夕暁のユウ   作:早起き三文

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第11話 新たなる動乱

漆黒の宇宙を戦いの閃光が舞う。

 

「またしても機体が重い!!」

 

「文句が多いぞ!!」

 

「うるさい!!」

 

ニムバスに悪態をついたユウは蒼いネティクスブルーを必死で操縦する。

慣れない機体では敵の火線をかわすだけで精一杯である。

 

「俺はニュータイプでも強化人間でもない!!」

 

「EXAMの騎士であった男であろう!?」

 

「昔の話を!!」

 

試作型ギャプランを駆るニムバスが次々へとジオン残党であるレッド・ジオニズムの旧式の機体を屠っていく。

 

「サイコ・ジムやブルーディスティニーの方がまだましだよ!!」

 

「サイコミュを使え!!」

 

「だから俺は!!」

 

ユウは旧式のジオンの機体にビームライフルを撃ちつける。

 

「オールドタイプだよ!!」

 

「弱腰な!!」

 

ニムバスの嘲笑う声を聞きながら、有線サイコミュをどうにか起動させるユウ機。

 

「下手くそなヨーヨーだな!!」

 

笑う女の声が響き、赤く塗装されたゲルググが有線サイコミュを掻い潜ってユウ機に接近する。

 

「今日はあの蒼い女はいないのか!?」

 

「ブルーの事か!?」

 

ネティクスブルーに肉薄するゲルググのビームサーベルをどうにか手持ちのサーベルで防ぐ。

 

「あの女には借りがある!!」

 

「知ったことか!!」

 

ガッ!!

 

赤いゲルググがユウ機を蹴りつける。

 

「装甲は厚いようだな!!」

 

ゲルググは驚異的な機動力でネティクスブルーの周りを旋回する。

 

「ゲルググではないな!?」

 

「支援者からの貰い物だよ!!」

 

両肩にスラスターを仕込んているゲルググの改修型とおもしき機体はネティクスブルーをなぶるようにビームライフルを放つ。

 

「お前が生きて帰れたら伝えろ!!」

 

ゲルググからのビームがユウ機をかする。

 

「紅のローベリアがお前の首を取るとな!!」

 

「余裕を見せつけるとはな!!」

 

カラララッ……!!

 

「何だ!?」

 

ネティクスブルーの機動性が上がっていく。

 

「サイコミュが起動したか!?」

 

ネティクスブルーからのグレネードがゲルググを襲う。ガゥ!!

 

「狙いが正確に!?」

 

ローベリアは驚愕するとともに、激しい頭痛を感じた。

 

「サイコミュ搭載機なのか!?」

 

シュパァ!!

 

有線サイコミュが機敏な動きでゲルググを狙撃する。

 

「リゲルグについてくるとは!!」

 

「ジオンの残党共のどこに!!」

 

被弾したローベリアのリゲルグにネティクスブルーがその機体重量を感じさせない動きで接近する。

 

「そんな高性能な機体が!?」

 

「スポンサーがいると言ったであろうに!!」

 

リゲルグの両肩のスラスターが炎を上げる。

 

「頭痛をさせる小癪な奴め!!」

 

ローベリアが忌々しそうに叫ぶ。

 

「お前はニュータイプなのか!?」

 

「そうらしいな!!」

 

ユウの言葉にローベリアが叫び返す。

 

ギュン……!!

 

恐ろしい程のリゲルグの機動性にネティクスブルーがついていけない。

ビームライフルのスピードすら遅く感じるほどだ。

 

「おのれ!!」

 

ニムバスのギャプランも苦戦をしているようだ。

ニムバス機と同じく可変機とおもしきモビルスーツが集団で襲ってくる。

 

「雑兵の戦い方の癖に!!」

 

常に集団で攻めてくるそのジオンのモビルスーツにニムバスは追いやられている。

 

「今までのジオンの旧式とは違うな!!」

 

ニムバスはギャプランの接近のタイミング、そして可変機能を活かす戦いが出来ないことに苛ついている。

 

「よそ見をしている余裕があるのか!?」

 

リゲルグからのビームがユウ機に飛ぶ。

ユウはあえてそのビームをシールドで受け、有線サイコミュをリゲルグに突撃させる。

 

「うあっ!!」

 

有線サイコミュがリゲルグに絡み付く。

 

「蒼い機体が!!」

 

「気に入らないか!?」

 

「宇宙の色ではない!!」

 

有線サイコミュをサーベルで切り落とし、リゲルグはユウ機から距離をとる。

 

「お前にも宇宙の色が分かるのか!?」

 

「その機体の色ではない!!」

 

「ならば!?」

 

「紅い宇宙だよ!!」

 

リゲルグからのグレネードが飛ぶ。

 

バシュウ!!

 

撃ち落とし損ねた一発のグレネードがネティクスブルーの腕に直撃する。

 

「まずい!!」

 

ジオンの可変モビルスーツ隊を振り切ったニムバス機がユウの支援に入る。

 

「もう少し耐えろ!!」

 

「好転するのか!?」

 

「ティターンズの援軍が来る!!」

 

「そうか!!」

 

ニムバスの言葉に勇気づけられたユウは相手をギャプランとバトンタッチする。

 

「お前も確かあたしに頭痛を起こさせた奴だな!?」

 

「私も同じだ!!」

 

リゲルグのスピードにギャプランは追い付く。

 

「今だ!!」

 

リゲルグが振り向いたその隙をニムバスは見逃さない。ギャプランが瞬時に変形をし、サーベルでリゲルグの片手を切り落とす。

 

「くうっ!!」

 

呻くローベリアのリゲルグから発射されるグレネードをニムバスは再び可変してかわす。

 

「単調な動きの癖に!!」

 

「騎士の戦い方だろうに!!」

 

推力が強すぎるギャプランが大きな弧を描いて、再びリゲルグに接近する。

 

ギィーン……!!

 

ジオンの可変モビルスーツから支援射撃がニムバス機に飛ぶ。

 

「ジオンの援軍!?」

 

ユウがネティクスブルーで敵機を落としながら呻く。ユウ機にビーム砲が直撃する。

 

「終わりだな!!」

 

リゲルグのローベリアが勝利を確信したかのように叫ぶ。ライフルをニムバス機に向ける。

 

ドゥドゥ!!

 

遠方から火線がレッド・ジオニズムの部隊を襲う。

 

「ティターンズか!?」

 

ユウが叫びながら有線サイコミュを敵機に向ける。

それに呼応するかのようにティターンズの黒い塗装をしたスナイバータイプのジム達がジオンの機体を狙撃する。

 

「ちぃ!!」

 

ジムに撃破される僚機の姿を見てローベリアは撤退の合図を送った。

リゲルグに連なるようにジオンのモビルスーツが漆黒の宇宙へと溶け込む。

 

「ユウさん!?」

 

ティターンズのパイロットが驚いたような声を上げる。

 

「サマナか?」

 

「おひさしぶりです」

 

サマナは黒いジム隊に周囲に警戒するように言いながら、ネティクスブルーの近くに近づく。

 

「ブルーディスティニー再びですか?」

 

「俺には合わない機体だよ……」

 

ニムバスのギャプランもサマナ機の近くに寄ってくる。

 

「久しぶりである」

 

「また両肩が返り血のように赤い……」

 

「気にするな……」

 

ニムバスは苦笑しながらサマナに礼を言う。

 

「サマナ」

 

黒いガンダムタイプの機体がユウ達に近づいてくる。

 

「俺の出番は無かったようだな」

 

「すまんな、ジェリド」

 

「実戦テストにちょうど良いと思ったんだがな……」

 

黒いパイロットスーツに身を包んだジェリドは軽く笑う。

 

「ジェリドか」

 

「これはこれは……」

 

ジェリドは軽く口笛を吹く。

 

「懐かしい顔を見たな」

 

「元気そうだな」

 

「あんた達ならば」

 

ジェリドは自分のパイロットスーツに刻まれているティターンズのシンボルを触りながら言い放つ。

 

「ティターンズの俺にタメ口を叩くのも許せるな……」

 

「全く……」

 

ユウが苦笑する。

 

「傲慢な男に俺は縁がある」

 

「フフ……」

 

ニムバスが皮肉げに笑った。

 

「では行くぞ、サマナ」

 

「グリーン・ノアへ?」

 

「今の俺たちの仕事だろう」

 

ジェリドの新型のガンダムに続いてサマナのジムも戦線を離脱していく。

 

「お元気で、ユウ」

 

「がんばれよ」

 

サマナのジムにユウはネティクスブルーの手を振った。

 

 

 

「ブルーの奴の行方はまだわからないか?」

 

「ああ」

 

ニムバスのギャプランの収集データを眺めながらアルフが呟く。

 

「もしかしたら」

 

今度はユウのネティクスブルーのデータを眺めながらアルフがぼそりと言う。

 

「エゥーゴに入ったのかもしれんな」

 

「ヘンケン艦長達のように?」

 

「今のティターンズに反感を持つものは」

 

アルフはネティクスブルーのデータを紙媒体に写しながら、タバコに火をつける。

 

「とても多い」

 

「だろうな……」

 

ユウはティターンズに入ったサマナの顔を思い浮かべる。

 

「特権階級だよ、ティターンズは」

 

アルフが軽く溜め息をついた。

 

「ジャミトフはどういう考えなんだろうか……?」

 

「わからんな」

 

自分達の部隊の形式上の責任者である人物の名前を出したユウにアルフはタバコをくゆらせながらそう吐き捨てる。

 

「俺達もジャミトフ閣下の私兵と見られているのかな」

 

「どうかな……」

 

アルフはタバコを灰皿へポンと置く。

 

「モルモット隊は形式上は連邦軍だ」

 

「しかし責任者が……」

 

「全てティターンズ寄りだ」

 

アルフは軽く自嘲する。

 

「俺のオーガスタ研究所もティターンズに媚びを売っているよ」

 

「この部隊の新入りも」

 

ユウは年若い新人パイロット達の名前を言う。

 

「全てニュータイプ研究所とやらの出身だ」

 

「クルスト博士の呪いかもな」

 

「言うなよ……」

 

ユウは苦笑しながらも、その言葉にどこか納得できる自分に驚いていた。

 

「EXAMの呪いか……」

 

蒼い塗装をされたデミ・ニュータイプ専用機とも言えるネティクスブルーを見詰めながらユウは顔をしかめて呻いた。


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