カケカケの戦闘がワンパターン化していて外野陣の見る目が冷たくなってきてるようで。
それではどうぞ。
何だかんだと言いながらも埋められた俺達に対して、外野の目は厳しかった。
「まさか時渡さん達は弱いのでしょうか?」
「そんなはずはないわ」
アーシアの心配そうな呟きに対してリアスが真っ向から否定する。だが悲しいかな、三人組を以てしてもダークネスの幹部達には勝てるはずなど無い。あのゾルに歯が立たなかったのだから、その遥か上を行く幹部達に勝てる道理など無い。
「だが踏み越えた戦場の数と質はこちらが格段に上だ。何しろ魔軍2万と死神300人を相手に引くこともせぬ猛獣、格とやらが違うというもの」
隊長は自分の部下をそう評して誇らしげに口元を歪める。自分の国の危機でも他人事のように済ませるのだろうか。
「その時には私もその中に居たな、魔軍側の騎士としてだが」
隊長の言葉に司令が小言を付け足す。そういえば2人の因縁はあの決戦で1度途切れたとか言っていた様な。
「ならばあの時に決着を付けにリバーサルに挑むか?奴なら飢えておるぞ?」
「冗談なら止めてくれ。司令の立場はホイホイ投げ出せるもんじゃないんだ」
それならと挑発的な視線を向ける隊長に司令は自分の立場でものを言う。
それを見てリアスは思わず近くに居るポーラに問いかけた。
「ねえ、あの2人って仲が悪いのかしら?」
「良くは……ないですね。刑事さんと泥棒さんのような仲ですから」
ポーラさんは少し言い難そうにしながらもハッキリと肯定する。司令と隊長が初めて顔を合わせたのは組織の結成時らしいが、ジャクラウスという犯罪帝国の瓦解には司令が絡んでいたとか副司令がその時の捕縛者とも言われている。何でも魔界皇帝陛下という魔界の頂点に君臨している皇帝陛下が勅命で『生死を問わず打ち倒せ』とか言ったとか何とか。
「そういえばそれで思い出したのだけれど、あなたたちの世界に堕天使は居ないって時渡さんが言っていたのにトリーさんは知っていた様な事を言ってたわね」
「それは単純に堕天使が表向きには存在しない事にされているからなんです。なんでも神に堕とされた事を恨んでいる様で、元の地位に帰る事を望んでいるとも言われています」
リアスが不意に話題を変えたことに対してわずかに眉を顰めながら彼女は返答する。
確かに堕天使と陰口を叩かれている連中は秘かに天界を目指し、元の地位――熾天使や能天使など――に戻ろうと侵略を画策していたと聞く。そんな最中にあの神魔大戦とかいう全世界を巻き込んだ大戦が勃発して隊長や司令達が襲撃者である邪神達を迎え撃つ事態となり、かなりの深手を負ったとされている。
そんな大戦があったおかげでどさくさに紛れて天界の門を開けっぱなしにしたり軽犯罪者で功労のあった者が軒並み釈放されたりと組織にも痛手はあった。何しろ仕事の無い元軽犯罪者、仕事を与えるべく副司令が会社を立ち上げて連中をごっそりと雇い入れたから、運転資金が心許無い事。当時の苦労が偲ばれる。
「……そうなの」
「でもそれをウチの司令さん達が台無しにしちゃったから、元の地位に戻っても困惑したままだそうです」
「……そうなの?」
聞いていたリアスと説明するポーラさんの温度差が激しく乖離しているとしか言えない空気がそこにあった。
「連中とて止むを得まい。いざ自分の地位に戻ってみれば組織図が様変わりして高い地位にいた筈がそうでも無かった椅子に座らされたのだからな」
「降格……では無い様ね」
「椅子の高さや職務に問題は無い。だがその椅子が横並び、職場の椅子に替えられたのだ、頭も痛むというものだな」
隊長の妙に引っ掛かりのある言葉にリアスは目を細める。だが語られていく事実は彼女の理解を超えるものだった。