「ブライト艦長が来てるんだってさ!!」
「待ってよ、カミーユ!!」
グリーン・ノアの住人らしい少年と少女が空港の中を走っていく。
「サインを貰えるかもな」
「貰ってどうするのよ……」
「一年戦争の英雄だぜ……!!」
「知らないわよ……」
はしゃぐ少年に少女は不満げに言い返す。
「あれだ!!」
旅客船であるテンプテーションのあるステーションへ走っていく二人。
「元気が良い子供だな……」
「何かあったのかねぇ、カクリコン?」
ティターンズのパイロットとおもしき男女達がその走っている二人を面白そうに眺める。
「ティターンズかよ……」
少年がその黒いパイロットスーツに身を包んだ集団を見て、嫌な物を見たといったような顔をする。
「止めなさい、カミーユ」
「フン……」
二人はティターンズのパイロットから目を反らす。
ガタッ!!
少女が転んで膝をつく。
「なにやってんだよ……」
少年が少女に手を貸す。
「カミーユが早いから……!!」
少女が文句を言いながら立ち上がる。
その様子を少し呆れたようにジェリド達が見つめる。
「カミーユ?」
ジェリドがぼそりと呟く。
「女の名前なのに男か……」
「何だと!?」
カミーユと呼ばれた少年がいきなりジェリドに殴りかかった。
「うぉ!?」
ジェリドは思わぬ事に驚き、その拳をもろに食らう。
「カミーユ!!」
少年の友人である少女が悲鳴を上げる。
「小僧!!」
怒りに顔を歪ませたジェリドはその少年を蹴りあげようとする。
ガッ!!
「サマナ!?」
ジェリドの蹴りを食らったサマナが顔を痛みでひきつらせる。
「なぜ邪魔をする!?」
「相手は子供だろう!?」
「先にそっちから!!」
「許してやれ!!」
少年とジェリドの間に入ったサマナがジェリドを説得する。
「ちっ!!」
忌々しそうに少年を睨むジェリド。
「命拾いしたな、小僧」
ジェリドはそう吐き捨てると、他のティターンズのメンバーと共に立ち去っていった。
「大丈夫か?」
サマナが少年を気遣う。
「あんただってティターンズのくせに……!!」
サマナを鋭く睨みつける少年。
パンッ!!
少女が少年の頬を張った。
「ファ!?」
「この人に謝りなさい!! カミーユ!!」
少年はしばし無言でファと呼ばれた少女とサマナを睨んでいたが、しぶしぶ無言でサマナに頭を下げる。
「ありがとうございます……!!」
少女が申し訳なさそうにサマナへ礼を言う。
「僕たちは嫌われ者だからね……」
サマナは二人にそう微笑むとジェリドたちの後を追っていった。
「クワトロ大尉」
「ん?」
クワトロと呼ばれたサングラスの男が後方のリック・ディアスに振り返る。
「赤い色が好みなんですか?」
四機で編隊を組むリック・ディアス隊で唯一赤い塗装が施されている先頭のリック・ディアスを眺めながら、その女性パイロットは少し顔を綻ばせながら訊ねる。
「必ずしもそうではない……」
クワトロは苦笑しながら、前方のグリーン・ノアに視線を向ける。
「どちらかと言うと」
クワトロが肩を竦めながら女性パイロットの機体の方へ再び顔を向ける。
「君の髪の色の方が好みだよ……」
「お上手な……!!」
蒼い髪をした女性パイロットが大きな声で笑う。
「ハハッ……!!」
それにつられて他のリック・ディアスからも笑い声が響く。
「大尉のシンボルマークなのさ」
「へえ……」
僚機からそう言われた女性パイロットは不思議そうに首を傾げた。
「マークⅡは最低でも一機は確保したい」
「了解……」
「多少はコロニーの被害もやむを得ない」
「任せて下さいよ……」
クワトロとリック・ディアス隊の男達のやりとりが女の耳に届く。
「赤い彗星か……」
女性パイロットは変な物を眺めるように、その赤いリック・ディアスに視線を向けた。
「ジャミトフ父さん……」
女は自分の父の顔を頭に思い浮かべながら、自分のリック・ディアスを駆った。