さて、カケカケは地獄への道を引きずられて採石場へと行きつくわけですが、果たしてどうなるのか。
それではどうぞ。
イッセーとアーシアが呻いている頃、俺達は採石場へと放り込まれ、後から来た副司令によって防護結界が張られてしまった。コレデオレタチデラレナイ。
しかも採石場の奥には4人の人影が見える。言うのも酷いが新米竜戦騎3人と中堅前の竜戦騎2人対魔王クラスの実力者5人。勝ち目ください、持ってる勝ち目だけじゃ勝てないの。
「……などとほざきながら戦いには備えるであろうな」
「何故か見てきた様に言うのね」
隊長が修羅場前の俺達を推測していると横からリアスが呆れた口調を漏らす。
「それで2人は大丈夫なのかしら?」
「それは問題ない。過去に数人に施したが後遺症も何も無い。ただ幹部として必要な知識を与えただけの事だ」
隊長は彼女の心配を素知らぬ顔で事情を説明する。そもそもダークネスは凶悪犯罪者の集団であり一般人は少ない。だがそんな中で幹部を務めるとなればただならぬ実力が必要とされてしまう。犯罪国家ジャクラウス時代からの伝統と言っても過言ではない特別措置である。
敵が外にも中にも居るダークネス幹部ならではの、誰にも負けないと吼える牙。
「……ふぅ、何とか取れて来たみたいだ」
俺は隊長から受けたアイアンクローの痛みが消えたのを確認して一息つく。ただあの時、何かが見えた気がしたけど、それが何なのかは分からない。あの隊長の事だから何らかの意味ぐらいはあると思うけど。
とにかく相手が全力と言ってるんだからこっちも全力を整えなければ。
「全員、竜鎧を使え! 使わないと死ぬぞ!」
「お、おう……」
俺の放った忠告にドーナシーク達がしり込みする。だが命が掛かるとあっては逃げ様も無く、おとなしく竜鎧を装着した。だがそこに見た光景は、ミッテルト同様に色彩を帯びた竜鎧を纏うドーナシークとカラワーナの姿だった。いつの間にも何も、式典の話の後の準備期間があったからそこで最終調整をしたのは明白だろう。
ドーナシークは暗い灰色を基調とした硬質な外見で、竜の頭蓋骨は右肩に添えられている。カラワーナの方も右肩に竜の頭蓋骨があるものの全体的な色合いは透明感のある海青色だった。
そして俺も竜鎧を纏うために懐から竜血晶を取り出し、地面に叩き付けた。すると竜血晶が割れた所から猛烈に炎が噴き出し、俺を瞬時に飲み込む。そして全身の鎧が体から浮き上がる様に出てきた所で上に登っていた炎が渦を巻き、炎の竜と化すと俺に向かって横から襲い掛かってくる。それをそのまま迎えると、竜の頭が右肩に収まって肩アーマーとなる。そして顎の部分は左腕に収まって小盾となった。もちろん全身の基本色はダークレッドに黒の線だ。
トリーの方も俺とは違ってミッテルトのような装着シーンで前に竜の頭蓋骨が張り付いている状態だ。下顎は見事な盾として左腕を覆っている。
これで、こっちの戦闘準備は整った。不安しか無いのが心残りだけど。
「あとは開始の合図とともに竜撃砲の一斉掃射だ。やれるな?」
俺の声にみんながやってみせると答える。その声は覇気に満ちているのが心強い。
そして運命の合図がその場に響いた。
ズドーンという地響きと共に。