ようやっと空き時間が作れました。
それではよろしくお願いしますm(__)m
「フリードを倒したわけだし、さっさと先を急ぐぞ」
俺が手を叩いて皆に向かって先を促す。そこにトリーが何かに気づいたのか辺りを見回していた。すでに靴まで履き直してやんの。
「どうしたんだよ、トリー」
「ん、あの金髪の姿が消えてるのよ」
トリーの指摘を聞いて俺は「まさか」と嗤いながら辺りに目配せする。すると確かにフリードの姿が消えていた。ほんのちょっと目を離しただけだってのにしぶといヤツだ。
まったく……あの間抜けな姿を写真に撮って笑い者にする予定だったのに。
「いつの間に復活したんだ?」
「復活って言うよりは起きたって所でしょ? 簡単に痛みが抜けるわけ無いんだしさ」
俺の疑問符にトリーが肩を竦めて答える。でも目覚めたなら……何に目覚めたんだ?
「……あ、あそこです」
小猫が上を見上げながら声を挙げて指差す。その指差す先には股間を押さえて呻くフリードの姿があった。すぐそばに小窓が在るからそこから逃げ出す算段か。
「へっへーん! お前等みたいな連中なんか相手にしてられっかよぉ!」
「あ~ら、相手してあげてるのはさ、……コッチ♪」
「あふんっ♪」
窓のふちでいきがるフリードだったが、いつの間に寄ったのか横から彼の股間を撫で回すトリーが居た。女の手だろうが男の手だろうが、あんな所をなぞられたら大抵の男は縮こまるわな。あそこから落ちなかった彼を誉めてあげたい。
「て、てんめぇ……」
「俺様ちゃんには早かったのかしら?」
さあ、どうするフリード! 相手は払魔弾の効かない天使様だ! しかもスピードは互いの得意分野ときてるぞ!
「……しかも相手は色々な意味でウインナードラゴンだぁ!」
「……不潔です」
解説の俺の横から、小猫の突込みがきました。いつの間にか声を出してたんだ俺?
「さあ、さあ、さあ! 惨めな姿を晒してみせなさい!」
「いやあぁぁぁ~っ!」
薄暗い廃教会の中に、再びフリードの悲鳴が轟いた。しかも今度は流石のフリードも宙吊り状態にされて『オスを蹂躙』と書いて『タマタマさんフミフミ』と読む荒業の餌食です。為す術を残らず奪い去っての電気アンマは鬼畜の所業!
「イカレたヤツを相手にしてるのに、トリーさんの方がイカレてる様にしか見えないのは気のせいか?」
「なんて言えば良いのか流石に判らないね」
「……不潔すぎます」
学生さんたちには刺激の強い案件ですまねえ。
……と、そうこうしている間に向こうは決着をつけちまったか。見ればトリーがむなしそうな、けだるい吐息を吐いては右手にぶら下げているフリードを見下ろしていた。
場所が場所だけにおもいっきりGOチン。
「ご苦労さん」
「ええ」
トリーは俺のねぎらいの言葉に頷いてからふと木場に視線を投げたのか、あいつは彼の存在に反応していた。
「あら、ゴメンなさいね木場君。獲物を横取りしちゃって」
「いえ、構いませんよ」
トリーは木場に謝罪を投げながら俺たちの所に降り立つ。木場はその言葉を複雑な表情で受け止めながら手を振った。
そして今度こそ邪魔はないと判断して聖堂の祭壇へと近づいた。するとその祭壇の床に、祭壇自体を動かしたとしか思えない傷跡が床にあるのを見つけた。
「おい、トリー」
「構造はそう難しくは出来ないから、たぶんここに造ってるはずよ」
トリーは俺の呼びかけに答えながら辺りを見回し、宣教台へと近づいていく。宣教台に辿りつくとトリーはすぐにあちこちを見つめ、不審な所を探していく。すると目を見開いては宣教台の下のほうにもぐりこんで何かを動かした。
ガコンッ! ズズズズズッ!
何らかの機械が作動したのか、祭壇構えに動き出し、そこから地下へと続く階段が現れた。
「こんな所に隠し階段かよ」
イッセーは俺がお約束だよなと軽口混じりに現れた階段を見て驚いている。そこから漏れ出る異様な空気が俺達に危険を叫んで止まない。
「この先にアーシアが……」
「行こうぜ。どうせ罠なんてないだろ」
息を呑むイッセーの背中を叩き、俺は先を促す。皆で教会の地下へと足を進めた。
皆で地下へと続く階段を下りながら俺はこれからのことを説明する事にした。
「取り合えずだけどな、地下に入ったら俺とトリーは別行動を執る」
「何でだよ!」
「魔力増大の原因を突き止めて処理しないとお前等が大変だろ? 少なくても俺達は魔法陣の解析と改造、破壊はお手の物だ」
俺は突っかかってくるイッセーに対して懇切丁寧に事情を説明する。すると横から木場が理解を示してきた。
「なるほど、確かに結界をどうにか出来るならそれに越したことはないですね。神器を抜き出す為のものだとしても、人の命が懸かっているだけに何とか無力化したいですから」
「理解が得られて嬉しいぜ」
俺は木場に対して笑みを向ける。そう俺は完全に油断してた。
「それにさ、お姫様には助けに来た王子様が誰なのか、判り易い方が良いでしょ?」
「あっ、お前っ!」
トリーが話に乗っかって言わなくて良い事を口外にする。俺としてはアーシアをイッセーに押し付けた方が後々の面倒がなくて楽だと思ってたりなんかして。
「そんでもって貸しを作っておくと後で何をさせようかって凄く楽しみなんでしょ?」
「うんっ!」
後に何が待ち受けているかを忘れたまま、俺はトリーの明るい声に思わず頷いてしまった。それが俺に襲い来る報復の前兆だと判らないままに。