ようやく後始末へと動けるようになったカケカケ達ですが、前途は多難だと言っておきます。
伏線は回収するものだと誰かが言っていた。そして新たな伏線を張る事を忘れてはならないと。
「……あの、どうしてここに皆さんが居るのですか?」
アーシアは今の状況が把握できていないのか理解しようと口を開く。それに対してイッセーがその目に涙を浮かべながら抱きつきその腕の中に抱きしめる。その後ろでは肩の力が抜けたような表情でグレモリー眷属が集まっていく。
そうか、とりあえずでも終わったんだな。
……そう思っていた時期が俺にありました。
「ではこうなった顛末とやらを、始末書に書いて提出してもらおうか? 時渡よ」
ほえ?
「貴様は確かイッセー達の護衛という任務を受けて学園とかいう施設に向かった、と聞いておるのだが?」
……あっ。
「そしてそこの娘が死んでおった事の申し開きも聞かねばならんと見えるが?」
……おうっ、隊長から唐突に三段論法ならぬ三段蹴りが来やがった。しかも逃げ場なんてありゃしねえ!
内心でオタオタしている俺に対して隊長が不意に態度を変えた。
「だが、貴様はダークネス所属ではないからな、追及は他の奴らに任せるとしよう。さし当ってはあの者共の事だが」
「現状やむなしと判断して拠点にて身なりを整えさせます」
思いがけない変化球に戸惑いながらも俺がそう言うと、リアスから提案の声が上がった。
「それなら学園に拠ってちょうだい。部室に制服の予備があるわ」
「ならばそうしよう」
彼女の言葉に頷いた隊長は何を考えたのか懐からペンダント加工をされた封印球を取り出し、その中から黒コートを取り出してはイッセーに投げ渡した。
「その娘に掛けてやれ」
「あっ、はい、ありがとうございます」
イッセーは彼から受け取っては素直にそれをアーシアにかけてやる。そういえば彼女が落ち着くにはもう少し暖かい格好の方が良かったのかな、と俺がそれに気づいた時、小脇から何か突かれてる感触が来た。
振り返った俺が見たのはいつだかの衣装とそれを作った張本人のトリーの姿だった。その手にある衣装の色はライトブラウンと白のツートンカラー。
俺はその衣装の持ち主に視線を向けると、胸元を押さえて俯いている小猫の姿があった。
「これは、少し……」
「塔城、こいつを着とけ」
俺は困っている小猫に対して持っていた衣装を投げ渡した。
あのハムスターの着ぐるみを。
「あっ、ひゃひゃひゃひゃはひはひはっ!」
俺は生涯、いや絶対に忘れる事が出来ないだろう物を見た。小猫の口が三角になり目が半目になったのを、ブツを受け取るその手がわなわなと震えるその様を!
そして小猫の目が次の瞬間には殺意を漲らせ、ブツを放り捨てて俺に拳を振り上げたのを!
「ぎぃやぁああああああーっ!」
「天罰です」
「あっ、そういえばこれってどうやって脱ぐのさ」
完全に放置されていたミッテルトが、自分の鎧を指差しながら俺達に問いかける。俺はそれを聞いてサクッと答えた。
「竜気を止めれば剥がれて消えるぞ」
「んな馬鹿な!」
疑問に答える俺に疑惑の目を向ける彼女だが、同じ竜戦騎の言葉を疑う余地などあるわけが無い。
俺の言葉に納得できたのかどうか疑わしいが、ミッテルトは眉を顰めながらも竜気を止めようと意識を集中させる。すると新緑のような色彩を放っていた彼女の鎧が透明になりながらポロポロと零れていく様に剥がれ落ちて行く。
そして剥がれ落ちた鎧は床にぶつかった衝撃で粉砕され跡形も無くなってしまった。