異世界支部の設立に着任式も終えた彼らに、これから何が始まるのでしょうか?
それではどうぞ。
挨拶を終えた司令が壇上から降りて舞台袖に消えると、そこでは補佐官が待っていた。
「お疲れ様です、司令」
司令はその声に「まぁな」と返すと目を細める。
「あの餓鬼どもにどこまで響いたか分からねえ。フォローに行かねえとマズそうだ」
「ダークネスの幹部達に任せても良いのではないですか?」
「ボケッ! アッチの幹部連中は軒並み余興に行くんだ、イッセーとアーシアのフォローはどうすんだ? 肝心の副司令は余興で使う結界の方に全力をむけるとかほざいてるしよぉ。頼りのバゼルザークとマクレノリスはどっちも余興に行きやがるし」
「隊長とポーラちゃんに任せて大丈夫ですよ」
司令の心配事に対して助っ人として2人に任せようと補佐官が提言する。確かに面倒見の良い2人なら問題は無いだろう。だがダークネス幹部のバゼルザークとマクレノリスの方が元詐欺師だけに得意分野なのだからどうにもやりきれない。
舞台から降りた司令を確認した副司令が次の式次第へと移る事を口にした。
「それではこれより、会食及び余興を始めさせていただきたいと思います」
会食? 余興?
俺は副司令の言葉に首を傾げていると、後ろから俺の腕を引っ張る誰かの腕を感じた。力こぶが2つ、いや3つも感じるだと!?
「おっし、行くぜぃ」
振り返った先に見えた顔はジャベリン先輩だった。力こぶで知れた上腕二頭筋と肘の近くにある太い前腕の筋肉と、まさかの大胸筋が俺を包んで離さねえ。
これが筋肉の三角地帯(マッスル・トライアングル)かよ! 全然動かねえぞ! しかもおっぱいがある筈なのに硬くて動けやしねえ!
「手加減も要らねえってのは大盤振舞だよなぁ?」
「なんですと!?」
余興がある事しか隊長から聞いてねえよ!
俺はジャベリン先輩が嬉々として吐いたセリフを聞き、逃げないと死ぬと察知してジタバタもがいた。
「微笑ましい光景じゃない」
「仲が良くてうらやましいですわ」
リアスに朱乃! ボケてないで助けろ!
俺が目配せでリアス達に助けを求めたら、小猫が冷静な目で親指を下に向けてきた、『地獄に落ちろ』と。
「てめぇ! 俺に恨みでもあんのかよ!」
「……恨みしかありません」
「俺がどんだけ菓子を持って行ってやったと思ってんだ!」
「ハムスターの着ぐるみが台無しにしました」
「ウサちゃんの着ぐるみの方が良かったのか!」
ビュンッ!
俺の言葉を合図代わりにパイプ椅子が俺に投げ込まれた。動けねえから取れねえ、と思ってたらジャベリン先輩が片手で受け止めてしまった。
「あぶねえな。こっちが先約なんだぜ? まけとけよな」
「……恨みはこっちが先約です」
「ソイツも込みでヤッてやっからよぉ」
「……お願いします」
「『お願いします』じゃねえよ!」
小猫は相手の言葉を理解して頭を下げる。そんな彼女に俺は怒鳴りつけた。
一瞬で手のひら返しやがって! マジでボコされちまうじゃねえかよ、俺が!
そして俺は首を締め上げられたまま地獄への道を拉致られていく。