【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:しらいし

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第十八話.曹一門の金庫番

 ぽちが曹操にお小遣い下さいと言いに行くと、曹洪に話通しておくから後で向かうように言われた。曹洪は曹一門の金庫番なのです。

 

 

「ああ、それと新しい娘が入ったから紹介するわ。季衣、自己紹介しなさい」

「あ、はい! 僕は許緒仲康、真名を季衣っていいます! 曹犬様が初対面の人とは真名交換しない事は聞いてるので、曹犬様と呼ばせて貰いますね!」

「うん、宜しくね許緒」

 

 

 また曹洪が喜びそうなロリっ娘が来たなとぽちは思った。しかし既に姉と真名を交換している辺り相当な実力を持ってるんだろうなとぽちは思う。ま、実力があろうが無かろうが素直そうないい娘だからいいかとぽちは特に深く考えない。今度点心でも奢ってあげようとぽちは思う。ぽち、その娘も胃袋ブラックホールだからな。

 

 その後、ぽちは言われた通り曹洪の元へ向かう。曹洪の執務室の前に立つと中から喧騒が聞こえてきた。

 

 

「予算に余裕はありません! これは煮詰めればもっと予算を削れるはずです! こちらは計算が間違っています! それからこちら、なんですかこの項目は! きちんと説明して下さいませ! これだから使えない男は嫌いなんです! なんですの? きちんと利を説いて説明出来るならやってみなさい! 出来ないならさっさと作り直しなさい!」

 

 

 曹洪の怒号が聞こえバタバタと文官が複数名部屋から逃げるように飛び出してきた。それを見ながら、また後で来ようかなと部屋の前から立ち去ろうとしたら曹洪から声を掛けられた。

 

 

「あら? ぽちさんではないですか?」

 

 見つかったのでしょうがなくぽちは入室したが、先ほどのやりとりの後でお小遣いくれはさすがに言いづらい。

 

「ああ、お小遣いですわね。お姉様から聞いていますわ。そんなに畏まらなくてもぽちさんのお小遣いは別枠できちんと用意してますわ」

 

 それ給金を管理してもらってるのと何も変わらないと思うが、ぽちが気付いてないから何の問題も無い。

 

「あら? 衣服が乱れていますわ」

 

 曹洪がぽちの衣服を正し始める。

 

「服が乱れてはだらしなく思われてしまいますわ。……髪も寝癖がついていますわね。民にも部下にも、ぽちさんは憧れの人なのですからシャンとなさらないと……。これでマシになりましたわね」

 

 ぽちの衣服や髪をささっと直していく曹洪。まるで新妻……!曹洪の嫁力が上がっていく……!

 その様子を偶然報告にきた曹純が目撃した。おどおどした様子で書簡を手に曹純が話しかける。

 

「あ、あの……何してるの栄華ちゃん」

「あら柳琳。何ってぽちさんの服と髪の乱れを直していただけですわ?」

「あ、そうなんだ……」

「どうかしましたの?」

「いえ、なんでもありません……」

 

 ま、普通勘違いするよね。曹純が勝手に勘違いした様子をぽちと曹洪は不思議そうに眺めていた。その後、曹洪は曹純に何を何故勘違いされたか気付き顔を赤らめながら曹純に違うんです! と必死に弁解していた。

 

 

 

「華琳様、お疲れのようですが……」

 

 いつも神速で政務に取り組む曹操の手がまったく動かず、机に肘をついて頭を抱える様子に、仕事の報告に来た夏候淵が心配そうに声を掛ける。

 

「ああ秋蘭、違うのよ。疲れてる訳じゃないわ」

「では華琳様、何か悩み事でも……。私で良ければ話を聞かせて頂けませんか」

「……そうね」

 

 あの曹操に悩み事というだけでも驚きだったが、それを打ち明ける事に内心驚く夏候淵。普段弱味を見せぬ曹操だけに何事かと身構える。

 

「……ぽちの貞操、危なくないかしら」

「……は?」

 

 一瞬呆気に取られるも、考え言葉を絞り出す夏候淵。

 

「華琳様。ぽち様の周りには今、魅力的な娘達がたくさんおります。さすがに誰か既に御手付きであるかと思いますが……」

「まだ無いわね」

「何故判るのでしょうか」

「あの娘達の好意は信仰に近いもの。ぽちが手を出すなら拒まないでしょうけど、ぽちは手を出さないわ」

 

 

 だって童貞だものと断言する曹操。

 

 

「ならば何をお悩みですか?」

「……一人だけ危ない気がするのよ」

「それは?」

「恋よ」

 

 呂布だけは流れのままそうなりそうな予感がすると曹操は言う。

 

「ですがそれならぽち様も恋と既に至っている可能性も───」

「無いわ。皮膚と汗は嘘をつかないわ。童貞の(味と)匂いをぷんぷんさせているもの。あの童貞臭はまだ間違いなく童貞よ」

 

 匂いは比喩と受け取れるが皮膚と汗とは一体……と目を瞑り聞かなかった事にしようと頭から切り捨てた夏候淵。

 

「はぁ、童貞とは匂うものなのですか?」

 

 いつの間にやら部屋に入ってきていた夏候惇が曹操に尋ねた。

 

「当然でしょ」

「なんと」

 

 驚く夏候惇と同じく内心驚く夏候淵。二人共に曹操としか閨を過ごした事がないので男に関する知識が足りなかったのかと思うに至る。違うよ? そこにいる弟馬鹿がおかしいだけだからね?

 

「よし」

 

 何やら決断した夏候惇が部屋から出ていった。まあいいだろうとそれを流した夏候淵に曹操は言う。

 

「やはり貴女にぽちの初めてを頼んでおくべきかしら」

「ぽち様の好みというのであれば柳琳かと思います。私は少し外れているかと」

「柳琳だとまずいのよ。なんとなくだけれど」

「まずい……ですか?」

「ええ」

 

 曹操の勘は当たっている。ぽちと柳琳だともうゴールしちゃってぽちは本当に引きこもるだろうし、そんなぽちを甲斐甲斐しく柳琳は世話をするだろう。完璧駄目人間完全体となるのは明らかである。柳琳が天使過ぎるので仕方ないね。しかしその裏で栄華の新妻力が上がっている事はさすがに読めなかったようだね。

 

「ではその……華琳様が……」

「駄目よ。その……だって……無理矢理そういう事して嫌われたくないじゃない……」

 

 夏候淵がキュンっと来たのは仕方ない事だろう。恥ずかしそうに悩む華琳様可愛い。

 

「……私とてぽち様には嫌われたくはありません」

「……とりあえず保留ね。」

 

 ぽちの貞操に関して曹操が悩む際、いつも保留で話が終わる。政務に関しては即断即決の曹操もこの話題にのみ二の足を踏みまくっているのは嫌われたくないからである。夏候淵辺りが夜這いに行ったら拒否しないと思うけど自分からぽちが動く事はない。童貞だから。

 

 

 

 

 

「ぽち様はいるか~!」

 

 ドオオオオンと執務室の扉が吹き飛び直線上の壁にドカーンと叩き付けられ扉がお亡くなりになりました。わりといつもの事なので一緒に仕事している孔明もホウ統もこの程度で驚く事は無い。夏候惇は何故扉を蹴破るのか。そこに扉があるからなのか。わりといつも扉が吹き飛ぶので扉から壁までの直線上は空白を作っておくのが、この部屋の常識です。

 

「春姉、また栄華に怒られるよ?」

「う……それより!」

 

 部屋に入ってきた夏候惇がぽちの元へ駆け寄る。

 

「匂いを嗅ぐぞ!」

「へ?」

 

 いきなりぽちの匂いを嗅ぎ出す夏候惇に困惑するぽちと呆気に取られる孔明とホウ統。なんだろう、ぽちの匂い嗅ぐの一大ブームなの?

 

「なるほど、これが童貞の匂いだな。覚えたぞ」

「 」

 

 ふふんと鼻を鳴らす夏候惇と、その一言で日向一族の如く白目になったぽち。

 

「あ、あの、春蘭様?」

 

 ホウ統が一体何してんのと夏候惇に尋ねる。

 

「ああ、ぽち様が童貞の匂いがぷんぷんすると華琳様が仰っていたからな。童貞とはどういう匂いがするものなのか嗅いでおこうと思ってな。これが童貞特有の童貞臭というやつか。参考になった」

「 」

 

 

 華琳姉ひどいと思いながら魂が抜けたぽちと、やはりぽち様はやおい! と顔を赤らめ興奮する孔明とホウ統。孔明とホウ統は無言でアイコンタクトを取りその夜熱い二人の会議が行われ、謎の同人サークル『はわあわ☆軍師』から新刊『曹犬×虎豹騎 犬から女豹に変わる夜』が発売され、裏でめっちゃ売れたのは内緒だよ。そして夏候惇は満足そうに帰っていきました。




日常パート書いてたら話が進まない……。

皆さま誕生日祝って下さりありがとうございます!
あの日は仕事帰りにコンビニでケーキ買って皆さまのコメント見ながら一人でケーキ食べるというリア充な日を過ごしました。

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