今回はようやく出番(?)の来たカラワーナとドーナ・シークの2人ですが、台詞がありません。
ここでもまだ笑いの風が吹くカケカケ達ですが温かい目で見てやってください。
それではどうぞ。
一先ずオカ研の女性陣とポーラさんをミッテルトの案内でお風呂場へと押し込んだ俺は次にイッセーと木場、トリーと隊長を連れてリビングへと移動した
移動したリビングには屍と化したドーナシークとカラワーナが、ソファに座ってお茶を飲んでいる補佐官の姿があった。
「あら、皆さん、お帰りなさい」
愕然としている俺達に気づいたのか、にこやかに笑みを浮かべながら終えR達に顔を向けてくる。床に倒れている二人を無視して。
「え、えっと、2人は……?」
「大丈夫です。先程治癒魔法で完全回復しましたので」
「気絶してるのはどういう事っすか?」
「こっちの言う事を聞かずに出動しようとしていたので、お仕置きしました。大丈夫ですよ、神気過多で倒れているだけですから」
状況が把握できない俺に補佐官は平然とした顔で事の次第を口にする。まあ、簡単に言って強い気に当てられて気絶したって所だそうだ。幸いというか何と言うか、堕天使だから神聖な力を突き付けられても命に別条はない。めまいや立ち眩みの同類版が彼らに起きたわけだ。
周囲に目を向けると、イッセーと木場の顔色が少し悪い。残留神気に当てられたか?
「とりあえずもう少し中和してください。こっちの2人がキツイみたいなんで」
俺がそう言って処理を頼むと、補佐官はすぐに右手を振って室内の気を魔素寄りに切り替える。この辺りの調整は凄いのに、料理の調整はてんでダメなのが不思議だ。
「んおっ、何か楽になった?」
「変だね、さっきまで辛かったのに」
身体が急に楽になったことに対して不思議がる2人にたいして補佐官が謝罪の言葉を傾けた。
「ごめんなさいね。足元の二人が無理やりに出動するって言ってきかなかったから神気を使って止めてたのだけれど」
気分が楽になったのか妙に不思議がる2人に対して補佐官が謝罪の言葉を口にする。元凶なんで一言言いたいが、お偉いさんなので言わずに置いている。
「とりあえず、お茶を飲んで一息ついてくださいね」
「あ、はい。ありがとうございます」
補佐官がスッと急須からお茶らしい緑色のお湯を湯飲みに注いでは2人に差し出す。イッセーと木場はそれを受け取ろうと手を伸ばしながら礼を口にした。
イッセーのその言葉で俺はふとした事に気づき、慌てて二人を制止した。俺の鼻が微かな香りを嗅ぎつけたせいもあるのかも知れないが。
「待てお前ら!」
「えっ? 何すか?」
「えっと?」
疑問符を飛ばしながらも俺の言う通りに湯呑を取る手を止めた。戸惑いを露にしている時点でコイツ等、忘れてやがるあの時の惨劇を。
「いつぞやの、部室の大根」
「「!?」」
俺の言葉に二人が言葉を失い、顔色を悪くしていく。その様はまるで試験前のイッセーそのまんまだろう。それを見て補佐官が何に気づいたのか、ニッコリと笑みを浮かべながら俺に問いかけてきた。
「それは、どの様な意味なのでしょうか? 時渡さん、お訊きしても?」
「い、いや、何て言うかかんていうか」
ヤベェ! ロンギヌスの槍がこっちを向いてやがる!
俺がしどろもどろになって言い訳を始めようとしたが巧い言い訳なんざ思いつかねえ。言い訳のアイデアどころか頭から出てくるのは冷や汗だけだ。
だが背後から救いの拳が俺の後頭部に叩きこまれた。
「何をしておるのだ、貴様等は」
その声に振り向くと、隊長が仏頂面で立っていた。その貌には普段のような雰囲気があからさまに漂っているが、分かる奴には解かる。背後霊のごとく浮かび上がっている半透明の仁王像二体が。
「下らん話は他所でやれ。取るに足らん話は語るで無い」
隊長はそう言ってからテーブルに着き、おもむろに目の前の湯呑を……って、まさか!
俺が目を剥いて驚いている間に隊長は手にした湯呑の中身を一口で飲み干してしまった。露骨にあっためてはいけない香りを放つ爽快系の緑茶を。
「……うむ、これはそう悪いものは無いが温めて飲む物の類ではないな。次からは氷を入れて冷やす事を勧めておくぞ?」
……最強を語る男は胃袋までも最強らしい。