ようやく形になったので投稿です。
カケカケ、やっぱりお前はお前だったんだな。Σ( ̄ロ ̄lll)
それではどうぞm(__)m
SIDE時渡
「おいっ! 魔方陣はまだ解除できねえのかよ」
「無理よ! 実働してて止められないのよ」
苛立つ俺に対してトリーが観念しろと言いたげに愚痴を漏らす。
俺達の方はというと、上の魔法陣について停止は成功したが、切り離しにまでは至っていない。先に下の魔法陣を停止しないと下の魔法陣からの切り離しが出来ない事が分かったからだ。魔法陣の解析には面倒だが魔力の波形パターンから公式を組み上げ、そこから解析に移行している。魔方陣に使用されている言語が分からない限りこの方法が実績もある分確実だが。
俺の耳に、入り口の方から明らかに戦闘状態に入ったことを伝える騒乱が響き渡る。そっとに視線を向けると木場と小猫の2人でイッセーのための道を作り出しているところだった。小猫は相変わらずの拳や蹴り、木場はいつの間にか剣を手に信者たちと火花を散らせる。
「兵頭君、僕たちにかまわずアーシアさんを!」
木場がイッセーを先に行かせようと道をこじ開ける。見ると反対側は小猫がこじ開けていた。
「すまねえっ!」
イッセーはそう言って2人の間を走り、階段を駆け上る。しかしその足取りがやけに遅く感じられる。レイナーレの方は儀式も終わりの頃だと言いたげに満面の笑みを浮かべる。
「テメェ! アーシアに何をした!」
イッセーが祭壇上のレイナーレに向かって怒鳴りつける。だがそのニヤケ面を崩す事なく彼女は語り出した。
「あら、今頃来たの? でも、もう手遅れよ」
レイナーレがイッセーの姿をその目に捉えるが動じた様子は無い。むしろこれから何かが始まるのだと言わんばかりの余裕さえ見せている。その言葉に動揺が隠せずに焦るイッセー。しかしその焦りはこちらも同様だった。
文字どころか公式の配置さえも見た事ない物なのかトリーの額に汗がじっとりとにじみ、頬を伝ってその滴を落とす。マズい展開だ。このままだとレイナーレの思うがままに進んでしまう。
俺がそう思ったその瞬間、十字架に変化が現れ、下の方からなぞるように光の線が走り出す。そして俺達がその光に愕然としている中、アーシアの胸の辺りから何やら緑色に光る光の玉が出てきた。レイナーレはすかさずその光の玉に手を伸ばし手中に収める。
「うふふ、これさえあれば私は至高の存在になれるわ。あのお方に近づくことも」
あの方?
レイナーレが口にした『あのお方』という存在が気になる俺だが、それを解明する術がない。この場は宿題が増えたと考える事しかできない。
どうやらレイナーレの言うあのお方の詮索はここまでの様だ。彼女もこの騒ぎを聞きつけ意識をそちらに向けたらしく、恍惚気な雰囲気が霧散していた。
「アーシアに何をしたんだよ! 答えろよレイナーレ!」
「せっかく、ここまで来たんだからご褒美をあげなくちゃね」
レイナーレがそう言うとアーシアを拘束している光の拘束具が外れ、彼女の身体がゆっくりと落ちていく。それを見たイッセーが即座に駆け寄り、その腕で落ちてきた彼女を受け止めた。しかし落ちてきた彼女のその目はうつろで、焦点が定まっていないどころの話では無かった。
「アーシア! アーシアァ!」
「……イ……イッセー……さん……」
イッセーの呼びかけに答えるアーシアだが、意識が朦朧としているのか口調が覚束なく掠れている。命の火も消えかけている様な儚さに俺は歯ぎしりをしてしまう。
「兵藤君、早く!」
イッセーがアーシアを受け止めたのを見たのか、木場が彼に向けて脱出を示唆する。木場からの声に呼応し、彼は意識の無いアーシアを抱き上げては祭壇の階段を駆け下りる。
木場達は信者達の群れを抑え込みながら道を開けてイッセーの脱出を容易にする。小猫との連携も取れているためか十分な道幅の中を彼がアーシアを抱きかかえながら通り過ぎた。
そんなイッセーの背中を睨むレイナーレだったが、不意にその形相を崩し、天井に目を向けた。
「どうせ、行き先なんて1つよね」
どうやらイッセーを追いかける気だ、と俺は気付いてアイツの所へと飛び掛かった。
だがタッチの差なのか、指先が何かに触れたのを感じながらも彼女を止める事が出来なかった。
「チィッ! ……んっ?」
いずこかへと消えるレイナーレを捕まえられずに歯ぎしりしたが、俺は手の中にある布に気づいた。黒い色で素材は……ワカラン。でも、黒ビキニってのだけは解かる。なんたって内側の素材が肌着のような触り心地だからな。
「こいつは! ステキビキニッ!」
ドカッ!
ボケたその場でトリーに蹴り飛ばされた。どうやら上下の魔法陣分離まで成功したらしい。