第4話をどうぞ。
俺の胸倉を掴んで問い詰めるトリーから何とか逃げ延びた俺は話を元に戻そうとリアスに話を戻す。
「それで、コイツを悪魔として歓迎するってのはどういう事だ?」
「これを見て頂戴」
リアスはそう言ってテーブルの上に1枚の写真をおく。その写真に移っているのは一人の黒髪の美少女、平均より幾分は上の美貌を見せている。だがその美少女には少年と俺は見覚えが有った。
「夕奈ちゃん……」
「そう、彼女は確かに存在していたわ。堕天使としてね」
リアスが衝撃を受ける一誠を見てからその内情を口にする。
「なるほどね。その殺しの現場を見た俺もついでに消そうとしたけれど、やむなく記憶の方に動いた訳だ」
「その存在が忘れ去られる。悪魔や天使の事が口外にならないのはそのせいだけどね」
俺達を迎えに来たあの少年の言葉に俺達2人は納得する。記憶操作は短い時間なら記憶違いで片付いてしまうため、割合簡単に使われる。
「そして彼女はあなたを殺したのよ、あなたの持つ神器を恐れてね」
「神器? というと聖杯とか十字架とかのアクセサリー……」
「違うわ。人間にしか所有できない特別な能力を持った道具、それが神器『セイクリッド・ギア』よ」
俺が漏らしてしまった疑問符を聞きつけたのかリアスは俺の疑問符に答える。
「そうとなると、少年の左腕に本人の力とは異なるものを感じるのは、それが由来していると言うことなのね?」
「ええ、そうよ」
トリーの確認に対して彼女は同意する。なるほど、だが俺にはその異なるものに何らかの魂の波長を感じる。俺でも感じるくらいだから俺の倍以上優れているトリーはとっくに把握してるだろう。もしかしたらどの生物の魂かも理解しているかもしれない。
「さあ、一誠。その神器を見せて頂戴」
「えっと、あの、どうやって出せば……」
イッセーはへらへらと笑いながら出し方を誰にとも無く聞いてくる。
「何か必殺技を出すように、意識を集中させれば良いのよ」
「そうだな。どっかの漫画のヒーローみたいに力をためて、その左手を前に突き出すなんてのはどうだ?」
リアスは軽く笑みを浮かべながら、俺は何となく想像し易いように、それぞれの意見で諭す。
「なるほどねえ。それじゃあ、ドラゴン波っ!」
イッセーは俺達の言葉に誘導されて左腕を前に突き出す。だがいくら待てども彼の腕に変化は見られない。
「……って、無理みたいっす」
「仕方ないわ。出せと言われて直ぐに出せる物でも無いし」
いい加減に諦めたのか情けない声を出すイッセーに対してリアスは慰めるように実情を語る。そうそう威力のある武器を生成できるようでは世界のパワーバランスというものがおかしくなる。
第一、神を殺せるほどの力などあってはならないとされているぐらいなのだ、体がどうなるか分かったものではない。
「まあ、神器とかいうのは次の楽しみにしておこうか。強くなれる要素があるということが判っただけでもイッセーにはよい収穫だろうし」
俺はそう言って彼に切っ掛けを仄めかす。男なら強くなりたい願望ぐらいは誰にでもあるだろうし、それなりの小さな目標があれば挫ける事無く直ぐに次の段階へと向かって鍛えることができるはずだ。
「そうね、あなたは自分の力に対しては卸し立てのエンジンだから、鍛錬しないとすぐに動けなくなるわよ。そうなると誰かの下で鍛えるのが理想的だから、彼女達の仲間になったほうが安全かも知れないわよ」
おっ、トリーがいい感じのフォローを入れてくれた。ありがとう。一誠もどうやら満更ではなさそうに……。
「学園の2大お姉さまにマスコット、良いかもしれない」
一誠、顔が緩むのは判るが涎はよくないぞ。
するとリアスが今度は俺達2人に視線を向けてきた。
「良い話の所で悪いのだけれども、今度はあなた達の番よ? 聞かせてもらえるかしら?」
次回から翔の悪ふざけが炸裂します。次回もお楽しみにm(__)m