ようやくカケカケもそれなりに評価される時が来ました。もちろん副司令の治療も進行中です。
それではどうぞ。
俺は今も治療中のミッテルトとその施術士副司令を放置することにした。そして俺は一先ず預かっていた車にキーを隊長に返す事にした。
「隊長、車のカギです」
「うむ、奴等を送ってきたようだな」
俺の手からカギを受け取りながら隊長が頷く。
「さて時渡よ、此度の任務、中断となったが良く果たした。異世界と言う過酷な調査任務を果たした功績を認め、正式に渡しておこう。受け取るが良い」
隊長はイッセー達の時の様に真剣な眼差しを俺に向けながら懐からバッジを取り出し、俺に差し出してきた。そのバッジに刻まれているシリアルナンバー0009、現在最下位の幹部になるが間違いなくダークネスの幹部の証だった。
「正式には後日の式典を待つ事になるが、構わんな?」
「あ、ありがとうございます」
一度は消えた憧れのダークネスの幹部、手にしたバッジが重く感じる。受け取る手が震えてしょうがない。
犯罪者連中にとって隊長の息が掛かっていると判る幹部の座は一種のステータスとして知られている。簡単に言えば一目置かれる存在になったことを意味するのだ。何しろ隊長は生きた伝説、数少ない重犯罪者だ、敵に回すなど危険すぎて生きていけなくなる。また幹部さえも揃いも揃って危険人物扱いされている。男の幹部の一人は片手間で百人を殴り殺した、他の幹部も国家転覆を何回も繰り広げた知能犯だという。犯罪歴一つとってもその危険性が窺い知れるというヤバい連中だ。しかしそれが犯罪者連中に一目置かれている理由であり、身の安全と尊敬されることが大っぴらに保障される事になる。
だが、隊長は感激している俺の間隙を縫って不意打ちを入れてきた。
「式典ののちに歓迎会と称した余興の場を設けた。余程の事が無ければ幹部全員が首を揃える故に、楽しみにせよ」
「……へっ?」
隊長の言葉に俺は思わず固まってしまう。脳裏をよぎるダークネスでの日々、あのキラウェアばりの活火山へのふざけた軽装ハイキング、新鮮なマグロを求めて海賊船の縄張りへと手漕ぎボートで遠洋漁業。対聖属性の獲得のためにとあの『子供用』のビニールプールに聖油(点火付きで)を満たしてはその中に突き落とされたり。全部幹部連中の仕業だ、生きてることが素晴らしいと実感させられた出来事の数々だ。人間では死亡確定だから真似をしてはいけない。
ポーラさんが幹部入りするまで続いていたからポーラさんが神に見えるんだよ。彼女が居なかったら今も続いていただろうなと。あの幹部連中を抑えられるポーラさんも凄いモンだと思うんだけど。
い、いや良い方向に考えるんだ。憧れた幹部入り、しかも支部長になった上にトリーとは別行動、ケツを心配しないで済む安心の日常、代えがたい幸せな日々じゃねえか!ライフリ……じゃなくてライフフリーなんだぁ!
「それと時渡、司令からの伝言だ。『イッセーの奴が意外とマズイ、メンタルケアを頼む』と言っておった。注意せよ。奴はアレでも組織の司令だ、バカには出来ん」
……やっぱり、司令でも解っちまうか。
画面越しの司令が放ったという指示に俺は思わず右目を細める。しかし副司令が指摘しねえってのは……。
『良いではないか、良いではないか』
「あ~れぇ~」
こっちで忙しいからか、ってお前らナニやってるんだよ!