いつの間にかよく分からない場所に居た。
高層ビルの代わりに天に届くかさえ思わせる白亜の塔。
街並みは僕の知っていたものとかなり違った。
人も。
耳の尖った綺麗な顔立ちをした人達、馬鹿みたいに大柄な人達、猫耳や犬耳……狼のような尻尾が生えた人達。
普通に人も居るけど変わった人がいっぱい。
それを誰もが不思議に思っていない。

あぁ、そんな世界でも僕は英雄を目指そうかなって。
それしか思い浮かばないんだ。
ねえ。先生……この世界で英雄になるにはどうしたらいいの?

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なんとなく英雄繋がりで書いてみた
長く続ける気は今のところなし


優しい人

目を開けると景色がすっかり変わっていた。

僕はなんでここに立ってるんだろう、まずはそんな疑問が頭に過ぎる。

でもそんなことより目に映る物全てに驚いた。

僕が人生で住んできた街並みのどれとも違う。

ビルの代わりに多分街の中央であろう場所に聳え立つのは白亜の摩天楼。

他の建物も僕が知ってるものとは違うくてきっとこれは中世ヨーロッパとかにありそうな建造物、街並み、景色だと思う。

僕は中世ヨーロッパなんて見たことないけど。

 

次に衝撃を受けたのは通り掛かる人達かな。

普通に僕と同じだと思う人はいるけど…なんだろう。

僕の知る人間とは違う容姿をした人をチラホラと見掛ける。

耳の尖った美しい人、これは男女問わずかな。

背は小さい人が多いけど大柄な人、ちょっと怖い。

肌の色が褐色の人、は女の人しか見受けられない。たまたまかは知らないけど露出が多くて目のやり場にちょっと困る。

あとはさっきの大柄な人とは違って異様に小柄な人、小人みたいだ。

猫耳や犬耳、狼のような尻尾が生えていたり虎の顔をしていたり人かよく分からない人型もいる。

 

そして、やっぱり一番気になること。

そんな彼等彼女等の大半がおとぎ話とかや外国の昔話とかで出てくるような格好、言わば剣や盾、弓矢とかで武装していた。

やはり僕はなんでここにいるんだろう。

結局同じ考えに戻ってきちゃった。

 

「香川先生でも……分からなさそうかな」

 

ふと脳裏に過ぎる僕の先生。

大切な人だから僕が殺しちゃったけどやっぱり大切な人だった。

思い出したら泣けてきちゃいそうだ。

でも、仕方なかった。

先生はとても大事な人だから、僕が殺さないと。

いけなかった。

()()になるためには。

 

話は戻すけどやっぱり先生が隣に居たとしても分からなさそうだ。

先生は色々教えてくれるけどきっとこれは専門外だと思う。

あぁ、どうしよう。そう考えたら不安になってきた…。

別の理由で泣きそうだ。

 

「どうかなさいましたか?」

 

僕がうずくまっていたら誰かが声を掛けてくれた。

きっと人が良い人だ。

声音は強いけどなんとなくそう思った。

 

「ごめんなさい…。お腹空いちゃって」

 

僕は顔を上げて咄嗟に空腹を訴えた。

なんだか迷子になったなんて恥ずかしくなっちゃってさっきから背中とくっつきそうなお腹のことをそのまま口にした。

 

「そうですか…」

 

僕に声を掛けてくれたその人はとても美しい。

凄く整った容姿に綺麗な瞳、尖った耳が特徴的でおとぎ話に出てくる妖精みたいだった。

彼女を見て僕も思わず呆気に取られちゃったくらい彼女は本当に美しい。

多分空腹で僕が倒れたと勘違いした彼女は暫く考え込んでいる。

あながち勘違いではない気がしたけど…なんだか本当にお腹が変な感じになってよく分からなくなった。

 

「良ければうちの店に来ますか?少し値段は高いですが……美味しい料理を出してくれる酒場です」

 

美しい妖精こと彼女はどうやら酒場で働いてるらしく、僕を招待してきた。

でも僕のポケットには何も入っていない。

ここがどこの国か…そもそも僕の知っている世界なのか分からないからもし仮にお金を持っていても日本円が通じたかは分からないけど。

とにかく僕は無一文だった。

その事を彼女に伝えると。

 

「やれやれ、この都市は…。衣食住も満足にできない人がいるのか。仕方ありません。私が奢りますから今は貴方の空腹を満たしなさい」

 

そう言って彼女は手を差し伸べた。

僕はその手を見つめる。

彼女の容姿だけでなく指先の隅々まで綺麗だった。

まるで煌めくように僕の目には映った。

僕は思わずその手を取る。

 

「私はリュー・リオンです。貴方の名は?」

 

僕の手を思いの外強い力で掴み、身体を起こしてくれた彼女にちょっとびっくりした。

あんな華奢な腕なのに何処にそんな力があるのだろう。

 

「名を言いなさい。無礼に当たりますよ」

「あ、ごめんなさい…」

 

僕が驚いてる間に彼女――リューさんを待たせてしまった。

ちょっと怒らせちゃったかも。

そう思ったけどなんでか少しくらいは許してくれる気がした。

とにかくこれ以上彼女を怒らせたくないし、助けてもらう人に確かに失礼だから僕は目を覚ましてから初めてハッキリと口を開く。

 

「僕の名前は東條……悟」

「トウジョウ サトル?名前の感じからして極東の方でしょうか。いえ、それより今は酒場へと向かいましょう」

「あ、ちょっと…」

 

一方的に会話を切って背を向けてしまうリューさん。

僕はその後を追いかける。

まだ出会ったばかりだけど、彼女の印象を述べるなら…うん、きっと。

きっといつかショックを受けてた僕に美味しいご飯を食べさせてくれた笑顔の似合う彼のような優しい人なんだと思う。




東條口調合っててくれ。頼む


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