運命の合図の後カケカケはどうなったのか?
それではどうぞ。
俺達は、只今絶賛頭だけがズタボロで地面に転がってます。要約すると、開幕ブッ破の暇も無く唐突に、俺達があの幹部達の目の前に現れてそのままワンハンドでわしづかみにされて地面にねじ伏せられました。
俺が理解出来たのは吸い込まれるような風の動きを感じた後、問答無用に頭を掴まれて下に叩き付けられた挙句、頭が地面に埋まる音が耳に届いた事だけ。ちなみに体感時間でわずか1秒。
真面目に何が起きた?
「開幕直後の一斉砲撃など、浅知恵にも程があるというものを」
「へっ、悔しけりゃあもっとマシな手を考えるこったな」
目の前で静かに佇むバゼルザーク先輩とケタケタ嘲笑うリバーサル先輩に俺は何が起きたのかを理解した。実際にバゼルザーク先輩から緊急集合でやられた事が有るのを今思い出した。
今回の敗北はズバリ『ディスタンス・ゼロ』。バゼルザーク先輩の持つゼロの術式の一つ、距離消失によって間合いを完全に縮められて全力攻撃を浴びた様だ。まさかそんな大人げない攻撃で来るとは。
「こ、これがダークネスの……幹部の実力か……」
ドーナシークが顔をしかめながらも立ち上がろうと膝を立てる。だが以外にも頭を打ち付けられた痛手は抜ききれない様子で体が震えている。
「なんか、実力差がチョーヤバ過ぎるんだけどぉ?」
ミッテルトが問題点を指摘するが応える者はいない。だが、相手側から返答が着た。
「当たり前だ! こちとら日頃から下の連中が首をよこせと群がってくるんだ、返り討ちにしてやらねえと可哀想だろ」
と説明してくれるリバーサル先輩。この方ってば律儀なんだよな、見てくれに似合わず。彼の言う首というのは間違いなくシリアルナンバー入りのバッジ、幹部の座だ。そういう下剋上を隊長が是とした為に設立当初の1年間は陰でコソコソ戦闘中だったとか。
そしてその言葉で俺達はいつもの癖が出てしまった。
「ちょっと、奥様、聞きました?」
「まぁ、怖い」
俺とトリ―の夫婦漫才。もちろん先輩はこれにも応えてくれました。
「おっし、次の獲物はテメェら2人だ」
「……ちょっと、今、何が起きたの?」
採石場の外、会場に居るリアスが瞬きしながら今見た光景に我が目を疑っている。無理もない話、自分が攻めて距離を縮める事が道理だが、目の前で起きた何もせずに相手を目の前に引き寄せる方法は誰も知らないというもの。そして他の四人が出現場所を心得ていたかの如く、敵の頭を即座に掴んで地面にねじ伏せるなどどう出来るのか。
「見ての通り、奴らが一瞬で幹部の餌食になっただけの事、騒ぐでない」
「えっと、お父さん……普通の方にはさっぱり分からないと思うんだけど」
短絡的に説明する隊長に、思わず突っ込んでしまうポラリスが居た。しかしそれだけでも状況はある程度理解できてしまうもので、グレモリー眷属側の反応は一様に恐怖を感じていた。
「まさかあの距離を瞬時に詰める方法が有るだなんて」
「正直にビックリです」
木場と小猫は幹部の手腕に驚き、冷静に観察しようとしている。この戦いで得るものがあれば幸いだけど。
「あら、もう次が始るようですわよ」
朱乃はそう言って採石場を指差すと、その指の先では改めて戦闘態勢を整えた面々の姿があった。
一先ず言えるのはあのディスタンス・ゼロは暫くは撃てないとかの条件があるだろう術式のはずだ、という事。そうなれば間合い次第で十分な攻撃の機会があるはずだ。
そうでないと俺達が戦えない。
という事で第2回作戦会議だ。