【完結】真・誤解†夢想-革命?- 蒼天の覇王   作:しらいし

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第十四話.洛陽激震

 王都洛陽。遠征から帰ってきたぽちは、門を抜けた時点で違和感を覚えた。いつも迎えてくれる華琳姉や麗羽さんの姿が無かったからだ。仕事かなとぽちは思ったが、なんとなくではあるが街の雰囲気も暗い気がした。洛陽の人々はぽちの顔を見ると皆「帰ってきて下さった」と喜びの声を上げる。曹犬軍面々一様に洛陽で、というより王城で何かあったなと悟る。皆がぽちを見るとぽちは飄々といつも通りの表情を浮かべていたので騒いでは駄目だなととりあえず平静を保つ事が出来た。こういう時、トップがどっしりと構えていると安心するよね。ぽちは久しぶりに華琳姉の飯食べられるって事で頭が一杯なんだよ。……なんだよねえ。

 

 

「ぽっち~! 大変っす~!」

 

 夕飯何かなと呑気に考えながら移動中、城に着く前に曹仁がぽちを捕まえた。慌てた様子の曹仁に何事かと尋ねる。

 

「どしたの華崙。何進に報告したら家に帰るよ?」

「それどころじゃないっす! 実は華琳姉が────」

「……は?」

「じゃああたしは伝えたっす! あたしも明日洛陽から出るっす」

「……分かった。ありがとう華崙」

 

 曹仁の話を周りで聞いていた曹犬軍の一同は心配そうにぽちを見る。一同がぎょっとした。そこにはいつもとまったく違う感情を削ぎ落とした無感情な表情を浮かべるぽちがいた。

 何も言わず、馬をそのまま城に進め始めたぽちに誰も声を掛ける事が出来なかった。

 

 

 

「────この度の活躍で、正式に驍騎将軍として─────勿論褒禄も─────おい、聞いているのかぽち」

 

 何進の元へ一人報告しに来たぽち。部屋へ入るなり何進がいつもより大袈裟にぽちを誉める。そしてその褒美にと驍騎将軍、ようは文官でいう三公の地位に正式に任ずると話すもぽちは完全に上の空といった様子だった。驚かせようと地位を用意した何進は肩透かしを喰らったようでまったく面白くない。

 

「おいぽち貴様────」

「お疲れ様でしたー」

 

 急に何か決めたように顔付きを変えたぽちが、一言だけ言って部屋から出ていってしまった。呆気に取られる何進に側に居た何太后が声を掛ける。

 

「ぽち君遠征で疲れてるのよ」

「ふん、ならそう言えばいいだけだろう」

「あらあら、困った姉様。そろそろ私がぽち君頂いちゃおっかなあ。疲れてるなら癒してあげないと♪」

「くくく、なら二人で今度相手をしてやるか」

「あらあら~♪」

 

 何太后が軽口で何進の毒気を抜きながら、ぽちに対しての姉の方針ではきっと上手い事にはならないだろうと考える。何太后はどうしたらぽちを上手く懐柔出来るか考えていた。時既にお寿司である。

 

 

 

 ぽちが何進の部屋から出ると、護衛にと呂布と徐晃が控えていた。ぽちが何進の部屋からある程度遠ざかり周りに人がいない場所で徐晃に頼む。

 

「香風。至急、集められるだけでいいからいつもの所に皆集めてくれないかな」

「……分かった」

 

 言葉を受けすぐに徐晃は駆けた。至急、とぽちが言った。それはぽちに仕えて今まで一度も聞いた事のない言葉だった。勿論ぽちの様子に動揺していた曹犬軍の将達は城に着き解散したばかりであったが直ぐ様一人残らず集合した。皆を見渡し、ぽちが喋りだす。

 

「曹犬軍は今日で解散します。皆、今まで本当にありがとう」

「ぽち様! それはどういう────」

 

 

 

 破砕音。誰かがぽちに意見を言おうとしたその時、呂布が戟を床に突き立てた。

 

 

「恋、大丈夫だから」

「……ん」

「俺、姉の居る頓丘に行くからさ。まあ皆優秀だから俺なんていてもいなくても変わらないと思うけど」

 

 ハハハと笑うぽちに皆口々に言う。そんな事は絶対にない。我々には、洛陽には、漢にはぽち様が必要だと。まあぶっちゃけ今まで仕事ほとんど周りに振ってたから仕事回るのは回るんだけどね。周りが悲鳴にも似た声で引き留める中、孔明が聞く。

 

「いつ発たれるおつもりですか?」

「明日」

「分かりました」

「……朱里?」

「私は、そして雛里ちゃんもぽち様の"個人的な"軍師ですからね?」

「……残ってたほうが待遇良いよ?」

「私も朱里ちゃんも、ぽち様が雇い主ですから」

 

 明日。随分急な話である。皆困惑する中、真っ先に伏竜鳳雛がぽちに追従すると言った。これをわざわざ口にした事でぽちに追従組の中でイニシアチブが確保されたのである。さすが孔明である。そこからは皆、私も私もと追従すると誓いを口にする。孔明の一言から会話の流れが完全に変わった。これ孔明の罠とも言う。

 

「いや、皆正直残ったほうがいいと思うけど。うちの姉に雇ってもらう事になるけどそれでもいいの? 立場今までより下だよ?」

 

 全員が頷く。この場にいる人間が今さら立場や報酬など気にする訳がない。ぽちが曹操に付くというならそのぽちに付いていく事に疑問を持つ筈がないのだ。

 

 

 翌日、ぽちに伝える為に洛陽に残ってくれていた華崙と、曹犬軍の将達、ついでに噂を聞いた洛陽の人間の十分の一程度、五万人くらいがぽちに付いてきた。民族大移動です。流石に不味いと思った孔明が曹操に五万人の住居と食糧が必要ですと早馬を出す。民の数は国力であると言ってもいきなりこんな人数増えても受け入れられる筈がない。普通は。

 

 だがここで予想外の展開が起こる。なんと涼州や幽州、洛陽に残っているぽちを慕う官僚などから食糧や金銭の寄付が集まる事となったのだ。そしてぽちもじゃあ皆で畑を作ろうと言い出し、姉より先に屯田兵を生み出す始末である。住居に関しても元曹犬軍が中心となり木材の伐採から始め皆協力して作り、城塞都市の周りにもう一段階城塞都市を新たに作り上げ巨大都市がしれっと誕生する事になるのはもうちょい後の話である。最終的に洛陽の人間の四分の一がぽちを慕って移住してくるからそりゃあ都市も出来るってもんよ。

 

 

 ぽちや曹犬軍、更に大量の民がまるっと居なくなった洛陽は混乱の極みである。軍の増強をと何進は董卓を洛陽に呼びつける。が、ぽちが居ない事を知った董卓なんとこれを仮病で拒否。次に馬一族を呼びつけるも当然同じく拒否。更に公孫サンも人材不足を理由に拒否。最終的にKOEIで言うと知力、武力共に50くらいの微妙な人材を後釜に据える事になり王都は更に混乱する事になるのであった。




聖杯戦争に呼ばれそうとの声を幾つか頂きました。呼ばれるとしたら調停しない事で有名なルーラーですね分かります。うちのカルデアにはルーラーはジャンヌしかいません。でも邪ンヌと邪ンタちゃんと三人揃っているのでほっこり出来ます。

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