夕暁のユウ   作:早起き三文

36 / 100
第36話 宇宙を駆ける(前編)

 スペースコロニー「グリプスⅡ」の付近の宙域にエゥーゴとティターンズの大艦隊が対峙する。

 

「こりゃあ……」

 

 ティターンズのモビルスーツ隊の最前列に配置されているジェリドのガブスレイから呆れたような声が響く。

 

「エゥーゴに兵無しってのは、大嘘だな……」

 

「バスク司令の悪口はまずいわよ、ジェリド」

 

 隣のガブスレイに乗っているマウアーからそう注意が飛んだ。

 

「辞世の句でも書いとこうかな? マウアー?」

 

「情けない……」 

 

 ため息をつきながらも、エゥーゴの大部隊を見つめるマウアーの顔も緊張で強ばっている。

 

「まあ、気持ちは分かるけどね」

 

 そう言いながらマウアーは雲霞のごとく広がっているエゥーゴの量産機の姿をじっと見つめる。

 

「カラバの増援もいるみたいね」

 

「だろうな……」

 

 その時、ジェリド機のコクピット内でコンソールの片隅のランプが点滅した。

 

「データが届いたよ、マウアー」

 

 情報収集用インコムを放っていた複数の偵察用バーザムからエゥーゴの戦力データが送られる。

 

「固有名詞を並べられても、解らないっての……」

 

 ジェリドがサブモニターへ羅列させられるエゥーゴ機の名前を見やりながら、うんざりした声を出す。

 

「リック・ディアスⅡ、ネモZ型、マスプロZ、ZⅡ、Zプラス……」

 

 マウアーが少しからかいの色を込めて、エゥーゴのモビルスーツの名前を読み上げる。

 

「Zの般若心境とか言う名前のお経か? マウアー?」

 

「Z念仏よりはましでしょう?」

 

「縁起でもねぇ……」

 

 そうジェリドは苦笑しながらも、敵の編隊の中にZガンダムの姿を見てニヤリと笑う。

 

「カミーユがいるな……」

 

「見ただけでわかるの? ジェリド?」

 

「鼻が利いてきたかな?」

 

 そう言いながら、ジェリドはガブスレイの機体の最終調整を行おうとする。

 

「バスク司令お気に入りのソーラ・システムⅢの展開は間に合わないようね」

 

「んだな……」

 

 マウアーへ上の空で返事をしながら、ジェリドは機体の調整へ没頭している。そのジェリド機の隣にガンダムMK-Ⅲの部隊が配置についた。

 

 

 

 

 エゥーゴとティターンズの猛烈な艦砲射撃の応酬がグリプス宙域の地ならしをしたあとに、両軍のモビルスーツの波が潮騒とともにその漆黒の空間へ押し寄せる。

「いたな!! カミーユ!!」

 

 打撃用可変重モビルアーマー「バウンド・ドッグ」にまたがっているマラサイ・フェダーインの部隊がエゥーゴの部隊と交戦状態に入ったのを目の端に捉えながら、モビルアーマー形態へ可変しているジェリドのガブスレイがZガンダムへ突撃する。

 

「ジェリド・メサ!!」

 

 大型のビーム砲を構えたZガンダムがジェリド機の接近に気がつき、迎え撃とうとする。

 

「今日こそお前のZを沈める!!」

 

 その言葉と共にガブスレイから重ビームランチャー「フェダーイン」の光がカミーユ機へ押し寄せる。

 

「何の為に俺を!?」

 

 ジェリドのビーム射撃をかわしながら、カミーユ機からも高出力のビームが疾った。

 

「お前に何十回俺は煮え湯を飲まされたものか!! 分かるか!?」

 

 昆虫のような形態のガブスレイはそのビームをひらりと回避する。そのままカミーユ機へ特攻でもするように機体を迫らせる。

 

「それだけで俺を!!」

 

「お前は俺の乗り越えなくてはならない壁なんだよ!! カミーユ!!」

 

 カミーユが乗るZのメガランチャーからビームバヨネットが形成され、ガブスレイを切り伏せようとビームの刃が大振りに構えられた。

 

「させるか!!」

 

 その刃が迫る直前にジェリドは瞬時にガブスレイを可変させ、カミーユ機と同様にフェダーインライフルからバヨネットサーベルを形成する。

 

「その壁とやらだけがお前の戦いか!?」

 

 二機のビームランチャーのサーベルが凄まじい閃光を放ちながら重なりあう。

 

「悪いかよ!?」

 

「目的の無い戦いなど!!」

 

「目的はある!!」

 

 ジェリドは一端Zから身を離し、肩のビーム砲を放った。そのビームはZの耐ビームコートに弾かれる。そのビーム攻撃の反動を利用してカミーユはZを一回転させつつ、懐から小型の銃器を取り出しその手に掴む。

 

「ティターンズでのしあがるという欲からの戦いか!? ジェリド!?」

 

「言い方に気を付けろよ!! カミーユ!!」

 

 カミーユ機の左手に握られたサブ・ビームマシンガンの連射から目を離さずに、ジェリドは怒鳴る。

 

「失言して俺に殴られたお前が言うなよ!! ジェリド!!」

 

「どうやってもカミーユは女の名前だろう!? ああ!?」

 

「そんな言葉でもう腹を立てるもんか!!」

 

「流石にもうそのヘッドには血はシットアップ無しかだな!! カミーユ小僧!!」

 

 サブマシンガンを撃ち尽くしたカミーユはその小型銃を投げ捨て、ランチャーのサーベルをガブスレイへ突き立てようとする。

 

「俺がモビルスーツを駆る理由!! それは!!」

 

 ジェリド機のバイオセンサーが音を立ててガブスレイの性能を上げ始めた。

 

「信念だ!! 生きる目的だ!!」

 

 ジェリドは片手でフェダーインを保持しつつ、サーベルを取り出してそのZの刺突をさばく。

 

「お前にはあるか!? カミーユ!?」

 

「ある!!」

 

 メガランチャーを大振りで振り回すカミーユ。その隙を突こうとするジェリド機をバルカンで牽制する。微かにガブスレイの装甲をバルカンがかすった。

 

「アーガマの皆の為に!!」

 

 その言葉とともにZが謎の光を放ち始めた。カミーユがビームランチャーの銃口をガブスレイの正の面へ突きつける。

 

「俺も同じだ!!」

 

 ジェリド機からもフェダーインの照準がカミーユのZへ向けられた。

 

「マウアー達の為に!!」

 

 その二機のバイオセンサー搭載機の周囲の宙域に紅い光が煌めき始める。その輝きの中、ビームランチャーの波動が二人の戦士達の機体から噴出した。

 

 

 

 

 

「ヤザン隊長!!」

 

「分かっている!! アドル!!」

 

 ヤザンはモビルスーツ運搬機を駆りながら攻めてくる量産型Zの部隊と交戦しながら、自分の部隊へ配属された新人パイロットへ叫び返す。

 

「新型のガンダムタイプか!?」

 

 量産型Zの部隊の支援に駆けつけたと思しき二機のモビルスーツにヤザンは目を凝らす。部分部分に赤い塗装が施されたZガンダムの可変型量産タイプ、その上にやや小型のガンダムが乗っているのを見て、ヤザンは眉間に皺をよせる。

 

「腕に覚えがありそうな奴の近づき方だな……」

 

 コクピット内でヤザンは軽く呻く。

 

「あれはアムロ・レイの機体かもしれません!!」

 

「知っているのか!? ラムサス!?」

 

「カラバのアムロ・レイが赤いZに乗っていると!!」

 

「そいつぁ面白え!!」

 

 大型のサブ・フライト・システムに乗せてあるその重厚な機体、ガンダムMK-Ⅴを駆るヤザンは背後に付き従う隊へ号令をかける。

 

「行くぞ!! ラムサス!! ダンケル!!」

 

「了解!!」

 

「アドル!!」

 

 ヤザンは新米パイロットの機体へ顔を向けた。

 

「死ぬなよ!!」

 

「りょ、了解!!」

 

 ガンダムMK-Ⅴを先頭に可変型モビルスーツ「ハンブラビ」の編隊が続く。

 

「どっちがアムロ・レイだ!?」

 

「寝ぼけた事を言うな!! ダンケル!!」

 

 ヤザンはそう叫びながら、ガンダムMK-Ⅴからミサイルを斉射する。

 

 ギュアァ……!!

 

 Zガンダムの量産機、赤い塗装の空間戦闘用Zプラスがミサイルを避けようと急旋回をかける。

 

「撃ち落とせい!!」

 

 そのヤザンのかけ声と共にハンブラビ隊からビームの集中砲火が新型のガンダムを乗せたZプラスへ襲いかかる。

 

「流石に速い!!」

 

 ビームの斉射を猛スピードで避けたZプラスをダンケルが憎々しげに睨み付ける。

 

「どっちがアムロ・レイだ!?」

 

「おめぇまで寝ぼけたか!? アドル!!」

 

「し、しかし隊長!!」

 

「決まっている!!」

 

 ヤザンのガンダムがインコム・ユニットをそのカラバ機へ投げつける。

 

 ビァア……!!

 

 上に乗っているガンダムの手からビームが放たれる。そのビーム砲はインコムの内一基を破壊する。

 

「おらよぉ!!」

 

 ヤザンは自らの機体をそのカラバ機達へ突進させる。

 

「大胆な!?」

 

 無謀とも言えるヤザンの特攻にその二機が離れた。

 

「撃てい!!」

 

 ハンブラビ隊から再度ビーム砲が放射された。

 

「ちぃ!!」

 

 小柄なガンダムはそのビームを全て回避できたが、Zプラスの方は主翼部分へビームがかする。その機体が僅かに失速する。

 

「こういう事だよ!!」

 

 そう叫びながらヤザンが小型のガンダムにビームライフルを撃ち放った。

 

「強い方がアムロ・レイとやらだ!!」

 

「良い勘だな!! ティターンズ!!」

 

 その小型機からアムロ・レイの声が響く。

 

「諸手で出てくるということは!!」

 

 ヤザンはそのガンダムの両手に何も火器が無いことを目の端で捉えた。

 

「全て武器は内蔵式だな!! ガンダム!!」

 

 そのヤザンのガンダムへアムロ機の両手の腕部からビームが飛んだ。

 

「良い狙いだ!! チビのガンダム!!」

 

 ヤザン機の肩へビームがかする。その損傷を気にした様子もなく、ヤザン機のライフルからもビームが放たれる。

 

「Gペガサスをなめるな!!」

 

 アムロの乗る小型ガンダムは背部ブースターを噴かせてヤザン機へ急接近を試みる。

 

 ギァ!!

 

 ヤザンとアムロが乗る二機のガンダム達がお互いのビームサーベルを交差させた。

 

「小さいナリの癖に何て出力だ!!」

 

 Gペガサスというらしいアムロの乗機の腕部下部から成形されているビームのブレードにヤザン機のサーベルが押される。

 

「それぇい!!」

 

 ヤザンは自機のガンダムを支えているサブ・フライト・システム「タクテカルウェイバー」をアムロ機へ向けるように機体を上へ回転させる。

 

「ショックワイヤー!?」

 

 そのモビルスーツ運搬機の下部から放射された複数のワイヤー状の兵器をアムロはとっさにかわす。一状のワイヤーのみかわせずGペガサスの脚部へ絡みつく。

 

 バッバァ……!!

 

 ワイヤーから電流が流される。

 

「電磁兵器か!!」

 

 アムロは腕に固定されているビームサーベル・ユニットからビーム刃を形成し、そのワイヤーを切り払う。

 

「そんな武器を使うってことは!!」

 

 アムロのGペガサスがその脚からビームの刃を形成して、ヤザンのガンダムを蹴りつける。

 

「お前はエースだな!?」

 

「武器だけでわかるのかよ!! ああん!?」

 

「この手の電気的なバリバリ音を鳴らす武器を使うパイロットは!!」

 

 頭部バルカンがヤザンを牽制しながら、アムロはひたすらヤザン機へ攻撃を仕掛けていく。

 

「強いと相場が決まっている!!」

 

「誰が決めた!?」

 

「俺の経験が決めている!!」

 

「あてになるもんかよ!!」

 

「ならお前は弱いのか!?」

 

「強えに決まっているだろ!!」

 

「そういう道理だよ!!」

 

「そうかもな!!」

 

 そのアムロの言葉に対して高笑いをするヤザンは肩のウェポンラックから海ヘビと呼ばれるショックワイヤー兵器を取り出す。

 

「そら!!」

 

 シュシィ!!

 

 海ヘビがGペガサスの胴体に絡みつく。

 

「落ちなぁ!!」

 

「甘い!! ティターンズ!!」

 

「何ィ!!」

 

 アムロ機の手のひらが光を放ち、その海ヘビのワイヤーを掴む。

 

 ジュァ!!

 

 ワイヤーが蒸発するような音を立てて、Gペガサスの手のひらの中で焼き切られる。

 

「手のひらに何か仕込んでおるな!!」

 

「そうとも!!」

 

 アムロはそのまま手のひらをヤザン機へ向け、拡散ビームを放出した。

 

「おっとぅ!!」

 

 またもヤザンは運搬機タクテカルウェイバーをひっくり返してそのビームを受け止める。

 

「頑丈な盾だな!!」

 

「本当に強いな!! アムロ・レイ!!」

 

 そう叫びながらヤザンは運搬機のスラスターを噴かし、いったんアムロ機から距離を取ろうと機体を後退させた。

 

 ドゥドゥ……!! ドゥウ……!!

 

「モビルスーツの魚群かい!?」

 

 ヤザンとアムロの間をZプラスとメタスの改良タイプの群れが通りすがった。それを追ってティターンズのバウンド・ドッグなどの高機動の機体がその宙域を覆い隠した。

 

「どこだ!? アムロ・レイ!?」

 

 そのモビルスーツの大波でアムロ機を見失ったヤザンはコクピット内で自身の目と計器類を駆使して、宙域の中にそのアムロのガンダムを探り回そうとする。

 

「いたか!!」

 

 ヤザンは自機の上方から接近してくるアムロのGペガサスをその目で確認した。

 

「試しにつるんで攻めてみるか!?」

 

 Gペガサスの手から放たれた拡散ビームを機体下部の「盾」で防いだヤザンはやや離れた場所で戦闘を行っているハンブラビ隊を呼び寄せようと通信機へ怒鳴る。

 

「聴こえるか!?」

 

「もちろんです!! 隊長!!」

 

 ヤザンの片耳へダンケルの明るい声が響く。

 

「オトリ作戦ツーをやってみるぞ!!」

 

「了解!!」

 

 ダンケル、ラムサス、そしてアドルの三名から力強い返答がヤザン機へ返ってきた。

 

 ギィーァ!!

 

 ヤザン揮下のハンブラビ隊がアムロ機へ急速接近をする。

 

「そんなイカだか何だかで!!」

 

 ハンブラビ隊がアムロに最接近をする。だが、ハンブラビの部隊はそのまま何もせずにフライ・パスをする。

 

「何のつもりだ?」

 

 そう言いながらも、アムロは機体を機敏に動かし、背後へビームブレードを振るった。

 

 ズギィア……!!

 

「と、でも言うと思ったか!! ティターンズ!!」

 

「ハッキリ言ってるじゃねえか!! アムロ・レイさんよ!?」

 

 アムロ機の背後から襲いかかろうとしたヤザンのガンダムMK-ⅤのサーベルがGペガサスのブレードに防がれた。

 

「お前の空耳だ!! ティターンズのエース!!」

 

「ヤザン・そしてゲーブルと言う名前があるさ!!」

 

「なら、空耳の空耳と気のせいをプラスしてお前の耳に成した事だ!! ヤザンを足してゲーブル!!」

 

「そうかい!! アムロとそのレイ!!」

 

 ヤザン機のサーベルを無理に打ち払ったアムロは瞬間移動のようにヤザンから距離をとってGペガサスの腰からグレネードを射出する。

 

「盾があるって言ってんだろ!!」

 

 笑いながらヤザンはウェイバーを旋回させる。

 

 ズジャ……!!

 

「なんとぉ!! トリモチか!!」

 

 そのトリモチで武装モビルスーツ運搬機タクテカルウェイバーの兵装用センサーが塞がれる。

 

「楽しいぜぇ!! 凄い、凄いよアムロ・レイ!!」

 

 ヤザンは笑い、狂喜しながら機体をアムロ機へ突撃させる。

 

「バーサーカーなタイプのパイロットめ!!」

 

 そのヤザン機をアムロは思いっきり蹴り上げてその軌道を変えた。

 

「ケンカ殺法すらお手の物か!!」

 

 背後をアムロに取られながらも、ヤザンは残り一基のインコムを自機の背後へ発射させる。わずかに不意をつかれたアムロ機へインコムのビームが命中した。

 

「ニュータイプでもそうそう出来ない事を!!」

 

 アムロは小型機の燃料の残りを計算しながら、ヤザン機へ甲高い音のエンジン音を響かせながらGペガサスを接近させようとする。

 

「ダテにニュータイプなどとおだてられてはいないさ!!」

 

 二機のガンダムは再び向かい合い格闘戦を始める。その周囲にはティターンズとエゥーゴ・カラバの可変機達が激しい戦闘を繰り広げていた。

 

 

 

 

「雑魚がピラニアみたいに!!」

 

 運搬機「セッター」に乗ったリック・ディアスⅡと同じく運搬機「ゲター」に乗ったへヴィバーザムとの交戦がZガンダムとガブスレイに割り込むように始まったことで、ジェリドはカミーユ機を見失った。

 

 ギュァーン!!

 

「カミーユ!?」

 

 背後から放たれたビームを勘に頼って回避したジェリドはその機体を観察する。

 

「Zじゃない!!」

 

 ジェリドは周囲の宙域に細心の注意を払いながら、そのウェイブライダー形態の可変機を睨み付ける。

 

「Zモドキだ!!」

 

 そのZタイプの機体はウェイブライダー形態のまま急旋回をし、再びジェリド機へビームを放つ。

 

「出力だけならカミーユのZよりも上か!?」

 

 かろうじて避けた、強く輝くビームの帯に目をやりながらジェリドは軽く唇を噛む。

 

「ZのⅡですからね!!」

 

 女の声がそのZタイプの機体から響いた。

 

「ジェリドの坊や!! 落とさせてもらう!!」

 

「俺を坊やと呼ぶ!?」 

 

 そう言いながら、一撃離脱を繰り返すそのZタイプにジェリドは胴体の拡散ビームを目眩ましを兼ねて発射する。

 

「なかなかの戦い巧者に!!」

 

 ガブスレイの拡散砲はZⅡという名前らしいその機体のモニターへ損害を与えたように見える。パイロットの女がコクピット内で軽く舌打ちをした。

 

「そうか!!」

 

 叫びながらジェリドはガブスレイを高機動形態へ可変させた。

 

「サマナの先輩のお仲間である女だったな!!」

 

 叫びながらジェリドはそのZⅡを追尾する。

 

「確か名前はブルー!!」

 

「ダカールでは生意気に彼女までつれていたわね!! 昔のガンダムの坊や!!」

 

「サマナやユウへはちゃんと詫びはしといてやる!!」

 

 ジェリドはガブスレイのスラスターにかなりの負荷をかけながら急激な旋回をする。ジェリドの身体にかなりのG(慣性による圧力)がかかった。

 

「安心して落ちろ!!」

 

「昔に世話をした女を撃てて!?」

 

 モニターを復旧させようとしているブルー機の隙をつき、その機体の真後ろにつくことにジェリドは成功する。

 

「恩を仇で返すってのも悪くはねえ!!」

 

 ガブスレイのフェダーインがZⅡをロックオン。ジェリドが発射スイッチを押そうとした寸前!!

 

 ブォフ!!

 

 宙域を強烈な光を放ちながら一条の高圧ビームが突き抜けた。

 

「今までのジェリドではない!?」

 

 必殺の念を込めて放った最大出力のビームランチャーをジェリドにかわされたカミーユはその驚きを顔の面に出す。

 

「寿命も玉も神経も縮まったかもな!! 俺は縮まったんだよ!! カァ! ミーユゥー!!」

 

 間一髪で背後から放たれたカミーユ機のハイパー・メガランチャーの直撃をかわしたジェリドの背中からブワッと汗が吹き出す。ガブスレイの肩部ビーム砲が二基ともその高出力ビームの余波で吹き飛んだ。

 

「ジェリド!!」

 

 モビルアーマー形態のジェリド機がその機体の前方へ相当な損傷を受けた事を知ったマウアーが自分のガブスレイをジェリド機の支援へ向かわせる。

 

「そのZⅡは私に任せて!!」

 

 そう叫びながらマウアー機はブルーのZⅡへ向けてビームガンを乱射する。

 

「手強いぞそいつは!! マウアー!!」

 

「カミーユの方が手強いでしょうに!!」

 

「違いない!!」

 

 叫びながらジェリドはガブスレイをカミーユ機の後ろへ突かせようとあがく。

 

「捕まるかよ!! ジェィリドォ!!」

 

 カミーユの凄まじい気合いの声がモビルスーツの花火が舞う宇宙へ疾る。四機の可変機がその宙域に入り乱れる。

 

 

 

 グリプスの宙域の周辺にはおびただしい数のモビルスーツの群れが舞い、動きまわり、そして爆散していった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。