夕暁のユウ   作:早起き三文

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第2話 蒼の女

「ブルー?」

 

アルフはそう言いながら、一人の女性バイロットを紹介する。

 

「初めまして、ユウ・カジマ」

 

女は自分を「ブルー」と名乗りながらユウと握手をする。

 

「本名ではないでしょうに……」

 

「規則なもので……」

 

女はクスクスと笑う。

 

「彼女はな」

 

アルフは手元の資料をユウに手渡す。

 

「本来のブルーディスティニーのパイロットだった」

 

「ふん……」

 

フィリップがつまんなそうに鼻を鳴らす。

 

「気に入らねぇな……」

 

「フィリップさん……」

 

サマナがフィリップを宥めながら、アルフに少し固い口調で訊ねる。

 

「彼女の方が適正はあったが」

 

アルフは眼鏡を拭きながら話す。

 

「ブルーディスティニーが拒絶した」

 

「……」

 

その言葉にユウは少し考え込む。

 

「良いのですか?」

 

「何がだよ?」

 

「あのブルーディスティニーの名を言って」

 

「ああ……」

 

そう言うサマナにアルフは自分の胸に指してあるレコーダーを見せる。

 

「あとで提出すれば問題ない」

 

「それ以外は問題か」

 

「流石にユウだな」

 

アルフは皮肉げな笑みを浮かべる。

 

「ニュータイプに近づけた人間だ」

 

「ブルーはニュータイプを作る機体ではなかった」

 

「単なる殺戮機械」

 

「そうだ」

 

アルフにユウは頷いてみせる。

 

「恐ろしいこと」

 

ブルーと言った女が口に手を当てて笑う。

 

「あなた達が身代わりになってよかった」

 

「嫌な女だ……」

 

「立場が逆であったら?」

 

「そりゃあな……」

 

女にフィリップが苦笑した。

 

「なあ、アルフ」

 

ユウが少し姿勢を正してアルフに訊ねる。

 

「もしかして、彼女」

 

ユウは彼女のそのコードネームの通りの色をした髪を見て言う。

 

「ニュータイプか?」

 

「フフ…」

 

アルフは手を叩いて喜ぶ。

 

「ブルーの毒が残っているかもな」

 

「かもしれん」

 

「マリオンを連想したか?」

 

「似ている」

 

「小娘と女の違いはあるぞ」

 

ユウは苦笑いする。

 

「アルフから聞いたわ」

 

女は軽く笑いながら話す。

 

「女の子の膝の上に乗って戦ったんですってね……」

 

「無理矢理乗って、乗らされて……」

 

「いやらしい男……!!」

 

青い色をした髪の女は再び笑う。

 

「喧嘩を売りに?」

 

「違うわよ」

 

サマナのむっとした顔にブルーは真顔になる。

 

「新型機のテスト」

 

女は一枚の書類を取り出す。

 

「それが、私たちの仕事」

 

「テストパイロットに格下げか」

 

「お嫌?」

 

「別に……」

 

フィリップはおどけて肩をすくめる。

 

「給料が出れば別に良い」

 

「むしろ上がるぞ」

 

アルフが書類のある一面を指差す。

 

「ここにサインしろ」

 

「内容は見るまでもないな……」

 

ユウはそう言いながらも書類に目を通す。

 

「やっぱりだ」

 

「守秘義務?」

 

「に、決まっている」

 

ユウはフィリップ達にも書類を見せる。

 

「クルストの思想が受け継がれる」

 

「ブルーディスティニーを作った者の意思がね……」

 

「地球連邦軍でニュータイプを越えるオールドタイプを誕生させようとしている」

 

「オールドタイプ?」

 

「ニュータイプ以外の人間の事だ」

 

アルフはタバコに火を付けながら答える。

 

「まさに」

 

アルフの口から煙が吹き出される。

 

「クルスト博士の量産化だよ」

 

「ふん……」

 

ユウは書類にサインを書き込む。

 

「モーリンちゃんはよかったな」

 

「故郷に戻って結婚……」

 

「あの子は幸せになれるよ」

 

フィリップとサマナもサインをする。

 

「さて、これで」

 

アルフはタバコを灰皿でひねる。

 

「また俺たちはモルモットだ」

 

「テストパイロットである分、楽ではあるな」

 

「実戦相手はいる」

 

「ジオンの残党狩りもするのか?」

 

アルフに答えながらユウはサインをした書類をヒラヒラとさせる。

 

「書いてない」

 

「サインを入れる書類に真っ当な物があって?」

 

ユウがブルーを睨み付ける。

 

「俺はあんたと仲良くはやっていきたい」

 

「私も……」

 

「ならなぜさっきから……」

 

「ロリコンは気に入らない」

 

ブルーの言葉にフィリップとサマナが笑った。

 

「嫌な女だよ……!!」

 

ユウは苦虫を噛む潰したような顔で茶を飲み始めた。


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