邦のムラサメ研究所が作製した超重サイコミュ・ガンダムからコピーしたそれを咄嗟に発動させてくれた補助員、パイロット達へ感謝をしながらも、アムロは無理なサイコミュ制御を行った事でその息が荒い。

 

「これが最新型のサイコミュ、サイコフレームとやらの力か……」

 

 機体性能で明らかに劣っているのだ、妖花ノイエ・ローテに比べてこの宇宙を駆ける天馬、ν-GPというガンダム・モビルアーマーは。


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