引き続き、隊長さん視点で話は動きます。
隊長さん達は無事にカケカケの所にたどり着く事が出来るだろうか?
それでは、どうぞ
「それじゃあ、早速で悪いんだけどさ、時渡君達の所、廃教会だっけ? そこにあの2人を案内してほしいんだ」
補佐官は話の締め括りとばかりに出動要請をかける。それを聞いてミッテルトは敬礼で答えた。
「わっかりました!」
そして我々は簡単に身支度を整えるとそのまま外に出た。
「さて小娘、竜戦騎になったのだから竜鎧の慣らし運転をしておけ」
「竜鎧? ……ああ、今その事が頭ん中に来たっす」
ワシの言葉を聞いて首をかしげる小娘であったがすぐに理解を示し、行動を始めた。
首に下げている竜血晶を指で摘まむ様に手に取るとその革紐を引きちぎり、高々と天に掲げて叫んだ。
「ドラゴン・フージョン!」
叫ぶと同時にその指で竜血晶をへし折ると、その結晶が破片となって漂い始め、それが竜の形を成していく。幻影の竜はその羽ばたきでから烈風を生み出しながらミッテルトの体を包み込む。破片は細かく砕け散り、風に乗るとそのまま彼女の体に纏わりついてアンダーウェアと化す。
風が勢いを増し、彼女の体の周りを駆け巡ると白地の塊が生えるように突き出し、腕や足腰を覆い、背中を包むように被さった後、胸を上下に挟むように白い塊が当てられていく。しかもその白い塊は各所を覆った後、鎧の各パーツへと変化した。そして竜は上から彼女を飲み込むようにその顎内に収めるとその鎧下を隠す様に竜の頭蓋骨へと変化して鎧の前身となって当てられる。なお、下顎は4っつに分離してそれぞれ両腕の外側に配置された。
最後に頭全体を覆う兜がミッテルトの頭をその中に収め、フェイスガードが閉まるとミッテルトの竜気が翡翠色の線となって鎧の表面を撫で走り、竜鎧装着が完了した。
「うわーっ、すげえすげえ! マジモンの鎧じゃね? これめちゃくちゃウケるわ」
自分の身を覆う竜鎧をしげしげと眺めたり、こぶしで鎧を叩いたりしてその感触を確かめるミッテルトだが、鎧を打ち鳴らすその音に金属特有の高音は響かなかった。
「およ?」
「無理もあるまい。竜鎧は金属で造られたものではないぞ? だがその強度はかなりの物、竜の鱗に匹敵するとさえ言われておるからな」
小娘の疑問符にワシはそれとなく答える。竜鎧の素材は主に骨と同じ物が使われているという。しかも鎧としての性能を発揮する部分は積層型の結界だとか。おまけに各所に小さな竜玉を埋め込んで結界の維持や補助を請け負っているというのだから呆れて物も言えん。
「なんで……って、カケカケさんの上司なんすよね」
「無論だ。直接では無いがな」
ワシはそう言って小娘の言葉を肯定する。
ふと、そう遠くない所から不意に悪魔の気配が2つ湧き出したのを察知した。ポーラに目配せをすると娘もそれを知ってか無言で頷いて見せた。
「……悪魔の気配がするっすねえ」
「とるに足らん小物だが、目障りとなれば話は別となるな」
ワシはミッテルトの言葉に意外なものを見て口元が緩んでしまう。この小娘はこちらの住人であったか。
だが件の気配が姿を現した時、軽く身構えていた我らは拍子抜けした。
「あれ、リアス・グレモリーじゃん」
「ん?」
鎧小娘、ミッテルトが2人組を見て素っ頓狂な声を上げ、2人組の方は呆れた声を上げる。
「知っておるのか?」
「この町を取り仕切ってる元締めってトコっす」
ミッテルトはワシの質問に対してフェイスガードを跳ね上げて答えてくれる。フェイスガードの下から出てきた顔を見て2人組が目を白黒させおった。
「ええっ!? ミッテルト?」
「あ、あらあら」
「驚いておる所を済まんが、時渡達が気になるのでな、急いでくれ」
ワシは硬直した現場を急かす為に声を上げ、皆を促す。
「分かってるっす。こっちっすよ」
ミッテルトは逸早く我に返り、我々の先導を買って出た。ほかの面々もそれに従って走り出す。
「ミッテルトが居るって事は、こちらのお2人は」
「ウチの隊長……、カケカケさんの上司連中ってワケでさ」
不意に来たリアス・グレモリーとかいう小娘の確認の声をミッテルトが引き継ぐように答える。もはや宵の口と言って良い時間だが、制服姿で辺りをうろつくというのは感心せぬ話だ。
「ならちょうど良いわ。私達も廃教会に用があるの。案内しなさい」
どうやら紅髪の小娘はワシらと共に行くらしい。そういえば確か補佐官がグレモリー眷属と時渡達が行動しておると言っておったな。
「来たければ来るが良い」
ワシは好きにしろとばかりに背を向ける。
「痛い目を見て泣く様ならば捨て置くぞ」
「自分の面倒ぐらいは見れるわよ」
紅髪が憎まれ口を叩き、その横の黒髪の小娘が困った表情を浮かべる。
「小娘、案内を続けてくれ」
「ういっす」
ワシの声にミッテルトが呼応し、廃教会とやらへ向かって歩を進める。
「朱乃、どうやら私達が想像しているよりも大きな事が起きているみたいね」
「うふふ、その様ですわね」
ワシの後ろで2人が何を話しておるのか杳として知れんが、気にするほどでもあるまい。