ようやくレイナーレ編のめどが立ったのに隊長さんは爆弾を仕掛けてくれます。カケカケ、お前の明日はどっちに行くんだ?
それではお楽しみください。
「それで後はそこの痴れ者の始末か」
隊長はそう言って無様に転がされているレイナーレに視線を向ける。彼女の格好はここに戻って来た時のまま、あの縛り方で縛られては転がされている。しかも動くとマズいのか身動き一つとれない有様で。
そんな彼女の前にリアスが近づく、顔をそむけたままで。直視できねえかぁ、恥ずかしくて。
「ごきげんよう、レイナーレ」
「あ、アンタ……グレモリー家の」
「そんな事はどうでも良いわ。良くも私の可愛い下僕に酷い事をしてくれたわね。その罪を償う気はあるのかしら?」
憤怒をにじませながらも気丈に相手を見下ろしている彼女に、レイナーレは自分の逃げ道を探して視線を巡らせる。悪党は誰でもああいう事をするらしい、一部の胆の座った連中を除いて。
そこでレイナーレと俺の視線が交差した。
「ねっ、ねぇっ、アンタの組織ってば命を大事にしてるんじゃないの?」
レイナーレが縋る様に俺に向かって言葉を捲し立てる。どうやらゾルあたりから組織の事を聞いていたのかも知れないが、その場での問いかけに対して口を開いたのは隊長だった。無論、隊長は悪の生き様に美学を求める求道者だから当然の反応を示した。
「時渡、このような者を子飼いにしておったのか? 貴様が子飼いにしておるヒヨコ共が泣いておるぞ?」
……そいつとあの三羽烏を同列にしないでやってくださいよ、隊長。アイツってば泣いてるんじゃねえ?
「隊長、そんな風に言っちゃダメですよ」
おお、そうだポーラさん! もっと言ってやってくれ! ポーラさんのその台詞に俺ってば泣いちまいそうだぜ。
「時渡さんが女の人に対して乱暴な事をしてさらに子飼いにするようなロクデナシの変態……じゃないですよね?」
……世界中の俺、大号泣。
俺では埒が明かないと判ったのかレイナーレは次へと視線を移す。その視線の先に捉えたのは、疲弊しきっているイッセーだった。
マズい! 今のイッセーにレイナーレは……、
ブウゥーッ!!
……目の毒だった。誰もあの縄を解いてないから胸なんかパッツンパッツンの、腰なんかくびれくびれのムチンムチンボディだもんな。思春期ど真ん中の奴にはたまんねえか?
「イッ、イッセー!」
グレモリー眷属の面々が心配そうに声を掛けるがその中にリアスの声は無く、またレイナーレの声も無かった。ミッテルトを含む俺達の方はいざという時のために待機してる。
「い、イッセー君、あの時の言葉はそんなつもりは無かったのよ! それにあなたの事が好きなのよ!」
先程とはうって変わって少女らしい声音で彼に訴えかける彼女だが、彼のその耳には届くどころかその声を聞かない様に顔をしかめていた。
……鼻血をボタボタと垂らしながら。
そして口元を押さえながらイッセーが彼女に背を向けると、ボソリと一言を漏らした、「部長、もう限界です。頼みます」とだけ。
その言葉で処理を請われたリアスはその手に魔力を集め始める。それを見たレイナーレは必死の形相でその場を逃げ出そうともがく。しかしその縛られた体は歩行に適さないその上で転がる事さえも無謀だった。
「ぐっ、この……」
何とかしようとしているレイナーレに対して彼女の為に俺達組織の連中は腕を伸ばして応援してやる。どうせやる事なんてみんな同じだ。
……親指を下に向けた拳を突き出して。