夕暁のユウ   作:早起き三文

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第3話 新設モルモット隊

廃坑の近くの荒野を夕陽が強く照す。

その紅い輝きの中を「新設モルモット隊」とジオンの残党軍が戦闘を繰り広げていた。

 

「頭が痛え……」

 

フィリップが唸りながらも重モビルスーツ「ドム」のバズーカをかわす。

 

「確かに良い機体ではあるけどよ……」

 

「ろくな物じゃない……」

 

フィリップにサマナが答える。

サマナも頭痛がするようだ。

 

「ディスティニーに慣れていて?」

 

「また嫌味かよ」

 

「そんなんじゃあないわ」

 

ユウにブルーが慌てて弁解する。

 

「サイコ・ジムの副作用にあなたは苦しめられていないから……」

 

「ブルーの毒のせいだよ……」

 

「やはり、慣れね」

 

「だろうな……」

 

ユウのサイコ・ジムは次々とジオンの残党を片付けていく。

 

「ブルーディスティニーと同じ位だ」

 

ユウはサイコ・ジムの性能をそう判断した。

 

「俺たちも結局あれに乗っているようなもんか……」

 

「だろうな」

 

「だがなぁ……」

 

愚痴りながらもフィリップの機体は従来のジムでは考えられない機動性でゲルググのライフルをかわす。

 

「この頭痛はどうにかなんねぇか……?」

 

「ピルの服用時間です」

 

オペレーターのミーリから通信が入る。

フィリップ達が胸ポケットの薬を取り出す。

 

「俺はもう少し様子を見る」

 

ユウは遠距離から正確に射撃をしてくる機体に目を向けた。

 

「手強いのがいる」

 

「二機で掛かりましょう」

 

ユウとブルーがホバーの出力を上げて敵機に接近する。

 

ガァーン……!!

 

「高出力だな……!!」

 

光条を見ながらユウは呟く。

 

「整備不良のスナイパーライフルではこんなもんかな?」

 

敵機からの呟きと同時に再びビームが飛ぶ。

 

「くぅ!!」

 

ブルーのサイコ・ジムが破損した。

 

「おっと!!」

 

敵機が驚いたような声を上げる。

その狙撃用のライフルから煙が上がる。

 

「推参!!」

 

ホバーの高速移動でその敵機に肉薄するユウ。

 

ジュガ!!

 

ユウ機と敵機のビームサーベルが交差する。

 

「おや!?」

 

ゲルググの改良型らしき機体から驚いた声がする。

 

「一年前に仕留め損なったジムの奴か?」

 

「へぇ!!」

 

ユウ機からバルカンが走る。

 

「確かオグスとか言う!!」

 

「光栄だね!!」

 

バルカンはその機体を貫通しない。

逆に敵機からミサイルが飛んだ。

 

「ちぃ!!」

 

ホバースラスターを噴かし、そのミサイルの直撃を防ぐ。近接信管でミサイルが爆発する。

 

「ドムから盗んだかな!?」

 

ミサイルにより若干の破損したユウの機体に驚異的な瞬発力でサーベルを突き立てる。

 

「ドムもどきのジムが!!」

 

「サイコ・ジムだよ!!」

 

「サイコミュ付きか!?」

 

オグスのサーベルの出力の高さにユウ機のサーベルが押され始める。

 

「ジオンからモビルスーツ技術を盗んだ連邦が!!」

 

接近戦ではオグスの機体に分があるようだ。

 

「何をお造るつもりなのかな!?」

 

「旧式に毛が生えた機体のくせに!!」

 

「ガルバルディだよ!!」

 

敵機からのキックがサイコ・ジムを蹴り上げる。

 

ガガッ!!

 

ジオン残党の部隊がオグスに加勢する。ザクのバズーカが体勢を崩したユウに直撃した。

 

「頭痛が……!!」

 

ユウはピルを噛み砕きながらも、ジムライフルを連射する。

 

「ここは踏ん張る所ではないかな?」

 

オグスはそう言いながらもユウ機にビームライフルを放つ。ユウはジャンプしてその一撃をかわした。

 

「ユウ!!」

 

追い付いたブルーからライフルがオグス機に襲う。

 

バッバッ……!!

 

「まずいな」

 

そう呟くオグス機と増援のジオン機は連携して二機のサイコ・ジムに攻撃する。

 

「重いな!! この機体は!!」

 

ユウは機体重量を取っているサイコミュシステムとやらに悪態をつく。

 

「まずくもないか」

 

そうオグスは苦笑しながら残党軍の増援が到着したのを見る。ガルバルディのライフルを放ち続ける。

 

「どこにそんな兵が?」

 

ブルー機が頭痛に堪えながらも、ザクを切り落とす。

 

「モルモット隊」

 

ミーリからの涼やかな声がコクピット内に響く。

 

「撤退の命令です」

 

「だろうな……」

 

機体の不調を起こし始めたフィリップが苦々しげに呟いた。

 

「上の連中はこの新型とやらを過信しすぎだ」

 

「残党の数も多い」

 

フィリップにサマナが相槌を打つ。

 

「大規模な支援を受けているわ、この残党軍は」

 

ブルー機のホバー推進器の出力が上がる。

 

「悪い物ではないみたいだがね、連邦のそのジムは」

 

オグスはしんがりを努めるユウからの射撃をかわしながら顔をしかめる。

 

「ユウ君」

 

「また、お前に塩を送られるのかよ……」

 

ユウは苦笑しながら最後のライフル弾を放った。

 

「戦争は続くな」

 

「ああ……」

 

落ちてきた夕陽を見ながら、二人の機体は離れていった。

 

 

 

 

「さすがにやるな……」

 

松葉杖をついた男が遠くで繰り広げられている新設モルモット隊とジオン残党軍との戦いを眺めていた。

 

「EXAMに認められた人間だからな……」

 

男の傍らでコンピュータのボードを叩いているアルフが皮肉げに言う。

 

「だが、奴はニュータイプではない」

 

「ああ……」

 

アルフが不満げに言葉を返す。

 

「ニュータイプとなるのは私だよ」

 

「だろうな」

 

アルフは男の隣へやって来て、タバコを吸う。

 

「強化人間の訓練にここまで適応できているのはお前だけだ」

 

「信念かな……」

 

「執念だろう?」

 

「フフ……」

 

男は少し自嘲げに笑った。


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