ハイスクールD×D 2人の竜戦騎   作:バグパイプ

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お久しぶりですm(__)mバグパイプです。

長々とお待たせしてスミマセンですm(__)m
ストーリーを書いている最中に、ワンクッションを入れないといけない事態が発生して遅れました。
その代わりミッテルトが目立ってます。

それでは、どうぞm(__)m



第61話 『翡翠竜が呼び覚ます烈風』の目覚め

 

SIDE セヴェス隊長

 

 教会の門に到着した我々は、敷地内に妙な魔力を感じ取り、周囲に気を配った。

 

「隊長、周囲に召喚魔法の気配があります」

 

「構わん。この場に居る者だけで十分、過剰戦力だ」

 

 ワシは娘の言葉に詮無い事を零してしまう。この場に居る者で最弱である新米の竜戦騎の小娘だけでも過剰戦力として扱えるほど潤沢な戦力を用意しているのだから。

 

「出来れば後から来る足手まといに押し付けたい程だがな」

 

「アッハハッ! そいつは酷くね?」

 

ワシの物言いに小娘が口を挟んでくるが知った事ではない。むしろ肩代わりしてやろうと言っておるのだがな。

 

「だけどさ、目の前のアレ、何とかしないとヤバくね?」

 

「貴様だけでも奴等には過剰戦力なのだが?」

 

 教会の入り口付近の土が盛り上がってはそこから続々とはい出てくる、土気色の物体だった者ども……いわゆるゾンビが湧き出している。教会の敷地に土葬は無いだろうが、召喚術のために問答無用の様相だ。

 

「隊長」

 

 ポーラが『仕事』と察してかワシを隊長と呼ぶ。無論答えは一つしかないが。

 

「皆まで言うな。アレがただのゾンビならばこの土地にはおらん。召喚を介した何らかの強化を受けておるな」

 

 即座に敵勢力を見極め、どういなすかを考える。小娘にやらせてみるのも一興か。だが敵勢力は見事に30を数えるほどに増えた。たかが召喚ゾンビ、されど召喚ゾンビ。いわゆる伝染病の様に伝播するアンデッド化の現象だけはバカには出来ん。親となるゾンビ次第ではあるがその伝染速度は戦慄を覚えるほど早く、わずか10秒もあれば必ず感染しているとさえ言われている。それ故に組織でも警戒して十分な対策を講じておるわけだが。

 

「ポーラは下がっておれ。お前ではまだ相手に出来ん」

 

「はい!」

 

 ワシはポーラに下がるよう指示を出すと、自分も下がろうとする腰抜けな小娘に視線を移した。貴様の方が我が娘より勝ち目があるというものを……。

 

「それで貴様はどこに行くのだ?」

 

「ウエッ!? えっと、ちょっち……用事が」

 

「見え透いた嘘を吐くでない。貴様の用事はワシらを時渡の所に連れていく事、それだけのはずだ」

 

 まったく、愚かにも程があるものだ。まだ調整段階だからと傍観する気か。

 

「多くは言わぬ、『全て仕留めろ』。出来ぬとは言わせん」

 

「……へ? えっ?」

 

 ワシの言葉に小娘はその目を白黒させおる。だが次の瞬間、その目が大きく見開かれた。

 

「……マジで、できるみたい」

 

「分かったらさっさと済ませろ」

 

 小娘は自分の事ながら半信半疑に首をひねり、ワシの言葉に従う素振りを見せていく。たかだかゾンビの30体なぞ、片手間で捻れん様では先が思いやられるというもの。ワシの出る幕ではないのだが。

 

「はぁーっ!」

 

 右手を横薙ぎに振りかざして光の槍を出す小娘だが、その槍が何十本と出現し、それぞれが獲物を貫かんと駆け抜けていく。小手調べ程度ならこの方が気楽か、それとも使い慣れた手立てなのかか解からんが、その技だけでゾンビ共をもの言わぬ肉塊へと変えていった。

 

「……嘘くせぇ……スッゲェ嘘くせぇ」

 

「目前の戦果に嘘も無かろう」

 

 ワシは小娘の愕然とした呟きに呆れながらも後始末として腕を一振りさせる。するとその場に崩れた肉塊全てが塵と化して消えていく。

 

 その光景にミッテルトがジト目でワシを睨んできおった。

 

「アッタシの手柄ぁ~っ」

 

「その程度で手柄を喚いてどうするのだ? 大事の前の些事だ。気になるなら時渡に話をしておくとしよう」

 

 ワシは小娘を黙らせては背後の、道路の方からようやく追いついた2つの気配に目を細める。

 

「ふむ、夜はまだ入りという事か」

 

 ワシは独り言ちてはこの先に視線を向ける事にした。すると地下があるのか、下の方から駆け上がってくる魔の気配が感知できた。

 

 ただ、その傍にある、か細い人の気配が気にかかってならんが。

 

「むぅ、妙な気配があるな」

 

「隊長、行きましょう」

 

 ポーラも気配を悟ったのかワシに進言してくる。だがその行く先を消し飛ばしたはずのゾンビ共がふさいできた。

 

 召喚の魔法陣ごと消し飛ばしたはずが他にも残っておったというのか、面倒な。

 

 しかし、そこに自分のチャンスを見たのか小娘が嬉々としながら叫びおった。

 

「おっしゃあ! あたしの出番!」

 

 彼女はそう言って胸部装甲の下に両腕を潜らせ、そのまま持ち上げてる。彼女のその顔が胸部装甲に隠れ、竜の頭蓋骨がそこに形成された。しかも閉じた口からは光が瞬きながら大きくなっていく。

 

「ぬぅおっ!?」

 

「あったれーっ!」

 

 閉じた竜の口が開き、光の奔流がワシらの居る先、ゾンビ共に向かって迸る。当たればただでは済まん一撃にワシ等は飛び退いて躱す。反応の遅れたゾンビ共はその奔流の中に飲み込まれては建物の影となって消え失せ、光の奔流は建物を半壊させてようやく蛍火を残しながら消えていった。

 

「よっしゃあ! アタシの勝ちぃっ!」

 

「何のつもりだ! 馬鹿者がっ!」

 

 よりによって竜撃砲(ドラゴニック・キャノン)を撃ち込んできたミッテルトに向かってワシは怒鳴りつける。

 

「まだ調整段階だからこの程度で済んだが、本来ならば核弾頭の一撃さえ超越する威力なのだぞ! 解かっておるのか!」

 

 ワシの怒鳴り声を浴び、ミッテルトが事の重大さをようやく思い知ったのか茫然となっておった。

 

「……へっ?」

 

 まったく冗談では無い、本来の威力で放っておったならば教会はおろか目の前5キロは更地に成り果て、挙句にはその5キロ四方で窓ガラスの破砕と家屋の倒壊、挙句には何百人の死者が出る大惨事確定だ。損害賠償だけで何本の金が吹き飛ぶのか。

 

「教会が倒壊するならまだしも、影も形もなく消えるなど教会の持ち主が頭を抱えるわ! 馬鹿者が!」

 

「司令の時は、確か賠償金だけで億単位まで要ってたって隊長は言って無かった……かな?」

 

「うむ、正確には3億7千万だな。たしか全体的な賠償額は22兆円だったが、あの時に魔界の無人島5島が巻き添えで沈んだ。極地災害指定で範囲はざっと1万キロほどか、半径で」

 

「……へっ?」

 

「放射能汚染では無いが、生き残りをかき集めて集団疎開させ、暴動が起きない様にとダークネスのほとんどを動員しての厳戒態勢を強いられたのは辟易したわい」

 

「魔界戦役の最中だからって酷くは言われてないって聞いたけど、もしかして」

 

 ワシとポーラで竜撃砲の威力とその甚大な被害を語った所で、事態を理解したのかミッテルトの顔から血の気が引いていく。

 

「その22兆円を出したのが副司令だ。その後にけじめと称して司令との一騎打ちをやっておったな。どんな花火大会さえも霞むほどに激しい光の祭典であった。夜空を彩る無数の火炎砲撃にそれを両断する剣閃、張った先から粉砕されゆく障壁の数あまた……」

 

「アンタ等の組織のトップ、頭おかしくない!?」

 

 ワシらの話についていけず、ミッテルトが喚きだした。しかし言うのもなんだがあの2人は昔から全く変わっていない。

 

「問題ないぞ。他の者が十分にまともだからな。本当におかしい奴ならばそれだけの被害を出せば雲隠れして逃げおおせるというもの」

 

「ま、まあ、この話は別の機会にして、時渡さんと合流しないと」

 

 ワシらの話を遮ってポーラが先を急いで教会の扉へと動いた。

 

 そして教会の扉を開け放った時、ワシらは目の当たりにした光景によって毒気を抜かれてしまった。




(小説のメモ帳)

竜撃砲(ドラゴニック・キャノン)

 竜戦騎が有する必殺技の一つで、個々の持つ竜鎧に付属している竜の頭蓋骨を組み上げて砲門とし、砲門から竜気を発射する。ドラゴン特有のドラゴン・ブレスを疑似的に放つ技だけにその威力は驚異的であり、「一騎で国を滅ぼす」という格言はこれが由来している。

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