一方的な副司令に対してリアスが逆襲できる目はあるか、気になる所ですね。
それではどうぞ。
ひどい口を叩かれた俺を他所に副司令は話をまとめ始める。
「とりあえずの所は以上か。ひとまず明日にでも細かい話が出来る様にこちらでも詰めていく。イッセーとアーシア、それとドーナシークにカラワーナとミッテルトは待機任務に入ってもらう。時渡も待機任務にて連絡待ち。隊長とポラリス、補佐官とトリーの4名は今日明日中に本部に帰還するように」
「ちょっと待ちなさい!」
副司令が話をまとめた所でリアスが声を荒げる。それを見た彼はやれやれとばかりに彼女に視線を向けた。
「んっ? ……ああ、そうか。君に話すべき事が有ったか」
「そうよ! この私を……」
今更思い出したかのように呟く副司令に対してリアスは眉根を寄せながら忌々し気に言葉を吐き出すのだが、それを彼に止められてしまった。
「我々と対話が出来るだけの権限を持っているのか? もしそうなら所属機関と役職名を述べてもらいたい。まさかそこら辺の小娘が海外を越えて異世界の代表権限を貸与されている我々と対話が出来るとでも思っていたのか?」
「えっ?」
「もし仮に貴族様とかいう肩書を持ちだされても、国際法で許されているかどうかすら怪しいので遠慮願いたい」
副司令は呆気に取られている彼女に対して有無を言わせぬままに言いたい放題を並べていく。
「なら……」
「イッセーとアーシア達の件なら現地に居るスカウト権限を持つ隊長や時渡が勧誘し、2人はそれを受けた。自分はそれを組織の責任者として最終確認しただけに過ぎない。グレーゾーンの範疇だな」
副司令は彼女の反論を即座に見抜き、そのまま言葉でねじ伏せる。現地人の雇用などよくある話だ。会社としても企業としても多くの人材を派遣するよりは少数を派遣して現地人を雇用する方が会社を大きくしやすい。人材育成が課題になるがその辺りは同時進行で進めるだけなのだから。
そんな副司令のあんまりな台詞にリアスが膝を着く。言い負かされるとは思ってなかったのだろう、不憫な。ほんのちょっと考えれば詐欺の手口と分かる話だが小娘程度ではまだまだか。隊長と副司令は胡散臭そうな目で副司令を見ているぐらいだからな。
「話はそれで以上か? そろそろ小娘どもを家に帰さねば明日に障るやもしれん。時渡にトリー、素奴等をワシの車で送ってこい」
「了解です」
完全に話し合いが終わったと見て隊長が俺達を名指しで命令する。俺は特に反対する理由が無いので素直に受け取る。
何か忘れてる気がしないでもないんだけどな?
この俺時渡が隊長のボンネットバスを転がしてリアス達を送り出したところで司令と副司令、補佐官にポーラさんにあの三羽烏による裏の会議が始まった。
「それで隊長、テメェの口から報告が聞きてぇ」
「司令に話すほどでもあるまい。次元衛星で盗み見ておったの知れておる」
司令の問いかけに隊長が彼を一瞥し、憎まれ口を叩く。この抗論自体は初期からのもので未だに続いている。
「現場の生の声ってのは大事だと思うぜ?」
そういえば、いつの間に指令は復活したのだろうか。その場に居ないから答えは聞けない。
「敢えて言うのであれば、廃教会でガラクタを見た。それが全てだが?」
彼の言葉に副司令は頷き問題が何なのかを理解した様子を見せる。こう言うのもなんだが、この現代では敬虔な信徒による神秘の体現というものが厳しくなっている。その理由は杳として知れないのだが。彼らは理解している様に見える。司令は彼の言葉を聞いて溜息を吐くとその目を細めて彼を睨みつける。
「……そうか、そいつは参ったな。こっちのヤツでそこのフォローが利けば手土産になるかもしれねぇが、そうも行かねえだろ」
「次元が異なればシステムの形も異なるだろうし、問題はソフトやサードパーティが流用可能かどうかだ。こればかりはどうにかしてやれればとは思っているが」
副司令はシステムという何かに対して何らかの懸念を口にする。プログラム言語については人間界限定だが互換は効く。だが悪魔の居る世界や天使の居る世界に関しては調査が手付かずのままだ。
だがこの時点で彼らが重大な事を背景に議論しているのを知る者はドーナシーク達3人の中には居なかった。
(小説のメモ帳)
異世界間外交特権、この権限を貸与されて初めて外交使節官として活動できるようになる権限。組織は幹部連中全員がその権限を受けているし、貸与しているお方もただならぬ方々である。自分たちの世界を貶める事をすればいかに些細な事でも即座に死罪と断ぜられるという怖い権限でもある。