時渡達の戦いがひと段落してどうしたら良いのかと幕間です。
それではどうぞ。
「あれでは戦いなんてものでは無いぞ。どうするのだ」
作戦会議の開始一番にドーナシークが問い詰めてくる。確かに彼の言う通り、あんなモンがホイホイと気安く使われたら俺達が攻撃できない。でも司令の話では亜光速にまで到達できるなら勝ち目はあると言ってたけど、んなモン無理。
「あの攻撃の対処はバラバラに動き回る。それしかねえな」
「私もそう思うな。あれでターゲットロックも出来るとなればデタラメが過ぎるだろう」
俺の言葉に彼も賛同する。だが現実は酷いぐらい熾烈なのだ。幹部と下っ端の差は天地以上に違うと。
……言えねえ。その気になれば視界に入る全てをロックオンだなんて。
「あのビックリ技がまだたくさんあるだなんて酷い話だわ」
「使う術式に基準みたいな物が有れば傾向として読めるんだけどね」
カラワーナの零す愚痴にトリーが相乗りする。そして何でアイツは俺を見る?
「な、なんだよ」
「あの幹部相手に勝てたら、お尻頂戴!」
「あのなぁ……」
「負けたら腹いせに、ぶっ挿す!」
「待ちやがれコラ!」
どっちでも挿すなんざ何の罰ゲームだよオイ!
「……第二試合とか言って、なかなか始まらないわね」
「先程の術式を恐れての二の足であろう。止む無い事ではあるな」
リアスの悶じりとした空気に対して隊長がその懸念事項を口にする。無理やり敵の間合いに放り込まれた相手がどうやって動くのかが注目すべき点だが、本人たちとしては気が気では無い事なのだ、先程のような無様だけは晒せないと策を巡らせるしかない。
「しかし、あの手を使われてはどう対処すれば良いのか」
「少なくても攻撃に動くのは得策ではない。小僧とて素早さには長けていてもあの一瞬を掴まれては動けまい?」
木場の不安に対して隊長は言いにくい事をズケズケと言い、選択肢を狭めていく。手っ取り早い攻略法は音速で動き、その際に生じる衝撃波で術式を吹き飛ばすぐらいだ。しかしそうなるとその際に生じてしまう音の壁の切り抜け方となるが、竜鎧があれば無視して突破できるだろうと思う。やった事ないけど。
あれこれと思案し続けている木場に対して司令が後ろから皿を差し出してきた。
「アレだコレだと悩んだところで始まらねえ。要は相手の視線からどう逃げおおせるかがカギなんだ」
「えっ?」
「要は相手が自分を認識できないように動く、それが出来るのかは別だけどな」
司令はそう言ってリアス達に持ってきた皿を手渡す。その上に乗せられていたのは見た目も鮮やかな料理の一部だった。それも手づかみで食べられるようにクラッカーサイズに纏められたものを。
「あら、ありがとう」
リアスが礼を言うと、皿を受け取ったのは朱乃だった。
「それで、この戦いは余興と呼ぶには少しばかり派手な気がするのだけれど?」
リアスはそう言ってから思わせぶりな視線を司令に向ける。すると彼はそれもそうだとばかりにあっさりと白状して見せる。
「ああ、あれはオシオキの最中だ。何しろやり過ぎたからな。他の連中に示しが付かねえ。カラワーナに関してはとばっちりな連帯責任だけどな」
司令は簡単な説明を交えながら答える。その間に何かに気づいたように視線を上に向けた後、イッセーとアーシアに話しかけた。
「おい、イッセーにアーシア、お前らに支給品を渡すぞ」
司令はそう言って上着の右ポケットからイッセーに、左ポケットからアーシアに、それぞれ丸い黒水晶、時渡達が持っているものと同様の物と書類のような紙を手渡す。
「えっと、これは?」
「そいつは紙に書いてある。絶対に無くすなよ? 無くせば国家予算規模の強盗が起きるかも知れないからな」
「そ、そんな大変なものを……」
「個人負担を減らす最大の技術の結晶だ。それにそいつが有るお陰で余計な手荷物を持たずに済む。使わない手は無いだろう」
声を震わせて怯えるアーシアに司令は重要な物だと説き伏せる。確かに封印球は個人装備はもとより私物の一切合切を収納できる優れものだ。お陰で俺の取りっぱなし無修正のビデオコレクションも極秘のままで狩られていない。ありがたやありがたや。