カケカケ達男性陣が風呂から戻って何をしでかすのか。
ろくでもない事ですが、それではどうぞ。
「ふぃ~いっ、上がったぜ~っ」
リビングに戻った俺はそう言ってどっかりとソファに腰を下ろす。入浴シーンはどこだって? 男の入浴シーンに何を求めてる?
「……あの風呂のデカさは何なんだよ」
「イッセー君、もう色々と諦めようよ」
あの風呂場の広さに呆れながら突っ込もうとするイッセーを木場が諦めさせる。まぁ、一戸建ての家の中で銭湯なみの広い風呂場を見たら誰でも卒倒するよな。壁に富士山を描いてるし、洗面器は銭湯御用達のあの黄色い洗面器だ。
ただし手は抜かない。風呂の椅子に足拭きマットまで例の黄色いヤツで統一だ。石鹸箱まで欠かしはしない。惜しむらくはシャンプーボトルが例のヤツで揃えられなかった事だ。本部にも問い合わせたが製造元が製造していないとの返答だった。
本部に作れと言ったら説教2時間コースを食らった。もちろん製作自体却下で。
そこまで思い出した俺は、ふと自分の片手落ちに気づき、思わず膝をついてしまった。
「くうぅーっ!」
「えっ!? な、何っ?」
「……コーヒー牛乳……」
崩れ落ちた俺に周囲が戸惑う中、俺は気付いてしまった。周りの喧騒に気づかなくなるぐらいの失態に。そう、風呂上がりのコーヒー牛乳、それもビン牛乳を忘れていたという失態に。
風呂上がりの火照った体が求める水分に、良く冷えたコーヒー牛乳を流し込むことで得られるあの冷たいのど越し、腰に手を当てて胸を張って呷る事で感じる確かな爽快感。
これぞ湯上り! なのに!
「……そこの馬鹿者に構うで無いぞ」
隊長の冷たい一言で俺は終わった。
「それじゃあ、行ってくるわね」
リビングで俺達が出るのを待っていたトリーが腰を上げて風呂場へと向かう。
それを見た隊長が俺と補佐官に目配せをしてきた。俺はそれに頷いたが、補佐官が少し迷う様に視線を泳がせている。
「どうしたのだ?」
「……あの子達の事はどうするの? 協力者と言っても組織の外の子達なのでしょう?」
不思議がる隊長に対して補佐官は腕組みをする様に頬杖を突きながら答える。確かに通信関係を現地の者達に見せて良いのかという話か。確かに考えてしまう話だよな。拠点に入れたとしてもそこまでの譲歩をして良いのかと。
「構わん。ここに入れた事自体が特例なのだ。どうすれば入れるというのだ?」
「そ、そうだったわね」
隊長の返答に対して補佐官は失念していたと漏らす。俺には何がそうなのかが良く分からない。まあ、俺に解かるのはリアス達は関係者であっても部外者だという事だな。
「そこまで気になるのならば聞くのも良かろう」
隊長はそう言って親指でモニターを指差す。誰に訊くのかは言わずとも知れたものだけど。
オカ研連中はミッテルトが出したジュースで一息ついている。風呂上がりの水分補給は大事という事で補佐官の指示で出していたらしい。自重してもらえて嬉しいです。
ふと気づくと隊長の視線が俺に向いてた。
「時渡、奴等に組織の事をどこまで聞かせたのだ?」
「あ、はい、知られても障りないだろう表層部分だけですが。実力関係はすべて濁してます」
俺が隊長の質問に対して無難な返答をすると相手は肩を下ろす。もっともどんな事を言ってもデタラメ過ぎて信じてもらえなかったという話なんだけど。
「であろうな。そこの小娘が余計な事をせなんだら、問題とならぬものを」
隊長の視線は間違いなくミッテルトを睨んでいる。何でも『やらかした』らしい事は教えてくれたんだけど、詳細は聞けてない。おそらく最終調整の後で何かをしでかしたとしか考えられない。何しろ最終調整を終えない限り竜戦騎の本来の実力が出せないし実力を支えられるほどの強度も無い。竜鎧を維持するために竜気を結構持っていかれるためにスタミナ切れも早い。ないない尽くしで戦えないのだ。
なのに最終調整が終わるとすぐに戦えるのが俺には解せない。