2話連続で投稿となります。
それではどうぞ。
「とにかく堕天使の件については全てが天界に戻り、天使に返り咲いたという事だ」
「そうとうデタラメな話に聞こえるわ」
「小娘の勝手だが我々は事実を語っただけに過ぎん」
隊長はそう言ってリアスの疑いをこれ以上晴らす気は無いと口を閉じる。
そんな中で他所ではとんでもない会話が繰り広げられていた。アーシアを中心に据えて。
「アーシアさん、今までは辛い人生の中を過ごしていたと聞いています。それでも信仰を捨てなかった事を主はお喜びの事だと思われます」
「い、いえ、そんな、私は……」
補佐官が口にする称賛の声にアーシアは恥ずかしそうにうつむく。
「ですが主も貴女の信仰に対して報いる事が出来ない事を嘆いている事でしょう」
「そうでしょうか……」
「大丈夫です。これから先の運命は、より良き道が待ち侘びている事をお約束します」
「そうですか……へっ?」
「大丈夫です、貴女に良き未来が訪れる事はこの『勝利の女神』の私が保障します」
補佐官からの予期出来ない保証話にアーシアの目が丸くなる。
そして補佐官の頭に司令の拳が落ちてきた。
「テメェは何を保障してやがんだよ! 勝手な事をするなと神界のお偉いさんにどやされてたんじゃねえのか!?」
司令は簡単に補佐官に釘を刺すと、改めてアーシアに向き直る。
「さて、本題はアーシア・アルジェント、君の今後についてだが、少々困った事になっていてね」
「どういうことですか? 私に出来る事が有れば」
「むしろ君にしか出来ない事なんだよ。君がこの先時渡達とつかず離れずの関係を続けていくと命に係わる事が多く発生する。おそらくだがそちらのお嬢さんとも関わると同様の事が起きるだろう」
「そうですね。部長は冥界の貴族なので」
司令の言葉に小猫が短絡的に語る。アーシアが人間である以上、悪魔や天使の戦いに関わるのは肉体的にも危険な事である。
だがそこに司令は救済案を口にする。
「そのため、君の身の安全の向上目的で我々は3つの道を用意した。1つは人間のまま身体強化術を施して超人にする道、2つ目はエンジェリウム細胞を植え付けて強制的に天使へと進化させる道、3つめはデモニクス細胞を植え付けて悪魔へと進化させる道だ。多分3つ目の道はお嬢さんの方を優先する形になりそうだけどね」
司令はそう言ってアーシアに選択肢を委ねる。するとリアスは軽く頷いてから話を進めた。
「そうね、悪魔になるのなら、こちらに優先権があるわ」
「もっとも我々側の悪魔は、不確定要素が有るから進めて良い話とは言い難いのも事実だ。天使にしても同様に……な」
2人はそう言ってから再びアーシアに向きなおる。
「こちらはどの選択肢を選んでも、『ダークネスの幹部、アーシア』を受け入れる事になっている。無論そちらのお嬢さんの眷属となっても一向に構わない」
「アーシアの神器の能力は誰もが欲しがるものだけど、私達の力になって欲しい気持ちもあるわ」
2人の言葉にアーシアは言葉を失いながらも決断に喘ぐ。しかし彼女はしっかりと目を見開き、自分の決断を口にした。
「……私は……イッセーさんと一緒に居られたらと思います」
か細いながらも芯のこもった声で選択するアーシアにリアスは笑みをこぼし、司令は苦笑を漏らす。
「えっと……」
「構わないと言った筈だ。イッセーと同じ扱いになるだけだ」
司令はアーシアの伺うような視線を受けて自嘲気味な笑みを浮かべる。