ダークネスの先輩幹部が現れて時渡達はどうなる事やら。
それではどうぞ。
「ガキ共はキッチリ拉致ってきやがったかぁ!」
「何言ってんすかリバーサル先輩!」
俺は角刈り頭の口の悪いダークネス幹部の一人とにらみ合いを始める。ちなみにこの先輩は元司法庁所属の賞金稼ぎで『奈落の包丁職人』と聞けば犯罪者は誰もが震えあがる捕獲達成率の高い男だった。
隊長の熱弁に絆されて道を踏み外したというと聞こえが良さそうなモンだけど、賞金稼ぎが賞金首になったのは笑えない話だ。
そんな睨み合いの俺達をやんわりとバゼルザーク先輩が止めに来た。
「リバーサル、悪いがその程度に。今回の主役を最初からボロボロにしては式典に支障が出る」
「アアンッ!? いや、そうだったぜ、俺が悪かったよ」
「聞いてくれて何よりだ」
彼はそう言ってリバーサルを制止すると俺に向かって不穏な一言を放ってきた。かくいうこの男も隊長の熱弁によって道を外し、ある国の防衛大臣という椅子を蹴り飛ばして隊長の右腕に収まった男なのだ。犯罪国家ジャクラウスの元宰相、『冷酷の衝撃』の貫禄はいまだに健在で。
「後ほどの余興、楽しみにさせて貰うぞ? 事務仕事で鈍っている者達が居るのでね」
……やる気、いや殺る気満々でやんの。
俺が呆れている所に、今度は筋肉女があの3人組を見据えていた。
「……ちったぁ、やりそうな腕っぷしだねぇ、期待はさせてもらうよ。アタイの名はジャベリン・トマホークってんだ」
「お手やらかに頼む」
筋肉女性、ジャベリンと3人組の代表としてドーナ・シークが握手を交わす。その時、革ジャンの皮がこすれるような音が聞こえてきた。見れば二人の顔には凄みの利いた笑みが浮かんでいる。この女は俺達3人が幹部入りするまでは幹部の末席に甘んじていた女傭兵で、ツルハシを武器に渡り歩いた戦場は数知れずという異色の戦闘スタイルの持ち主である。なお、戦場では自軍をことごとく勝利に導いた事より『破滅の道標』と呼ばれて恐れられている。
「良いねえ、この手ごたえ、簡単にはくたばんねえよな?」
「これほどの筋力か、出来るだけ歯向かって見せようでは無いか」
あちらは仲がよろしいようで。同じ仲が良いでもあっちとは大違いだ。
俺の視線の先には今しがた来たのだろうポーラさんとアーシアが再会を喜び合ってはしゃぐ姿があった。
「お久しぶりですぅ~っ」
「お久しぶりです、アーシアさん。お元気そうで何よりです」
「はい、今日はよろしくお願いしますね」
「はい、こちらこそ」
ウンウン、アーシアとポーラさんのツーショットは絵になるねえ。両手を握り合っちゃって飛び跳ねそうな勢いだ。こうしてみてると姉妹の様にしか見えなくなるんだよな、同じ金髪同士だから。
ここにきて俺は足りない幹部の姿が見たくなり、バゼルザーク先輩に話しかけた。ダークネスの全幹部を把握しているのはこの先輩だけだから。
「バゼルザーク先輩、あの、残りの1人はどこに居るんすか?」
「ザクトベリガなら会場設置のスタッフとともに設営に従事している。隊長が指揮を執っているから逃げ様も無いだろう」
彼からの返答を聞いて俺はすぐに理解した。また悪乗りをやらかしたんだ、と。ダークネス幹部で悪ふざけをする奴となるとなぜかザクトベリガただ1人となる。何しろ性格が司令にそっくりなんだこれが。唯一の救いがスケベ根性に走らない所ぐらいで。
「じゃあ、先輩たちが来たって事は」
「そろそろ会場入りしても構わないだろうと呼びに来た」