やっと形に出来たので投稿です。
それではどうぞ。
地下を抜け出し、再び礼拝堂へと戻ったイッセーは、すぐに適当な長椅子にアーシアを下ろし、そこに寝かせた。
「…アーシア」
ポツリと呟くイッセーの声に答える声は何もなく、静寂な空気が辺りを漂う。
そんな所に赤く輝く魔法陣が浮かび上がる。その輝きを尻目に捉えた彼はその場で振り返った。
「……フッ、無様ね」
魔方陣を介してその場に現れたレイナーレは、その場で硬直してしまった彼を鼻であざ笑う。フッと出る嘲笑に対して彼が出したのは声ではなく、
「ブウゥーッ!」
鼻血だった。
いや、今の彼女は肘までの黒いロンググローブに黒のロングブーツ、と傍から見て誰もが我が目を疑うハレンチファッションである。彼が鼻血を吹かなかったらこのどんな展開にもつれ込むのだろうかと凝視してしまうほどに。
イッセーが吹いたのを見て異変に気付いたのかレイナーレは首を傾げ、視線を真下へとおろした。
……カアアァァァーッ!
今の彼女は彼が吹くほどに魅惑的でその場に居る誰よりも身軽で、装備に不安しか感じられない姿だ。若々しい青少年には未知の世界で、スケベ男にはたまらない暴力だろう。
そんな光景を、目の当たりにする者達が2人以外に居る。あの10の目である。
「あの小娘は何なのだ? 気が知れんな」
「隊長、他所で何かあったんじゃないかと」
「そーっすね、レイナーレがあんな馬鹿なカッコ、するわけねえし」
「堕天使ってまともな奴はいないのかしら?」
「あらあら」
礼拝堂入り口で言いたい放題、軽蔑し放題であった。
しかしそれでも現場は動く。
イッセーは衝撃から立ち直り、レイナーレに顔を向けようとするが直視できないでいる。彼女の方も羞恥ゆえの赤面状態のままコソコソと例の服を着こむ。
「レッ、レイナーレ! アーシアの魂を返せ!」
イッセーはアーシアが生き返るために必要となる魂、彼女のセイクリッド・ギアを求めて叫ぶ。しかし相手はそれをあざ笑った。
「アッハハハッ! コレを返すわけ無いでしょ? あのお方に認められるために必要なものなんだからさぁ!」
イッセーは放った要求を一笑に付され愕然とする。彼はそれに逆上し、殴りかかろうと走り出すがそれを彼女がとっさに出した光の槍を彼の足に打ち込むことで抑え込んでしまった。
そして彼女は目に留まった彼の左腕の小手をみて笑い出した。
「何よそれ! どんな神器かと思えばそれって『トワイス・クリティカル』じゃない! 危険なものだと言われて警戒してたのがバカみたいじゃない!」
レイナーレの嘲笑に混じって聞こえた『トワイス・クリティカル』という単語に隊長とポーラが疑問符を浮かべる。
「「『トワイス・クリティカル?』」」
「神器の一つで威力を倍加させるだけの下級神器の事よ。でもあれって……」
2人の疑問符に答える形で呟いたリアスだったが、その顔には腑に落ちない別のものが見えているようだった。
彼女の嘲笑にイッセーは力無く顔を伏せてしまう。しかしその口元では何かを呟いているようだった。
「神様……悪魔だからこの場合は魔王様か、一発で良いからこいつをぶん殴らせてください!」
「小僧! 貴様に意地があるのならグダグダ言わずに殴り飛ばすが良い!」
イッセーの呟きを耳にしたのか隊長は怒号を放つ。いかに弱者と言えど意地を燃え立たせる者がその口で弱音を吐くのが彼には許しがたい事のようだ。その後ろでは止めようとするリアス達をポーラがその手で押しとめている。
その言葉にレイナーレは目を細め、苛立ちを顔に表す。
「なんですってぇ?」
「獲るに足らん愚物だろうが、貴様の慰めにはなるやも知れんぞ?」
隊長はそれだけを言うと不敵な笑みをその顔に浮かべる。その貌は初老の男が浮かべるものには見えず、悪代官の雰囲気さえ漂って見える。
「そこにおらぬ奴に頼るより、己の意地が吠えるままに拳をねじ込む事だ! 己の意地を見せつけてみせい!」
「おおうっ!」