本編50話が見えてきました。ここまで頑張れたのは読者の皆さんのおかげです。ありがとうございますm(__)m
それではどうぞm(__)m
トリーSIDE
所でトリーと副官の居る拠点ではどうなっているかと言うと。
「私が本隊候補ですか!?」
「まだ本決まりじゃないんだけどさ、カリエルがファッション系の後任として育ててみたいって言ってるから、来年か再来年にはその方向になるよ。副司令が肩入れしてきたし」
私ってば栄光の階段を上ってるの? 組織のトップ3が目を掛けてくれてるなんて知らなかったわ。
「レッドベレーはきつい職場だけど、隙を見てカリエルがデザイナーとしてのノウハウを伝授するって話は確定事項だからさ、考えてみてよ」
「それはもう!」
カリエル様は天使の最上位職という熾天使で、一流のファッションデザイナーだから憧れてたけれど、そのおそばで直伝を受けられるなんて光栄だわ。
思いがけない出世話を聞かされて舞い上がる私に、無常にも携帯電話が鳴りだした。
「はいもしもし?」
『トリー、今すぐオカルト研究部まで来てくれ! グレモリーの女王様ルックを一丁、頼みたいんだ!』
電話の相手はカケカケだった。しかもリアスって小娘の衣装を作れと来た。しかもその電話越しには彼女らしい少女の悲鳴や制止の声も聞こえてくる。
「ヤダ」
『のおぉぉ~っ!』
『よっしぃっ!』
私が即答で拒否すると電話越しに愕然とする男の声と歓喜する少女の声が聞こえてきた。
何、馬鹿やってるのよ。
『お前! 惜しくねえのかよ! デザインの新境地が見えるかも知れねえ話だろ!』
「その程度じゃ、動きたくないわ」
『グレモリーの身体、触りたいほうだあぁーっ!』
バキィッ!
『……変態、死すべし』
……ホント、何馬鹿やってるのよ。
ほら、正面に座っている補佐官もこめかみを押さえてるし。
『下着まで手がけちまえば、乙女の秘密をのぞおぉーん!』
バキィッ!
『変態は死ぬまで治らない』
間違いなく、カケカケが小猫ちゃんの鉄拳制裁を受けてるのね。嘆かわしいわ。
「トリーさん」
不意に補佐官が私に声を掛けてきた。
「何ですか?」
「行ってきなよ。まだ本隊からあの隊長さんが転送されてきてないし、ドーナシークさん達もまだ戻ってきてないから」
「なるほど、時間稼ぎですか」
補佐官の説明を聞いて私は自分の役割を理解したわ。確かに組織からの応援部隊が到着してない以上、あのアーシアちゃんを巡って坊や達が動くだろうから足止めをしろって訳なのね。
「了解です。直ちに作戦を展開します」
私は敬礼をして作戦行動に移ることを公言する。補佐官もそれに頷いて了承してくれた。
「もしもし? カケカケ? 今からそっちに行くわよ」
私は携帯電話に意識を戻してオカルト研究部に参上する旨を伝えた。
『おーしっ! バッチコイッ!』
カケカケが応答してくれた次の瞬間、ズバンッ! と気持ち良い衝撃音が携帯電話越しに鳴り響き、カケカケの悲鳴が轟いた。
『あ~っ!』
その音は、サンドバッグに全力の蹴りを打ち込んだ時にしか聞こえない、あの衝撃音だったわ、間違いなく。
「ちょっと、何ッ! 何が起きたのよ!」
『……お電話変わりました。お2人の見様見真似をしました。後悔はありません』
電話口に出たのは小猫ちゃん、しかも私達の見様見真似というからにはあのタイキック以外には考えられないわね。それ以外にあれだけの音を出す大技を彼女達に見せた覚えが無いもの。
……って、それは大変!
「カケカケ! お尻は無事なの!?」
『……俺のおケツは今日、死にました』
やっぱり、タイキックだったのね!
「すぐに行くからそれまで頑張りなさい! カケカケのお尻は私のものなのよ!」
『どさくさに紛れて何抜かしてやがる!』
私の言葉にカケカケが激怒してる。でもコレだけは絶対に譲れない! 私の欲望だもの!
我にふと返ると、補佐官が何気ない素振りで白湯を飲んでいた。しかも少しだけ頬を赤くしながら。
「……補佐官……今の……」
余りの気まずい空気に、私は電話を切って思わず補佐官に声を掛けてしまった。すると、彼女は凄く優しい微笑をその顔に浮かべながら、語りかけてきた。
「……天使でもさ、欲望ぐらいはあるからね、……ドンマイ」
……凄く神々しい微笑で諭されてしまいました。