夕暁のユウ   作:早起き三文

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第1話 青い残光

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

  

「機体性能がよ!!」

 

ユウがジムコマンドを駆るたびに機体から悲鳴があがる。

 

「ちっ!!」

 

集中火線をさけながら、地球連邦軍のパイロット「ユウ・カジマ」は叫ぶ。

 

「数だけは多い!!」

 

ジオン軍の宇宙要塞「ア・バオア・クー」を遠目に見やりながら、ユウは青く塗装されたジムコマンドを必死で駆る。

 

「休ませろ!!」

 

ユウの口と僚機から同時に声が出る。

 

「お前も疲れたか!?」

 

ユウはビームガンを放ちながら僚機のフィリップへ声をかけた。

 

「お前さんの機体だよ!!」

 

通信機から怒鳴り声が聞こえる。

 

「ブースターやら何やらが吹き飛ぶ!!」

 

「敵の火線が多すぎる!!」

 

曲芸のようにユウ機が舞う。

 

「だめだっての!!」

 

「仕方無いだろ!?」

 

「早くクセを無くせ!!」

 

フィリップの怒声を聞きながら、ユウはジムコマンドをフルに動かす。

 

「ブルーとは違うと言いたいんだろう!?」

 

「だったら、少しは機体をいたわれ!!」

 

「かわしきれない!!」

 

「ジムが吹っ飛ぶぜ!?」

 

ジオンの火線を避けながら、ユウはビームガンをうち放つ。

 

「だったら!!」

 

蒼いジムのビームガンの残弾が無くなったのを見ながら、背中のジム用のライフルを取り出す。

 

「少しは俺を助けろ!! フィリップ!!」

 

「手一杯だよ!!」

 

「サマナの奴はいないのかよ!?」

 

コクピットにやや童顔の男の顔が映る。

 

「ユウさんはエースでしょうに!!」

 

同僚のパイロットであるサマナが疲れたように答える。

 

「一応、専用機でしょう!? その機体は!?」

 

「俺は不死身じゃない!!」

 

「なら、僕たちの方がより死にやすい!!」

 

「状況が悪いのか!?」

 

「良いわけないでしょ!?」

 

サマナの焦った声を聞きながら、ユウは試作品のジムライフルをゲルググとか言うジオンの新型へ向ける。ドゥ!!

 

「よくあたるよ!!」

 

ライフルの集弾性が気に入ったユウは少し機体を停止させながら敵機を狙い打つ。

 

「止めんなよ!!」

 

フィリップが怒鳴る。

 

「止まったら死ぬぜ!?」

 

「お前が止めろと言ったんだろうが!?」

 

「よちよち動けって意味!!」

 

「余裕があるのかよ!!」

 

「帰還の途中だ!!」

 

「被弾したか!?」

 

「片腕が吹き飛んだよ!!」

 

フィリップはそう言いながら通信を切る。

 

「全く……!!」

 

ジムライフルの残弾が無くなる。

 

「これが俺の最後の人殺しになれば良いがな!!」

 

「上手くいくか!?」

 

男の声がした。

 

ギューン……!!

 

「ゲルググ!?」

 

声とともに放たれたビームを紙一重でさけるユウ。

 

「機体に不満があるようじゃないかい!?」

 

「ジオンの奴には関係ないだろ!!」

 

「思うように人殺しが出来なくて不満かな!?」

 

再び放たれるビーム。ギュオ!!

 

「二回もかわされた!?」

 

「ジムが壊れるだろうが!!」

 

「こっちはありがたいよ!!」

 

敵の笑い声が聞こえる。

 

ジムコマンドのアポジモーターからのレッドアラートを気にしながら、ユウはそのゲルググに対して残りのライフルを集弾させる。

 

「いまさら、新型のライフルなんぞ!!」

 

ゲルググのパイロットは笑いながら、ライフルをかわしきる。

 

「退きな!!」

 

ゲルググからビームが強く放たれる。

 

「くっ!!」

 

回避機動を取ろうとした時、ついにブースターの片方が爆発した。

 

「青ざめたジムが片足だな!!」

 

「ジオンのエースか!!」

 

右の片脚が撃ち抜かれながらも、ユウは予備の弾倉をライフルに装填する。バルカンで牽制。ババッ!!

 

「ブレニフ・オグス!!」

 

バルカンをかわしながら、ジオンのパイロットは名乗る。

 

「今からお前の前から逃げる男の名だよ!!」

 

「戦いで相手に名を名乗るなど!!」

 

接近してくるゲルググにライフルを乱射する。

もう片方の手にジムのビームサーベルを取り出す。

 

「傲慢な奴だ!!」

 

「良いだろうに!?」

 

「その態度の為に死んだジオンのパイロットがいる!!」

 

「そうかい!?」

 

ゲルググもビームサーベルを取り出し、軽くユウ機のサーベルにうち当てる。

 

「俺たちの負けだな!!」

 

オグスとか言うパイロットはそう言いながら、ゲルググの片手でジムを軽くパンチをする。

 

「投降するのか?」

 

「さあなあ……」

 

オグスはそう言いながら、ユウ機から離れる。

 

「お前達には行く当てがないだろうに……」

 

「そうでもない」

 

オグスはすこし自嘲の笑みを浮かべたようだ。

 

「ではな」

 

「俺を逃がしてくれるのか?」

 

半壊したジムからユウが語りかける。

 

「人殺しは出来れば避けたい」

 

「しかし、俺たちは軍人だろ?」

 

ユウはどこかフィーリングが合いそうなジオンのパイロットに語りかける。

 

「この戦争で」

 

ゲルググは狙撃用と思われるビームライフルを軽く振る。

 

「罪もない若者が死にすぎた」

 

「戦いは嫌いか?」

 

「好きだ」

 

ユウは苦笑する。

 

「ならば、なぜ」

 

「死ぬのは戦士だけで良い」

 

「そうか……」

 

「だがな」

 

ゲルググはライフルをユウ機に向ける。

 

「これからは、もっと戦士で無いものが死ぬ」

 

ビームライフルの引き金を引く。弾は出ない。

 

「戦争は続くと?」

 

「哀しいがね」

 

そのゲルググはライフルを宙に放ち、去っていった。

 

「ユウ」

 

所属艦サラミスのモーリンから通信が入る。

 

「戦争は終わったわ」

 

「ジオンが降伏したのか?」

 

モーリンが頷く。

 

「本当に戦争が終わったのね」

 

「そうだな……」

 

破損した蒼いユウ機にサマナのジムコマンドが接近してくる。

 

「帰りましょう、ユウさん」

 

「ん……」

 

サマナはユウのジムを引っ張ってくれた。

 

「終わったのか……?」

 

「違うと?」

 

「いや……」

 

「疲れてるんですよ」

 

サマナが微笑む。

 

「地球に帰りましょう」

 

「ああ……」

 

ユウ達は母艦へと帰っていった。


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